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シングルノート…?

伊勢丹新宿店での「サロンドパルファン2023」にて、ひとつ気になったことがある。

複数のお客さんから「これはシングルノートですか?」と尋ねられたのだ。

シングルノート…?そんなことを聞かれたのは初めてだったし、そもそもその言葉が何を意味するのかも知らなかった。

ネットで調べてみると、シングルノートに関する記事があれこれ見つかった。それぞれ述べていることに相違はあるものの、大まかにいうと「トップノート、ミドルノート、ラストノートの差がない、あるいはほぼなく、変化がほとんどない」香りのことを指すらしい。「単一の香料で構成されている香水」という説明をしているウェブサイトもあった。

上記シングルノートの“定義”に則ると、çanomaの香水はもちろんシングルノートではない。トップノート、ミドルノート、ラストノートが明確にあり、時間と共に香りは変化するし、当然ながら複数の香料を用いている。


ところで、先のシングルノートの説明にも、トップノート、ミドルノート、ラストノートという言葉が当然の如く使われているが、それらの正確な意味をきちんと把握している人は意外に少ないのではないだろうか。

トップノートは最初、ミドルノートはその後、ラストノートは最後に香るもの、というのは正確ではない。正しくは、トップノートは最初だけ、ミドルノートは最初から途中まで、ラストノートは最初から最後まで香るもの、である。

香りの持続時間は一般的には分子の質量によって決まる。軽ければ短く、重ければ長い。

分子の質量によって決まるということは、複数の分子で構成されている香料は、そのひとつの香料の中にもトップノートからラストノートまで存在することを意味する。例えば、香水の構成においてラストノートとして用いられるバニラの中にも、それをひとつの香水と見立てて考えるとトップノートとミドルノートが存在することになる。


ということは、もし「最初から最後まで香りの変化がない」という意味でシングルノートの香水を作ろうと思ったら、単分子の香料を使うか、同程度の分子量を持つ物質だけで構成する必要がある。またその意味において、1つの天然香料の香りを複数の香料で再現したような香水は、現実的にはトップノートからラストノートまで存在してしまい、シングルノートとは呼べなくなるはずだ。

ただし、例えば「バラの香りを再現した香水」を作ったときに、香りそのものは時間と共に変化する一方で、「バラの香りを嗅いでいる」という“一定の認識”が常にあることによって、香りの変化がない、と感じる可能性はある。


念のため記載しておくと、私はシングルノートという概念に批判的でも否定的でもない。ただ、その言葉の意味するところを実際に香水で再現しようとするのは思いの外困難であるため、「シングルノートと呼ばれる香水が実際のところどういったものとなっているのか」ということと、「なぜわざわざシングルノートの香水を作る必要があったのか」ということの2点について興味関心がある。その興味関心に基づいて、私はこの記事をしたためているのだ。

前者については実際に香りを試してみないと何もわからないが、後者については私なりの仮説がある。


伊勢丹新宿店で開催された「サロンドパルファン2023」にて一番頻繁にされた質問は、「この香りは時間と共にどのように変化するか」である。

私の知る限りにおいて、フランスで接客をしていて同様の質問をされることはあまりない。つまりこの質問は、フレグランスを購買するにあたっての一般的な質問ではなく、日本マーケットの独自性を表している可能性がある。

これが本当に日本で特徴的な質問だとしたとき、それは日本人が往々にしてフレグランスの時間による変化を嫌う、ということを意味していると考えられるはずだ。

もし仮にそうだとすると、シングルノートという概念が生まれた背景もなんとなく理解できる。香りの変化を嫌う一定数の客層を、「香りが変化しない」ということを全面に打ち出した香り、あるいはブランドを作ることで、しっかり取り込んでいこうとしているのだろう。


ブランドをローンチしてからしばらくは、Twitterでよく消費者からの評価を確認していたが、「çanomaの香水は変化が大きいからイマイチ」といった主旨のツイートを散見するようになって密かに傷ついていたので、ある時点から私は一切Twitterを見なくなった。

çanomaの香水は細かい調整を重ねて作られている。結果的に様々な分子量を持つ香料を使用するので、当然時間と共に香りは変化する。また、肌の上でどう綺麗に香るかを重要視するため、ムエット上での香り方とも差が出ることがある。

私たちが目指すのは「肌の上で、どのタイミングでもきれいに香る」香水だ。そもそも、変化しないことがいいことだとは思わない。


繰り返すが、シングルノートと呼ばれる香水を、批判も否定もするつもりはない。ただ、もしシングルノートを謳っているブランドにおいて、その謳い文句と実際の香水に乖離があるとすれば、それはあまりいいことだとはいえないし、また逆にそういったブランドが、変化のある一般的な香水を、その「変化」という部分をとらまえて批判や否定をするのであれば、それは違うと思う(もちろん、もしそういうことがあったら、という話だが)。


いずれにしても、こういった“代替的な新しい提案”というのは、手を替え品を替えマーケットに登場する。それらは良しにつけ悪しきにつけマーケットのニーズを捉えているので、今後も注視していきたい。


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