ひとりでいるのが楽だった
幼い頃から、ひとりが好きだった。ひとり遊びも、ひとり旅も、ひとりごはんも、ひとりが愛おしい。
未だに友達付き合いがわからないのだ。恋はもっとわからない。放っておくと、ずっとひとりで居てしまう。今は実家暮らしだが、家族や親友といても、ほとんど誰とも話さない時間がないと心が落ち着かなくなる。
仕事でもひとりの方がよく進む。可能なら、ひとりのオフィスがあった方がいい。人が出入りする環境だと他者の目が気になってしまうし、作業途中に呼び出されると手につかなくなる。最近、わたしが過集中の傾向にあることに気付いた。
他人と話すのが苦手な分、こうして文章で発信する機会が増えた。自己開示はほとんどがエッセイで、友人や同僚との会話はほとんど他愛のない世間話か、共通の趣味で埋め尽くされている。
決して無口な方ではないが、だからといってクラスやコミュニティーの中心にどんと居座っている方ではない。
興味のあること、もともと好きなこと、本気で向き合いたいことに関しては、誰よりも饒舌になる。時折、身振り手振りも交えながら、後ほど聞き返してみると自分でも恐ろしいくらいの早口で捲し立てることもある。
ひとりの空間で生きてきたからこそ、相手が自分をどう見ていたかなんて考えたこともなかった。今だって変わっていなくて、感情の発露がそのまま文章として出力されている時、わたしは理性を失っている。
粋になんかなれないし、格好良く生きようとも思わないが、誰にも受け入れられなくたっていい。可能な限り、ひとりで完結させたい。
そう信じてきたが、今はちょっと違う。
他人と話しているうちに、関わっていくうちに、ほんの少しずつだけど、わたしが変わっていくような感覚があるのだ。言葉にならない胸騒ぎとでも言うのかな?
高校時代はインターネットで数多くの人に囲まれて過ごしていたが、ほんとうはひとりだった。友人は少なく、大学生になってからはさらに加速していった。今、そういった日々を取り戻そうとしているのかもしれない。
自由にすべてを選べるようになった季節が大人と呼ぶのなら、過去に満たせなかったものを必死に満たそうとするのも大人になろうとしているが故のことなのだろう。
また夏からひとり暮らしを始めるかもしれないが、新しいパートナーとともに共同生活を始める時期もそう遠くはない予感がする。体験したことのない日々だし、数ヶ月後にどうなっているのかはわからないのだけども。まずは、まともな人になろう。話はそれからだ。
2024.5.12
坂岡 優
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