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Jimi Hendrix「Electric Ladyland」(1968)

ジミ・ヘンドリックスの最高傑作とも云われているのが本作。といってもジミの場合、オリジナルアルバム(生前リリースを承認されたアルバム)は4枚しかなく、かつジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス名義は3枚(本作が最後の作品)しかありません。個人的にはやっぱりファーストのインパクトが強いかな・・・という印象です。

そしてこの「エレクトリック・レディランド」は、従来のR&B色の濃かった音楽から、より幅の広い、そしてトリップ感のある音楽が堪能出来ます。
幅広い音楽性が最高傑作と呼ばれる所以かもしれません。ただサウンドコラージュ的なものも混在しており、「パープル・ヘイズ」とか「フォクシー」なんかが好きな方にとっては、そういった音楽はちょっと馴染みにくい音かもしれませんね。

前作AXIS:Bold As Love発表後、1967年12月よりスタジオレコーディングを開始。本作はニューヨークでの収録と思われてますが、②③⑮といった強力なナンバーは1967年12月~1968年1月にかけて、ロンドンのオリンピック・スタジオで収録されてます。
当時はLP2枚組で発表され、アメリカ盤のジャケは下のような写真ですが、英国盤は全裸の女性達が写ったものが採用されました。ジミ自身はリンダ・マッカートニー(ポールの奥さん)が撮ったメンバーが子供達と戯れている写真をジャケットとしたかったようですが。

とにかくこのA面①~④の流れがスゴイ!
①「...And the Gods Made Love」はテープの逆回転を多用したサウンドコラージュで、サイケ・トリップ感満載です。それに続く②「Have You Ever Been (To Electric Ladyland)」はジミの非凡なメロディーメーカー振りが発揮された作品。ジミというと、どうしても荒々しいハードロック、もしくはサイケ感覚な作品が多いといった印象ですが、こうしたメロウな楽曲も書けるんですよね。

続く③「Crosstown Traffic」はかなり私の好みです。
ジミ流のハードロックといったところでしょうか。強烈なギターリフとコーラスが印象的ですが、このコーラス、♪Crosstown♪ の部分はベースのノエルで、それに続く♪Traffic♪ はトラフィックのデイヴ・メイソンです。トラフィックのメンバーがトラフィックと歌うところがなんともユーモア感覚たっぷりですね。

そして強烈なスタジオライブバージョンが④「Voodoo Chile」。
この当時(1968年5月)、ジミは外部の人間をスタジオに呼ぶことが多くなってきたようで、メンバー(特にノエル)はそれに快く思っていなかったのですが、この録音前日もノエルとジミは大ケンカをしてしまいます。その夜、ジミはクラブで大騒ぎをした後、そのまま友人を連れて戻ってきます。その友人こそがトラフィックのスティーヴ・ウィンウッドとジェファーソン・エアプレインのジャック・キャサディです。そしてドラムにミッチを加えて、すぐにセッションを行い、収録したのがこの音源・・・という訳です。
本作のエンディングトラックにも「Voodoo Child (Slight Return)」が収録されてますが、ここでのイントロはワウワウを効かせたあのイントロではありません。
ちなみに「Voodoo Child (Slight Return)」はこの収録の次に日に収録され、そこにはノエルがしっかりとベースを弾いてます。このスタジオライブは14分強にも及ぶもので、とにかく熱い演奏ですね。

⑦「Come On (Let the Good Times Roll)」はR&Bアーチストのアール・キング、1960年のヒットのカバーです。1968年8月、新作に1曲足りなくなったことで急遽収録された作品。ジミは新曲も作れない状態であったのかもしれません。そしてノエルは数曲ストックがあった筈ですが、ノエルにも(当然ながら)声は掛からず、結局他人のカバーソングを穴埋めに収録した・・・というのが真相のようです。

ミッチのスピード感あるバスドラからスタートする⑧「Gypsy Eyes」。
結構好きな曲です。脂の乗ったエクスペリエンスの演奏が堪能出来ますね。ジミのスリリングなカッティングも素敵です。70年代前半のブラックミュージックの先駆けのような1曲と捉えてます。

⑨「Burning of the Midnight Lamp」は1967年7月収録、つまり本作のために収録されたものではない楽曲で、シングルとして発表されていたもの。ハープシコードが効果的に使われてます。ミディアムテンポの迫力のある演奏が楽しめます。

恐らく本作の白眉は⑩~エンディングまでの流れと思われます。
⑩「Rainy Day, Dream Away」はサックスをフューチャーしたブルージーでジャージーな1曲。
ジミは本作で、オルガン奏者のジミー・スミスのような演奏を志向していたようです。ドラムはバディ・マイルズ(後にバンド・オブ・ジプシーズのメンバーとなるドラマー)、オルガンにマイク・フィニガンを迎えての演奏です。つまりエクスペリエンスのメンバーはここでは参加しておりません。
それにしてもこの曲、なんだか尻切れで終わってしまう印象ですね。ジミの、人間の喋りをギターソロで披露する見せ所からなぜかフェードアウト。なぜか、それは⑬「Still Raining, Still Dreaming」と曲を分割したからです。恐らくアルバムの構成上からの対応かと思われますが、正直意図はよく分かりません。それによって⑬「Still Raining, Still Dreaming」は凄く熱い演奏が楽しめます。

⑮「All Along the Watchtower」はディランのあまりにも有名なカバーですね。やはりここにはノエルは参加しておらず、代わりにデイヴ・メイソンが12弦ギターで、ブライアン・ジョーンズがパーカッションで参加しております。ディランの新譜を皆で聴いていたときに、ジミがこれをやろう!ということで直ぐにスタジオへ直行したらしいです。例によって、そこにデイヴやブライアンが居たということですね。すっかり自分の曲のようにしてしまうジミのアイデア、創造力はスゴイですね。

そして最後は⑯「Voodoo Child (Slight Return)」。あのワウワウの効かせたイントロで有名な、最高にパワフルな演奏の1曲。
前述のとおり、例のウィンウッドとのコラボ演奏をした次の日に収録した演奏です。仲違いしていた筈のエクスペリエンスも、ここでは素晴らしい演奏・・・。カメラクルーがスタジオに入っていたからとの噂もありますが、とにかく迫力ある演奏です。

この1枚だけでもジミヘンの凄さはよく分かります。ギターテクニックだけではない、作曲能力、アレンジといったクリエイティブな側面も凄い人であったと。ジミヘンのカッコよさはファーストが一番だと思ってますが、そういった才能を感じるには本作が一番でしょうね。

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