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泥棒になった日

仙台藤崎でのポップアップ中、思いがけない人からメールが届いた。

ここではそのメールの送り主をAとしよう。AはBに謝りたいと考えているが、Bの状況を把握できず、このタイミングでの謝罪が適切か判断しかねる、ついては私の判断で頃合いを見計らってBに添付の謝罪文を送ってほしい、という主旨のメールだった。

メールの内容を把握した私は、とりあえず謝罪文を読まずにポップアップ会場に戻った。添付ファイルを開いてすらいなかったが、その謝罪文がある程度の長文であることは想像ができたし、さらにその内容についても、あまり“期待できる”ものではない、と踏んでいた。

店頭で接客しながら、私は謝罪文をBに見せないことを前提として、Aになんと返事をするか、ぼんやりと考えていた。謝罪文をBに転送しないことを明言するべきか、それとも転送した、あるいは転送する、と嘘をつくべきか、悩んでいたのだ。


嘘をつくことはどれほど「罪」なのだろう。「嘘つきは泥棒のはじまり」なんて言葉もあるくらい、嘘は忌み嫌われている一方、「嘘も方便」のように、“用法・用量”によってはポジティブな結果をもたらす場合もあると考えられている。

嘘がポジティブな結果をもたらすための条件というのは2つあるように思料する。ひとつは嘘をつかれた人の幸福度が、真実を告げられる場合よりも高くなること。もうひとつは嘘をつく人がその嘘によって大きな利益を得ないこと。今回のケースは、Aに対して私がBへと謝罪文を転送しないことを告げる場合よりも、転送を仄めかしてあげたほうが、Aの幸福度は高いといえるだろう。また、私がBへと転送しないのは、私ではなくBのためなので、特に私が利益を得るわけではない。つまり、本件は「嘘も方便」の成立条件を満たしているといえよう。


ホテルに戻り、謝罪文を読んでみた。案の定、Bには見せない方がいい内容になっていた。謝罪するポイントが完全にずれている。ただ、私がAにそれを指摘したとて、Aにはきっと理解できない。結局のところ、AがBの納得する謝罪ができるわけがないのだ。

AとBのふたりは、今後も交わるべきではない、と私は考えている。それがお互いのためだと思う。

このようにして、私は今日、「嘘をつく」ことを決めた。

そう、私は「正しい嘘」をつくことになる。

きっとそう、これは、「正しい嘘」…


私はAにこんなメッセージを送った。

「謝罪文に関しては任せてほしい。タイミングを見てきちんと共有するから」


私はこの嘘を、一生背負い続けることになるのだろう。それがどれだけ「正しい」ものであっても、私は何か大切なものを奪った“泥棒”であることには変わりない。

それでも私は今日、泥棒になりたい、と思った。それは私なりの、Aへの償いなのだ。


今日私は、泥棒になりました。


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