加害者の心の問題
父は2つの顔を持っていました。
ひとつは、子煩悩で優しく明るく面白い父、今思えば、いわゆる育メンでした。
母は家事は完璧にこなしていましたので、その間は父が育児をしているような感じでした。
学校行事も積極的に参加し、当時まだ大きかったビデオカメラを方に担いで、私たちをたくさん撮影してくれました。
だから周りの保護者さんやお友達からみたら家族思いのお父さんでした。
その父も嘘の姿ではないと思うのですが、一旦人格が変わると、別人格になるのです。診断されたわけではありませんが、今になって思えば二重人格だと私は思っています。
私たちに虐待するときには、完全に別人格になるのでした。
顔つきも声も変わり、私達を大切に扱う父の姿はどこにもいなくなります。冷酷非道になり、暴力、罵詈雑言の連続が始まるのです。
始まってしまうと、父の人格が交代するまで誰も止められません。
そして、父はよく私たちに暴力をふるいながら、「誰かとめてくれ〜!俺はこんなことしたくないんだ!」と叫んでいることがありました。
そして、人格が変わり、暴力が終わると、優しい父に戻り、大泣きしながら「俺が悪かった、二度とこんなことはしない、許してくれ〜!」と言い、私達に許しを請うのです。
父と母はここで抱き合うのが定番でした。
私はその度に混乱しましたが、ひとまず父の虐待が終わったことへの安堵しかありませんでした。
この、父の二重人格が私をずっと苦しめることになるのです。
けれど、私は、子供ながらに父の苦悩を見ているような気がしました。
父は友達も少なく、人付き合いは少ない人でした。不器用なタイプだったと思います。趣味もありませんでした。
だから、ストレス発散する方法も、何かを相談する相手も、なかったのではないかと思っていました。
私が、父を憎みきれなかったのは、優しい父も存在していたことだけではなく、父の苦悩をなんとなく理解してしまったからだと思います。
もちろん、どんな事情があっても虐待は許されないことですが、児童虐待は被害者だけでなく、その加害者を救うことも必要だと強く思います。
海外ではいじめがあった時に、加害者のカウンセリングをするそうです。日本では、まだ被害者だけが心を病んでカウンセリングを受ける、みたいな形になっていることがほとんどです。
でも、やはりいじめや虐待やDVなどの加害者になる人は心に問題を抱えていると思うのです。
父はもう高齢ですが、もっと早くにカウンセリングやセラピーなど受け、心の問題を解決できたらよかったのに、と思います。
まぁ、父がそういうものを素直に受けるとは思えませんが…。
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