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Steely Dan「Gaucho」(1980)

大好きなスティーリー・ダンですが、なぜかこの「Gaucho」はあまりにも堅苦しい感じから、どうも馴染めないというのが率直な感想です。
その思いは今も同じで、「Aja」と同じ空気感なのに「Gaucho」の方が聴く回数は少ないですね…。

スティーリー・ダン、7枚目のアルバム。相変わらずレコ―ディングには多大なお金と時間が注ぎ込まれ、多くのミュージシャンが参加しております。
ギタリストだけでもスティーヴ・カーン、ヒュー・マクラッケン、マーク・ノップラー、ハイラム・ブロック、リック・デリンジャー、ラリー・カールトン…、贅沢ですね。

ドラムをやっていた私としては、やはりこのアルバムは①「Babylon Sisters」を聴くためのアルバムと捉えております。
もちろんドラムはバーナード・パーティ。パーディ・シャッフルと呼ばれる彼独特のグルーヴ、その最高傑作のひとつがこの曲です。ジェフ・ポーカロの「Rosanna」で繰り出されるハーフタイム・シャッフルは、パーディ・シャッフルとジョン・ボーナムのプレイを組み合わせたものとして有名ですね。
クールなサウンドに切れ味鋭いハイハット・ワーク、実に心地よい。このクールなエレピは後にジェームス・テイラーのプロデュースで名を上げるドン・グロルニック。ベースはチャック・レイニー、ギターはスティーヴ・カーン、ホーンはランディ・ブレッカーにトム・スコット。そう、演奏にはドナルド・フェイゲンもウォルター・ベッカーも関わっていないんですね。

ひょっとしたら本作中、こちらが一番ポップかもしれない②「Hey Nineteen」。
それでもかなりひねくれたメロディですが(笑)。
リック・マロッタのドラムとスティーヴ・ガッドのパーカッションという豪華布陣。印象的なギターはヒュー・マクラッケン。
すごくシンプルな演奏なんですが、それぞれが絶妙なアレンジで重なり合い、絶妙なサウンドを形成しております。フェイゲンが奏でるシンセの音は、この後発表する自身の「I.G.Y.」でも聞かれる音ですね。

この曲のみフェイゲン&ベッカーに加えて、作者にキース・ジャレットが加わった④「Gaucho」。
このドラムはジェフ・ポーカロです。確かにタイトなスネアはジェフらしいですが、フィルインにはあまりジェフらしさは感じられません。指示通りにカチッと叩いている印象。しかもジェフらしく、全く揺ぎ無く。どこか堅苦しさも感じるのはこの曲だけでなく、全体を通じてもそんな印象です。

ちなみにこの曲、後にキース・ジャレットが1974年に発表した自身の曲「Long as You Know You're Living Yours」に似ているとして訴え、その訴えを認める形で共作としたもの。確かに聴いてみると中心となるメロディが一緒ですね(笑)。完璧主義者のスティーリー・ダンも、結構人間臭い感じがします。

セカンド・シングルの⑤「Time Out of Mind」には先日亡くなられたデヴィッド・サンボーンが参加してます。
リック・マロッタのドラムに、ヒュー・マクラッケンとマーク・ノップラーのギター…、ここにサンボーンのホーンが絡んでくる贅沢なひととき。贅沢なサウンド。極上のサウンドですよね。心地いい。サンボーンのブロウも大好きですが、こういう曲の彼のプレイも大好きです。R.I.P.
あとコーラスにはマイケル・マクドナルドが参加。最近のニュースで、ドナルド・フェイゲンはスティーリー・ダンのリードヴォーカルをマイケルに変えることを検討していたことがあったと述懐してます。そして変えなかったことを後悔しているとも。彼は賛成したようですが、つまらない理由で却下されたようですね。でもマイケルはドゥービーの一員となったことで、大きな飛躍を遂げることとなります。

エンディングは渋めのブルージーなナンバーの⑦「Third World Man」。
スティーヴ・ガッド&チャック・レイニーの豪華なリズム隊。ジョー・サンプルのエレピ。いいですね。
ラリー・カールトンのギターソロも如何にもラリーらしい。このギターソロに入る前の展開は、一瞬「Aja」を思わせます。

個人的には本作はやはり全体的に息苦しい印象は拭い切れません。またフェイゲン&ベッカーもそのように感じていたのかもしれません。次に彼等がオリジナル作品を発表するのは、20年後の2000年なので。
その作品「Two Against Nature」も結構いい作品でした。

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