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The Beatles「Let It Be」(1970)

本作をご紹介することは、ビートルズファンとしてはちょっと気恥ずかしいものを感じます。彼等の最後のオリジナルアルバムはあくまでも「アビー・ロード」であって、「レット・イット・ビー」ではないのですから。

ビートルズは「アップル」を建て直すべく、1969年1月より「Get Back」セッションを開始します。このレコーディング内容を映画化して、アルバムと共に発表するというのが当初のコンセプトでしたが、ご承知の通り、当時のメンバー間の仲は最悪の状態で、かなりの数の楽曲をレコーディングしたものの、それらはニューアルバム「Get Back」としてまとめることは出来ませんでした。
それを1970年1月、フィル・スペクターが纏めることとなります。ジョン・レノンとアラン・クレインが、この大仕事をフィルに委任したのでした。ちなみにジョージやリンゴもアップル再建者としてアラン・クレインを推してましたが、ポールは妻リンダの父で弁護士のリー・イーストマンを推していたのです。ここにも対立構図はあった訳ですね。

ということでこのアルバム、統一感は全くありません。それぞれの楽曲もムラがあり、アルバムとして聴くべきではないかもしれません。ただきらめくような素晴らしい楽曲が収録されているのも事実でして、流石ビートルズ、と思わざるを得ません。

そうした素晴らしい楽曲のひとつが①「Two Of Us」。フォーキーでポップな感じがいかにもポールらしい。
以前映画「アイ・アム・サム」(ショーン・ペン主演)の収録曲で、エイミー・マン&マイケル・ペン(もちろん主演ショーンの実兄ですね)夫妻の素晴らしいデュオカバーが話題になりました。
そのカバー、すごく原曲に忠実ですので、そちらをアップしておきます。

そして「Two Of Us」のロックバージョンにビックリ。かなりラフですが、実にカッコいい。1本マイクにジョンとポールが寄り添うように歌う、まるで初期のビートルズみたいに…。やたらとポールはノリノリだし、リンゴの独特のタイム感覚を持ったドラムいいですね。

独特の雰囲気を持つ③「Across the Universe」。オリジナルのレコーディングは1968年2月ですから、発表までに時間がかかった作品。ジョージお得意のシタールが、この曲の持つ東洋的な感覚にぴったりです。
フィル・スペクターはここでもオーケストラを加えて、壮大感を煽ったプロデュースをしてますね。
間違いなくジョンの普及の名作です。

ジョージの作品は本作では2作収録されてます。④「I Me Mine」、⑪「For You Blue」。どちらかというと軽すぎる「For You Blue」よりは「I Me Mine」の方が好みですかね。
最初はジョージらしい泣きのメロディ的なフェーズなんですが、一転ロック調に変転します。結構このビートルズ流ロック、特にポールの力の入ったコーラスが好きだったりします。
この繰り返しでリスナーを飽きさせません。ここでもフィルのオーバープロデュースが目立ちますが。

⑥「Let It Be」や⑩「The Long and Winding Road」は今更このブログで言及する必要もないでしょう。でも「The Long and Winding Road」の映画映像なんかを見ていると、ひとりポールが孤軍奮闘している様子がよく窺えます。他のメンバーは何かやる気なさそうなんですよね。
ポールの悲痛な叫び

 ♪ Why Leave Me Standing Here?
    Let Me Know The Way ♪

結局誰も答えることはしなかったのですね。

⑫「Get Back」は有名なルーフトップコンサートの映像が有名ですね。1969年1月30日、アップルの屋上で行われたライヴのことですが、これが最後のビートルズとしてのライヴ演奏となりました。
熱の籠もった演奏です。ちなみにこのルーフトップの演奏、他の映像には警官がアップルを訪問するシーンが映ってます。無許可だったんでしょうね(笑)。
「Get Back」は計3回演奏されました。

散漫な印象を受けるアルバムですが、光り輝く名曲が多く収録されているのも事実。またジャケットも印象的ですね。

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