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Nick DeCaro「Love Storm」(1990)

ニック・デカロ Meets 山下達郎!

ニック・デカロといえば世紀の名盤「イタリアン・グラフィティ」があまりにも有名ですね。AOR名盤紹介本のまず最初の頁にこの世紀の名盤が記載されていることも多いニックですが、彼の本業はプロデューサー、アレンジャー業。なので彼自身のソロアルバムとなると4枚しかありません。
本作はそんなニックの1990年発表の3枚目のアルバム。

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もちろんこの作品、リアルタイムで発表されていたのは知っていたのですが、安易な山下達郎カバー集に「ニックもクリスマス・イブ・ブームに乗せられたのか?」と、聞かずじまいでした。
で、私が本作をようやく耳にしたのが、本作発表後、15年以上経ってから。もっと早く聴いていれば良かった~と思ったものです。
大人のポップス、そう「イタリアン・グラフィティ」の延長線上にあるような作品です。
全9曲中、ニックのオリジナルが2曲。残りが山下達郎のカバー曲です。

アレンジはニック。エンジニアはアル・シュミット。山下達郎氏も選曲に参加したようです。
参加ミュージシャンはデヴィッド・T・ウォーカーディーン・パークスニール・ラーセンハーヴィー・メイスンアレックス・アクーニャニール・スチューベンハウスエリック・マリエンサル等々。豪華ですね。

私のお気に入りは②「Touch Me Lightly」。
聴いてすぐ分かるデヴィッド・T・ウォーカーのスローな泣きのギターがイイ!甘くとろけそうです。このムーディーな雰囲気、ジャージーな多重録音コーラスはニックならでは。山下達郎のヴァージョンより落ち着いてます。

④「Every Night」、こちらは間奏のディーン・パークスのアコギが心地いい。

⑦「Only With You」は山下達郎氏のラジオ番組のテーマソングでもありますね。昼下がりに聴きたくなりますが、こちらはナイトヴァージョン。気だるいニックのヴォーカル。またまたデヴィッドの渋いギター。そしてエリック・マリエンサルのサックスソロが心地いい。

本作、実は当時流行ったA.S.A.P.のユーミン・カヴァー集に対抗して制作されたという残念な制作経緯にあるのですが、達郎さんの尊敬するニックに歌わせたところに企画の妙味があり、かつニックならではのアレンジやコーラスに妥協を許さない仕上がりに…。そして⑤「Great Communicator」はニックが達郎さんに捧げて作った曲。

一応残念な③「Silent Night Lonely Night (Christmas Eve)」もアップしておきます。本家が完璧なだけに、個人的にはちょっと違和感を覚えました。企画上、これはやっておかないとしょうがないですが。

ニックを慕っている山下達郎氏も感激だったでしょうね。またニックも日本サイドの要望によく応え、本作を発表しました。だって名盤「イタグラ」発表が1974年。それ以降ソロ作品は発表していなかったのですから。

ニックは1991年にはホントの意味でのオリジナル作品を発表。そして1992年、心臓発作で逝去されました。これからという時に残念です。
そういった意味では日本サイドの強い意向がなければ、ニックのソロは「ハッピーハート」と「イタリアン・グラフィティ」の2枚だけとなっていたかもしれませんね。

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