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奴隷とは

私が20歳のころ、我が家にやってきたフランス人の友人が13日間の滞在中に奴隷の話をしたことがありました。
「日本には歴史を通じて奴隷はいなかったのでしょう?」と。
そんな短い滞在中に話すようなトピックでもなかったような気がしましたが、今なら理解できるような気がします。
ヨーロッパには昔から根差していた、心のどこかにある問題なんだと。

私のオーストラリアの友人は、自分のおばあさんは奴隷だったと言っていました。
彼女はオーストラリア近辺の土着の人だったそうですが、ということは、やってきたイギリス人が彼女が住んでいた島の皆を奴隷にしてしまったということか、と私は考えてしまいました。

コロンブスの後、次々と南北アメリカ、そして太平洋の島々(アジアの国々もそうでした)に彼らは探検、あるいは布教、という名のもとに押しよせ、人々を殺戮・・・そうしなくても奴隷にしていったのです。
スペイン人、ポルトガル人が南アメリカ、あるいは中米でしでかしたことは読むに堪えられません。
彼らを人間としては扱っていません。

かといって、イギリス人が押し寄せた新世界、北米はどうかというとスペイン人、ポルトガル人とどこも違うようには思えません。
いや、少し違っていました。もっと悪い?皆殺しにしようとしたのです。

そんなことをして自分のものとした土地にアジア人が移民すると排斥運動を起こしたり、前の戦争中は日本人のみキャンプに入れられたり・・・。

そのことをニュージーランドの友人に言うと「それでもナチのdeath camp死の収容所 とは違うからいいじゃない」と言われてしまいました。
人間の尊厳を奪ってしまうような収容所のどこが違うものか、と私は思ってしまったのですが。

奴隷のslave 自体、もともとの語源はスラブSlavで、つまり、奴隷が足らなくなるとスラブ(東欧)まで奴隷集めに行っていたということから帰来しています。
slaveは酷使して働かされる、という意味の動詞にもなっています。

古代、奴隷を持つということが制度化される前は、戦いなどでとらえた人間を食料として「保管」していたのだけど、食料事情がよくなり人間を食べなくてもよくなった・・・そして、彼らを田畑で働かせた方が様々な意味で利得があると判断するようになった。
これが奴隷制後の始まりです。

古代、戦争で負けた人々はすべて奴隷にされました。
奴隷の命の価値などみじんもなく、歴史の中でギリシャ・ローマ時代、ご主人様が危害を加えられようとしているのに何もしなかったその家の奴隷たち400人すべてが殺されてしまった、という記録が残っています。

奴隷というものはそのようなもの、と考えると、その後の歴史上で黒人奴隷たちがどのように扱われたかが理解できると思います。

なお、新大陸に送り込まれたこの黒人奴隷たちには、はなはだ迷惑な話でしたが、黒人たちが奴隷としてアメリカに送り込まれるようになった背景には、あまりに酷使されすぎるインディオたちの惨状を見るに見かねたカソリックの神父(スペイン人だったと思います)が黒人なら大丈夫、耐えられるだろうと提言したことが始まりになったのです。
彼も、その先、黒人たちがあれほどひどい状態に置かれるとは思ってもいなかったでしょうが。

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