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思いがけず必死だった

先日、佐賀の武雄にある蔦屋書店で、下の絵本に出会った。

あの、リサとガスパールが、キティちゃんをパリでおむかえ…?

か、かわいすぎる…!即購入した。

何がいいって、このキティちゃんのリサガス風タッチだ。リサガスの気の抜けた雰囲気がキティちゃんをより柔らかくしている。

かわいい。とにかく、かわいい。

オリジナルはフランス語なので、パリの本屋をあちこち回って原書を探しているが見つからない。オンラインで見てもどこも欠品なので、もうきっと手に入らないのだろう。残念でならない。


そんなこんなであれこれ本屋を回っていると、ついつい本を手に取ってしまう。そして、手に取った本をパラパラとめくっているとついつい購入してしまう。

こんな流れでDavid Foenkinosの « Vers la beauté »(美の方へ)という本を購入した。なんとなくタイトルに惹かれて手に取ったが、裏表紙のあらすじがよかったのと、少し読んでみると非常に平易なフランス語で書かれており、私でもほぼ辞書なしで読めそうだったことが購入の決め手となった。リヨンの美術学校の教授アントワーヌが急に職を辞してオルセー美術館の警備員となる…その理由とは…?うん、とっても気になる。

久しぶりにフランス語の本に鼻を突っ込んでいると、語学学校に通っていた頃のことが思い出された。2015年末から2017年のあたままでの語学学校生だったあの頃、ワケがわからないままとにかくフランス語の本を読み漁っていた。まずは村上春樹から取り掛かり(多分当時翻訳されていた全ての村上春樹本は読んだと思う)、そのあとは語学学校の先生に勧められるがままにあれこれ読んだ。そういえばその中には2022年にノーベル文学賞を獲得したAnnie Ernauxの作品もあった。戯曲もよく読んだ。Yasmina Reza、Eugène Ionesco、Marguerite Durasなどなど、フランス語学習によってはじめて触れる世界がいくつもあった。

以前どこかに書いたが、フランスに来る前に始めた語学学習において、私はまずSaint-Exupéryの『星の王子さま』を丸暗記することから取り組んだ。ただ読むだけではもちろん暗記できないから、ディクテーション、書き写し、オーディオブック等々、ありとあらゆる手段を使った。それが結果的にどれだけ私のフランス語力に貢献しているのかは正直よくわからないが、私はこの勉強法をとても楽しんでいたように記憶している。

ちなみに、フランス語学習のために多くの人が最初に手に取る本は私と同様に『星の王子さま』だろうが、この小説は単純過去形をはじめとした上級文法事項が多数出てくるのであまりお勧めしない。

もっと簡単に読める本が実はあるのだ。

Camusの『異邦人』である。

はじめて読んだ時、それはまだ語学学校に通っていた頃のことだが、自分のフランス語が飛躍的に上達したのかと錯覚したほどだった。それくらいに読みやすい。それに気分をよくして次に手に取ったPatrick Modianoでしっかり現実に引き戻されたが、いずれにしても『異邦人』があの当時の私に自信を与えてくれたことは確かだ。


ふと思い返すと、フランスに来てすぐの頃は、楽しみながら勉強をしながらも、自分では気づかないほどに必死になっていた。私はいつも自分自身に、「人生なんてどうなるかわからないんだから、うまくいかなかったらそれはその時さ」と言い聞かせていたが、そんな声をよそに私はまっすぐ努力をしていた。今思うとそれはなんだか不思議なことに思われる。


たまたま手に取った本によって思いがけず昔のひたむきな私が浮かび上がってきた。それは私をとても懐かしい気持ちにさせた。

今の私は、大変なことも多いながらものんびりやっているつもりだ。ただもしかしたら、当時の私のように、自分が思っている以上に必死になっているのかもしれない。歳も歳な訳だし、もう少し自分を労わってあげてもいいのかな…そうしないと、本の主人公のアントワーヌみたいに、急に仕事を辞めてオルセー美術館の警備員になってしまうかもしれないしね。


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