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子どもはなぜ同じ間違いを繰り返すのか

5歳から12歳までピアノを習っていた。
何度も何度も同じ箇所を間違えては鬼の形相をした先生に怒られていた。

いつもナイフで削っている歪な形をした赤鉛筆で、楽譜の間違える箇所をぐるぐると囲われる。間違うたびにその丸が大きく濃くなっていき、もはや周りの音符まで見えなくなる。
その筆圧から狂気を感じざるを得ないが、自宅練習に付き合ってくれていた母はどんな気持ちで楽譜を見ていたのだろう。


レッスン中「どうして同じところで何度も間違えるのか」と耳元で怒鳴られても手の甲を叩かれても、わたしにはその理由がわからなかった。

むしろその恐怖によって手は震え、涙が目に溜まり演奏どころではなくなる。月収8千円×8年間のうちどのくらいを無駄にしてしまったのか、考えると恐ろしい。両親の方が泣きたかっただろう。



わたしが敬愛する心理学者の榎本先生が書いた本に「メタ認知的モニタリング」についての記述があった。

メタ認知的モニタリングとは、自分の学習の様子などをモニターに映し出すように観察したりして、ちゃんと身についているか・理解できているかをチェックすることだ。


このメタ認知的モニタリングは、10歳ごろから中学校の年齢段階に伸びるとされているそうだ。
それまでは「自分がちゃんと理解できていないこと」に気がつかないため、何度も同じ間違いを繰り返してしまう。


待てよ、5歳〜10歳ごろのわたしがピアノで同じ間違いを繰り返してしまうことは仕方なかったのではないか?
なぜ同じ間違いをするのか、と問われても「身についていないこと」自体に気がつけていなかったのではないだろうか。



もちろんメタ認知的モニタリングの発達には個人差があり、小学校低学年でもモニタリングできる子はいるそうだ。逆に大人になっても自己をモニタリングする力が乏しい人だって存在する。


ピアノ教育の方法論は別に確立されているかもしれないが、メタ認知的モニタリングの発達が乏しい幼少期の教育については、
習得度の確認作業をサポートし、難しい箇所はゆっくり反復練習をして身につけるなどの練習法を教えてくれたらよかったのではないだろうか…

もちろん怒鳴って萎縮させることは論外である。



怖いピアノの先生のことはいまだに鮮明に思い出せるほどだ。

自分も親として、子へいろいろなことを教える立場になる。発達状況による無理難題を突きつけるようなことと、怒鳴って無意味に萎縮させてしまうことは避けなければならないと思う。



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