記者クラブいらない訴訟、第1回口頭弁論

 2023年9月25日、東京地裁(大須賀寛之裁判長)で「記者クラブいらない訴訟」の第1回口頭弁論が開かれた。

 被告の共同通信社、前田晋吾氏、久納宏之氏は事前に答弁書を提出しており、擬制陳述(欠席)となった。ただし、前田氏は傍聴席に座り、メモをとっていた。

 被告は答弁書で「原告らの請求をいずれも棄却する」との判決を求めた。原告らが「大会議室で行われた新知事の就任記者会見に参加できず」は認めるが、それが「被告前田支局長及び被告久納記者による違法な取材妨害により」という点は否認した。「被告久納記者は、フリーランスのジャーナリストであっても、青潮会の定めた規約に従う者については、参加を認める意図であった」と主張している。

 第1回口頭弁論では、原告の三宅勝久と寺澤有が意見陳述を行った。以下、私が読み上げた意見陳述書を掲載する。

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 私は、大学3年生のときに自分が愛読していた『ニューモデルマガジンX』という自動車雑誌の編集部を見学し、編集長らと話をしました。編集長から「外でコーヒーでも飲みませんか」と誘われたので、2人で近所の喫茶店に行きました。

 喫茶店で編集長は「キミは記事が書けそうな気がするから、やってみないか。何を書いてもいいから」と言いました。突然のことだったのですが、私は、『ニューモデルマガジンX』が新車情報ばかりではなく、自動車のメーカーや販売店の不祥事、交通行政の問題点を取り上げているところが好きだったので、「そういう記事を書いて、お役に立てれば」と引き受けました。

 ちなみに、『ニューモデルマガジンX』は新車情報でもダメな自動車はダメと書いており、そのような記事を掲載し続けるために、記事に対する圧力の原因となる自動車のメーカーや販売店からの広告は拒否していました。これは、後年、知ることですが、行政が自分たちに不都合な報道に圧力をかけるため、まず、メディアに広告を出している企業に圧力をかけ、企業からメディアに圧力をかけさせるということも横行しています。

 当時、私は組織やシステムについて研究する大学生でした。将来、それを生かした職に就きたいと考えていました。しかし、私が書いた交通取り締まりの問題点の記事が読者に反響があり、連載化されたため、一切、就職活動もしないまま、卒業後も連載を続けることとなりました。

 取材活動を始めて、私は言葉として知っていた「記者クラブ」というものの実態を知ります。警察をはじめとする役所に取材に行くと、「記者クラブに加盟していないメディアの取材は受けられない」と言われることがよくあったからです。特に、役所に不都合な取材を申し込むと、そのような言い方で拒否されました。

 もともと、私は組織やシステムについて研究していたので、記者クラブについても調べてみました。そして、記者クラブが行政の広報を担うものとして存在していることを知ります。だからこそ、役所の中に無償で部屋を与えられ、役所から独占的、排他的に情報を与えられているのです。

 役所で広報を担当した役人にとり、記者クラブの使い勝手のよさは痛いほどよくわかると思います。明治時代の1890年に創設された記者クラブが、「大本営発表」の批判にさらされながらも、現在も続いているのは、役所と記者クラブの双方に利益があるからです。

 しかし、国民の利益を考えた場合、記者クラブという組織やシステムは必要でしょうか。組織は上意下達になりやすいもの。情報まで上から下へ流れるシステムでは、上が誤りを犯しているとき、是正のしようがありません。

 一方、近年、役所が記者クラブを見直そうという動きに出ているのも事実です。情報公開や説明責任を考えた場合、記者クラブに独占的、排他的に情報を与えるのは問題があると考えられるからです。もっとも、記者クラブに加盟する新聞やテレビの影響力が落ち、従来ほど記者クラブの使い勝手がよくないという事情もあります。

 本訴訟の原因となった鹿児島県知事の記者会見。鹿児島県はフリーランスの参加を認めていました。ところが、記者クラブが実力でフリーランスを排除したのです。これが国民の利益となり、国民に説明がつくことなのか。裁判所には、今後の規範となる判断を示してもらいたいと思います。

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 大須賀裁判長は「今後、弁論準備(非公開)で進めますか、口頭弁論(公開)で進めますか」と尋ねたので、原告らは「口頭弁論でお願いします」と答え、了承された。

 また、大須賀裁判長は「鹿児島県が行う記者会見において、被告らが勝手に原告らの取材活動を阻止したというのが問題なのか、それとも、記者クラブの運営方針などを問題にしているのか」と尋ねた。原告らの代理人の山下幸夫弁護士が「前者です」と答えた。

 さらに、大須賀裁判長は「記者会見の主催者は青潮会という理解なんですか」と尋ねるので、私が「鹿児島県知事です」と答えた。大須賀裁判長は「鹿児島県知事が主催する記者会見で、被告らが権限なく、原告らの取材活動を妨害したということですか」と確認し、私が「そうです」と肯定した。

 第2回口頭弁論は12月11日10時10分から東京地裁第526号法廷で開かれることとなった。

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