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大滝詠一「大瀧詠一」(1972)

3月21日、大滝詠一の日にナイアガラ関連のいくつかの作品がネット配信開始となりました。個人的にはBGMとして最適な「NIAGARA SONG BOOK」「NIAGARA SONG BOOK 2」にも期待しておりましたが、やはり大滝詠一先生のファーストアルバムに期待しておりました。実はこの作品は長らく未聴だった作品なんです。実際サブスクで聴いてみて、はっぴいえんどの延長線上にあるようなサウンドに大満足。恐らく多くの方々はよく知っている作品かと思いますが、一応この超名盤をご紹介しておきます。

本作は大滝詠一がはっぴいえんど在籍中に録音されたもので、当時メンバーのソロを順番に発表していくという話があったようです。
1971年11月にはっぴいえんどのセカンド「風街ろまん」が発表され、同年12月に自身のソロシングル「恋の汽車ポッポ」を発表。はっぴいえんどの解散ミーティングは1972年9月に行われているので、解散前から本作の制作はスタートされていたわけです。ちなみに本作の発表が1972年11月。そして解散後に発表されたはっぴいえんどのラストアルバム「Happy End」の発表が1973年2月…という流れですね。

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本作にははっぴいえんどのメンバー、松本隆細野晴臣鈴木茂が参加しているので、サウンド的にははっぴいえんどの延長線上にあり、60年代アメリカン・ポップスに造詣が深い大滝詠一らしい作品集です。

まずはオープニングの①「おもい」。ビーチボーイズが大好きな私としては、かなり興味深い作品です。
ビーチボーイズの「Their hearts were full of spring」辺りのアカペラからの強い影響が伺えます。大滝さんの唱法もファルセットを駆使するブライアン・ウィルソンっぽい。この時代にあって、敢えてこうした楽曲をトップに持ってくる大滝さんの強い音楽観には共感出来ますね~。

作詞:松本隆、作曲:大瀧詠一の名曲②「それはぼくぢゃないよ」。
ベース&ドラムは大滝さん自身。スティールギターは駒沢裕城。はっぴいえんどの延長線上のような楽曲。バッファロー・スプリングフィールド等のディープなカントリー・ロックを彷彿させます。シングル「恋の汽車ポッポ」のB面に収録された時点では「それはぼくじゃないよ」というタイトルでした。

アル・グリーンの「Let' Stay Together」からインスパイアされて作った超かっこいい③「指切り」。
ベースに細野晴臣、ドラムに松本隆、ピアノとフルートにはこれがプロのレコ―ディング初参加の吉田美奈子(!)。コーラスはシンガーズ・スリー。溜息なんかは明らかにゾンビーズの「Time Of The Season」ですね~。松本さんのタイトなドラムが実にソウルフル。コーラスも含めたアレンジもよく聴くと凝ってます。これは凄い曲。

細野晴臣、松本隆、鈴木茂が演奏に参加しているハードロックな④「びんぼう」。はっぴいえんどの3人の持ち味がフルに活かされた名曲。特に鈴木さんのサザンロック的なファンキーなギターがカッコいい。大滝先生もシャウトしてます。短い曲なんですが、エンディングにかけてのアレンジとか、大滝先生、及びはっぴいえんどのメンバーのセンスが冴えわたっております。

ここまで①~④まで続けてご紹介してしまいました。ホントは全曲紹介したいくらいなんですけどね。
⑩「乱れ髪」、いきなりストリングスが鳴り響きますが、実に味わい深い名曲。
この曲のドラムは林立夫、ベースとピアノは細野晴臣。この曲のメロディが一番「ロンバケ」に収録された楽曲に近いかもしれません。もちろんここでのアレンジははっぴいえんど風ですが、メロディは確実に大滝さんらしい味わい深いもの。

⑪「恋の汽車ポッポ第二部」はファースト・シングルのリメイクVer。
作詞:江戸門弾鉄(松本隆),・多羅尾伴内(大滝詠一)、作曲:多羅尾伴内。ドラムは宇野主水(細野晴臣)・多羅尾伴内、ベースは南部半九郎(大滝詠一)。ギターは鈴木茂。こうしたクレジット遊びも大滝さんらしい。シンガーズ・スリーのキュートなコーラスに代表されるように、より60年代ポップス風にアレンジ。

はっぴいえんど解散後、大滝先生は福生にスタジオを建設し、ナイアガラ・レーベルを始動させます。そこから発表された個性的なアルバムもまた聴き応えのあるものばかりでした(ちなみに最初の所属アーチストはシュガー・ベイブでした)。ただし、大滝先生が売れるアーチストとなるのはまだ先のことですが…。


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