ノベルゲーム製作のススメ


フリゲノベルゲームはいいぞ!!!

現代のフリーゲーム界隈で一番熱いジャンル、それはノベルゲームではないでしょうか。
たしかに商業作品を中心としたゲーム界隈全体を見渡すとノベルゲームは下火かもしれません。
ですが、フリーゲーム界隈ではまた別な潮流があり、ここにはノベルゲームという肥沃な大地が広がっています。
皆様もぜひ、この機会にノベルゲームを作ってみませんか?


ノベルゲームのメリット

フリーゲーム製作者がノベルゲームを作るメリットは以下の通り。

  • 無料・安価で作れる

  • 制作難易度が低い

  • ノベコレに投稿できる

  • 不具合を気にする必要がほとんどない

これらの要素を順に解説していきます。

無料・安価で作れる

ノベルゲーム制作ツールはいくつかあります。
昔からあるツールだとNScripterや吉里吉里、LiveMakerなどが有名。
また、中にはツクールやウディタ でノベルゲームを作る人もいます。

ですが、現代のノベルゲーム制作ツールの花形といえばこれ。
ティラノビルダーティラノスクリプト

ティラノビルダーはいいぞ


ティラノビルダーは直感的なUIが特徴的なノベルゲーム制作ツール。
制作したゲームはブラウザゲーム(※)として配布されるため、PCのほかスマホでもプレイ可能。
また、低スペックPCでも問題なく楽しめるのもメリット。
※パッケージ時にwindows版・Mac版実行ファイルとして作成することも可能。テストプレイ版の送付時はこちらがオススメ

プログラミングが出来なくても、絵と小説が作れるならノベルゲームが作れます。
というか、フリーで配布されている立ち絵素材を使えば、絵のスキルすら不要かも。
よほどの文才がない限り、立ち絵素材で良作を作るのは困難ですが……。

また、スタンダード版は無料なのに商用利用が可能
その代わり、背景画像やキャラクター、BGMの登録数に制限があるため、長編作品を作るのには向いていません。
Pro版(1480円)はこれらの制限がなく、長編作品でも問題なく作れます。
ただ、私としては無料版で作れる程度のコンパクトな作品にするのがオススメです。
初心者ならまず短編作品を作って経験値を貯めた方がいい、というのもありますが。
15〜30分程度で終わる短編作品こそ、ノベルゲーム の真価だと考えています。

尚、私はティラノビルダーはほとんど使ってません。
もっぱらティラノスクリプトで制作しています。

ティラノスクリプトもいいぞ

ティラノスクリプトはその名の通り、スクリプト(シナリオや演出コマンドなどを書いたテキストファイル)を編集するタイプ。
こちらもプログラミングというほど複雑ではないのですが、慣れない人には厳しいかもしれません。

[playse storage=ps_chime.ogg]
[bg storage="mc_classroom.jpg" time="1000"]
[show_window]
[show_menubutton]
[playbgm storage="md_acoustic38.ogg"]
#
[chara_show  name="boy" face="f09" top=1 width=576 height=720]
[chara_show  name="girl" face="f08" top=1 width=576 height=720]

#girl
ねぇ、[ruby text="しお"]塩[ruby text="た"]田君。[p]
#boy
な、何?[ruby text="よね"]米[ruby text="くら"]倉さん……。[p]
#girl
今日、塩田君の家に遊びに行ってもいいかしら?[p]
#boy
う、うん……いいよ。[p]
あと、教室ではあまり親しくしないで。話しかけないで。[p]
[chara_mod name="girl" face=f04 time=300]
#girl
ふふふ……そうよね。[p]
[chara_mod name="girl" face=f05 time=300]
[chara_mod name="boy" face=f10 time=300]
クラス一の美少女の[ruby text="あい"]愛[ruby text="り"]莉ちゃんが、モブ男子と仲良くしたら恥ですものね。[p]
#boy
う、うん……。[p]
#

参考:拙作「ぼくらフリゲ作者カップル! 」冒頭のシナリオファイル
[ ]で囲まれた部分がコマンド。[bg]奈良背景の変更、[chara_show]ならキャラクターの登場など。
改行するときに[r]、ページ送りで[r]を毎回入れるのですが、これすら面倒という人にはオススメできません。

その代わり、こちらは無料版でも背景画像やキャラクター・BGMなどの制限がありません。
また、凝った演出や独自のシステムも実装しやすい(※)のも特徴。
長編作品や凝った作品を作りたいなら、スクリプトの方がオススメです。

※ティラノビルダーにもスクリプト機能はあるが、結局スクリプトを書くならビルダーもスクリプトも大差ない。
むしろテキストウィンドウのサイズを気にせず、お気に入りのテキストエディタで編集できる分ティラノスクリプトの方が有利と思われる

個人的に一番のメリットは、外部の文書ファイルからシナリオをコピペしやすいこと。
スマホからGoogleドキュメントで原稿を書いて、PCからスクリプトにコピペして改行・ページ送りや演出を入れる。
私はこの制作スタイルで作っています。
この方法なら出先でも制作ができるのがメリット。
ビルダーでもコピペ製法はできますが、ちまちまコピペする必要があるのでちょっとめんどくさい。

制作難易度が低い

さて、今度は他のゲーム制作ツールと比較してみましょう。
現代のゲーム制作ツールの花形はUnity。フリーゲーム界隈だとRPGツクールMZウディタ が主流。
このうちUnityは少し触れただけ、ツクールは体験版を触ったのみで、私がメインに使ってるのはウディタだけです。

ツクールやウディタは本来RPGを作るためのソフトですが、なぜかそれ以外のジャンルのゲームを作る人が多いです。
私もウディタでRPGやADVのほか、音ゲー・パズル・テーブルゲーム・スポーツ・アクション・シミュレーション・シューティングと様々なジャンルのゲームを作ってきました。
Unityに至っては元から特定のジャンルに特化したツールではないため、作りやすいジャンルがない代わりにどんなジャンルでも作ろうと思えば作れるはずです。

ただし、当たり前ですが本来作れるジャンルと異なるジャンルのゲームは制作難易度が高いです。
プログラムを自作してシステムを作る必要があるため。
また、ゲームに必要な素材が必ずしも揃ってるわけではなく、場合によっては素材の自作も必要。

もっとも、Unityはアセットがあるし、ツクールもプラグインを組み合わせて開発するのが主流なので一から作る必要は無いのですが……。
それでも、「ぼくのかんがえた独創的なシステム」を作るには、どうしても自作は避けられないでしょう。

それと比べれば、ツクールやウディタ でRPGや2Dマップの探索アドベンチャーを作るのは簡単です。
本来の目的通りRPGやADVを作る分には作りやすいし、素材も豊富にあります。
プラグインやコモンイベント素材を使えばある程度はお望みのシステムにすることも可能。
絵やシナリオの技術があれば、結構いい作品が作れるでしょう。

なーんだ、別にノベルゲームに固執する必要なんて無いじゃないか

……と、ここでゲーム制作をしたことがない人が陥りがちなワナを紹介します。
それは、不具合発見のためのデバッグ・テストプレイ

不具合を気にする必要がほとんどない

不具合といっても、一通りプレイすれば一発でわかるものから、特定の条件やひねくれたプレイじゃないと発生しないものまで様々。
よくあるのがマップの通行設定のミス。このせいで本来通れないはずの場所が通れるのはよくある話。
また、フラグのミスで、本来あるイベントが終わってからじゃないと行けない場所に行けてしまったり、逆にマップを戻ることで不具合が起きたり。
他にも不具合はたくさん起こりえます。それこそゲームがフリーズする危険なものから、クリア後のおまけで紹介したくなる笑えるものまで色々。

これが一本道のゲームならまだいい。分岐が多いゲームだと不具合は更に起きやすく、発見しにくい。
全ての分岐パターンをチェックする必要は無いですが、最低でも全てのルートとエンディングはチェックしたいところ。
……やってみるとわかりますが、楽しいはずのゲームがこれほど憂鬱になるのかと落胆しますよ。

また、不具合とまでは言わなくても、ゲームバランスの調整も難しい。
よくあるのは攻略情報を知ってる作者と情報がないプレイヤーのギャップ
RPGなら敵の弱点や最適な育成方法、それ以外でも謎解きの難易度、それ以前に重要キャラの配置や宿屋などの施設の場所なども情報ギャップが起きやすい。
進行上必要な施設を無視された日には、ゲームのクリアは不可能。

それを避けるためには攻略情報を知らない人にテストプレイしてもらう必要があるのですが、それも適切な返信が来るかどうか。
ゲーム製作者仲間の方が信頼できる返信は来るけど、製作者だから気付けない問題点もあるのが厄介この上ない。

それでも、不具合を見つけて直せたならまだいいでしょう。
不具合の原因がわからなかったり、原因はわかっても直せなかったり、そもそも不具合の再現すらできないことも少なくありません。
また、不具合を直したら他のところに不具合が出る……といったことも起こりえます。
そして、不具合の修正自体は何の面白さも生まない。不具合があるゲームはつまらないが、不具合がなくなったところでマイナスがゼロになるだけです。

考えてみてください。

終わらない不具合のチェックと修正をしている間に、絵師は皆に喜ばれるイラストを描いてるんですよ?
不具合修正という、こんな非生産的で、誰も得しない活動は他にあるでしょうか?

それと比べれば、ノベルゲームのデバッグは簡単です。
プレイヤーの操作が限られるため、一通りプレイして演出ミスや誤字脱字を探すだけでいい。
割と見逃しやすいのが発言者の設定ミス。このせいで男言葉で話すヒロインが何度爆誕したことか。
分岐が多いとやっぱり大変ですが、それでもRPGとかよりはラクです。

……一本道ノベルゲームのテストプレイすらめんどくさい?
悪いことは言いません。そういう方はゲーム制作を諦めてイラストか小説に転向しましょう
それでも絵のチェックや誤字脱字のチェックからは逃れられないですが。

ノベコレに投稿できる

なんだかんだあって、アナタのゲームは完成しました。
問題はこれをどこに投稿するか。
今日日、個人サイトに上げるのは少し厳しい。そもそも検索エンジンからあなたのサイトに来てもらうこと自体が困難。
大抵の場合、フリーゲーム掲載プラットフォームに登録して公開することになります。

少し前まではRPGアツマールというニコニコ動画の関連サービスがあったのですが、既にサービス終了済み。
現在はふりーむ・ノベルゲームコレクション・PLiCy・フリーゲーム夢現が主なフリーゲーム掲載プラットフォームです。

ふりーむ


ふりーむ
は最大手フリーゲーム掲載プラットフォーム。
DL数は比較的伸びやすくヒット作も狙える一方で、100DLに満たない作品も多いのが実情。
最近は表現規制が厳しめで、掲載見送りになる作品も多い。
特に暴力的な表現は厳しく、殺人・自殺・自傷行為などの表現はまず通りません。
もっとも、ノベルゲーム以外のジャンルは比較的規制は緩いようですが。

あと、最近は審査に時間がかかるという難点もあります。
長いものだと1ヶ月近く待たされたという話も……。

PLiCy

PLiCyは審査は緩く、プレイ回数はそこそこ伸びる。
このサイトの特徴は、DL不要のブラウザゲームとしてプレイできること。
本来ブラウザで動作しないはずのウディタ 製作品であっても、なぜかブラウザでプレイできます。
ただ、ブラウザゲームとしての配信のみ対応で、DL版が配布できないのが難点。
特に凝ったシステムのゲームだと、ブラウザ版だと処理が重くなる。
というか、ティラノやツクールMV・MZ製作品でもどうも動作が重いような。

……そもそも私はPLiCyにゲームを上げてないので、詳しいことはわかりません。すまぬ。

フリーゲーム夢現

フリーゲーム夢現も審査が緩く、掲載までの日数も短い。
DL版・ブラウザ版共に配布できるのも強み。
ただ、どうも人が少ないのか、あまりDL数が伸びないのが難点。
私の作品の場合、ふりーむ版の1/4〜1/7程度のDL数しかいかない。

ノベルゲームコレクション

お待たせしました。ノベルゲームコレクション(以下ノベコレ)の紹介です。
ノベコレはティラノビルダー・スクリプトの開発と同系列のサービスで、ティラノ製ノベルゲームのみ公開としているサイト。

DL数はふりーむ並ですが、ふりーむと比べて下振れでもそこそこ伸びるのが特徴。
ふりーむでは100DLも行かない駄作でも、ノベコレでは500DLを超えるといったことがよくあります。
また、毎年ティラノフェスというイベントを開催しており、これに参加するとコメントも来やすくなります。
ゲーム製作者は反応に飢えやすい生き物ですが、ティラノフェスに参加すればこの問題はある程度緩和されるでしょう。

また、ふりーむと比べて規制が緩いのも特徴。
ふりーむでは掲載見送りになる内容でも、ノベコレでは通ることはあります。
そして、掲載までの日数も比較的短いのもメリット。

強いて問題点を挙げるとすれば、あまり高頻度で作品を上げると制限に引っかかる……らしいこと。
ただ、月2〜3作ペースで後悔しない限りこの制限に引っかかることはないようです。
そんなハイペースで作品を作れる作者なんて、まずいないでしょうが。でも実際そんな作者がいるんだな、これが
現実的なケースとしては、他サイトで公開した作品の引っ越しをする時が一番該当しやすいと思われます。

あと、有料会員にならないとリアルタイムのDL数を確認できないのもネック。
100DL達成などの通知は来ますが、現在のDL数などはわからない。
もっとも、これは自作品が伸びてないことを無視できるという心理的メリットとも言えるので、一概に悪いとは言えませんが……。

以上のことを考えると、今フリーゲームを公開するならノベコレがオススメです。
そして、先ほども書いた通り、ノベコレはティラノビルダー・ティラノスクリプト専用の投稿プラットフォーム。
そのため、作ったゲームをどこで公開するかではなく、ノベコレにゲームを投稿するためにティラノでノベルゲームを作るという逆転現象すら起こり得るのです。

あと、複数のプラットフォームに投稿するというのも、アリ。
管理は煩雑になりますが、掲載見送りのリスクを軽減できます。
その場合、自サイトを作って作品一覧ページを作るとわかりやすいでしょう。

まとめ

というわけで、皆さん。
特に作りたいジャンルがないけどフリーゲームを作りたいなら、ティラノビルダーでノベルゲームを作りましょう
ティラノビルダーで物足りないなら、Pro版かティラノスクリプトを使いましょう。

尚、ノベルゲームにも問題点はあるのですが……。
それは機会があれば、お話します。

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