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21日の音楽

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2022年9月より、毎月21日に好きな音楽の動画(または音声)について、ひとりよがりに紹介しています。
運営しているクリエイター

記事一覧

忘れちやいやョ by 渡邊はま子

先日、大吉原展を観に行った。これはまた別に書いておかなくてはと思っているのだけど、かつて…

桂田祐介
6日前
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Moon River by Audrey Hepburn

昨日、東京の虎ノ門ヒルズで行われているTiffany Wonder展に足を運んだ。これはあのジュエリー…

桂田祐介
1か月前
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Martha (Tommy) by Bette Midler

まさかの2回目のMarthaはベット・ミドラーによるカヴァー。トム・ウェイツはトム・フロスト(…

桂田祐介
2か月前
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Valentine Moon by Sam Brown and Jools Holland

2月といえばバレンタイン。本邦では女性から男性にチョコレートを贈るのが定着して久しいけれ…

桂田祐介
3か月前
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The Times They Are A-Changin’ by Sinéad O’Connor

先日、地図について書いたときに最後に取り上げたボブ・ディランの名曲The Times They Are a-C…

桂田祐介
4か月前
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Calling You by Holly Cole

riluskyEさんが「シャーマンか巫女のような歌声」と題して書かれていたnoteを読んで、真っ先に…

桂田祐介
5か月前
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再生

Sick & Tired by the Cardigans

ただでさえ一年の終わりに近づくにつれ気忙しくなる11月。今月になってから急に寒くなって、体調も崩しがち。わたしは仕事で徹夜の会議が続いたりしたのもあってどうも疲れが取れない。それだけが理由ではないのだけれど、気分も乱高下してちょっと休息が必要かな、なんて思っている。 Sick and tiredってのは「もう懲り懲り」みたいなニュアンスの慣用句。なにか不愉快なことが続いて勘弁してくれぇってな気分のときと風邪をひいたりして体調が良くないときは共通した感覚だから、どちらも現実から離れた休息が必要で、それでsickとtiredは関連づけられる語なんだななんて思ったり。 1990年代に流行ったThe Cardigansはわたしもリアルタイムで聴いていて、そういえばそんなタイトルの曲があったっけなと思い出した。彼らが今も活動しているのかどうか知らないのだけど、北欧の学生バンドが荒削りな演奏とニュアンスある歌声で人気が出たのはバブル崩壊後の病んだ世相にマッチしていたんだろうかなんて考えてしまう。他の国の様子はわからないけど。 Symptoms are so deep Something here's so wrong Nothing is complete Nowhere to belong なんて聴くとやっぱり病んでるな。で、それから30年近く経った今もそんなところに共感できるのは世相と自分の状況に共通点があるからなのかもしれない。 こうして一年の疲れが溜まってくると、休み休みやり過ごしつつも、そんな経験から学んで来年以降に活かして、われわれは困難を乗り越えてきたのだし、これからもそうでなければ参っちゃうんだよな、だからしんどいときの経験からも何かを得ておく視点が必要なのだね。 そうそう、カーディガンズはLive and learnなんて曲も歌ってた。和歌でいう返歌みたいなもの?にしては毒づきすぎか。ふと気がついた。どちらも英語の慣用句だから、スウェーデンの学生グループには新鮮な外国語として学んだフレーズだったのかも。そう思うとちょっと微笑ましい。うん、疲れ果てていようがうんざりしていようが、どこかほっこりできるポイントを見つけられると良いかもしれない。

Learning to Fly by Tom Petty and the Heartbreakers

先日別のエントリでも書いたけど、わたしはエアレースのファンだ。しかし4年ぶりに開催された…

桂田祐介
7か月前
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Fly Me to the Moon by Tony Bennett

21日の音楽と称して音楽映像や音声をポストしはじめてまる1年。今月から2年目。 先々月にRol…

桂田祐介
8か月前
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Horse to the Water by Sam Brown

先日、映画「コンサート・フォー・ジョージ」を観た。2002年におこなわれたジョージ・ハリスン…

桂田祐介
9か月前
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Rollin' and Tumblin' by Jeff Beck and Imogen Heap

月初に書いていたように、このところTumblrの仕様変更に悩まされている。Tumbleつながり・・と…

桂田祐介
10か月前
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Summertime by Janis Joplin

本日6月21日は夏至。 まだ梅雨は明けないけれど、暦では真夏だ。北半球では1年で最も日が長い…

桂田祐介
11か月前
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Red Violin Caprice by Margarita Krein

先日、伝説の呪われたダイヤモンドのコ・イ・ヌールについて書いたけれど、書きながら思い出し…

桂田祐介
1年前
7
再生

Jesus' Blood Never Failed Me Yet by Gavin Bryars with Tom Waits

数日前にブラッドストーンについて書いたときに取り上げた「イエスの血は決して私を見捨てたことはない」、最後にはったリンクは1975年の約25分のレコードバージョンだったけれど、わたしが初めに聴いたのは1993年にリメイクされた約74分のCDバージョンのほうだった。 じつはこれ、先月も紹介したトム・ウェイツが参加している。ご賢察のとおり、わたしはトムがらみで聴いて知った。 トムが深夜ラジオを聴いていたとき、1975年のレコードバージョンが流れてきたらしい。キャスリーン夫人の誕生日の深夜3時だったとか。延々と繰り返される老人の素朴な歌声に釘付けになり、トムのお気に入りになった。後年、トムが英国ツアー中にギャヴィンに直接「レコードを無くしたから買いたいけど、廃盤になっていて手に入らない、譲ってくれないか」と連絡したという話がある。もちろんギャヴィンはマネジャーのもとに残っていた1枚を進呈。 それからおよそ10年後、現代オペラ「ブラックライダー」を観にニューヨークを訪れていたギャヴィンのほうからトムにリメイク盤への参加を持ちかけて実現したのが1993年のCDバージョン。倍以上の長さになったこのリメイクの後半部分、この世のものとは思えぬ(←褒め言葉)ドスの効いた嗄れ声のウェイツ節バックコーラスが印象的。 便利なもので今はフルレングスだけでなく、この後半部分のみでもネットで聴けるのだからありがたい。 無名の老人の口ずさんだフレーズの素朴さに寄り添うようなトムの太い声と弦楽合奏。 わたしはクリスチャンではないので厳密な意味でこのフレーズの重みを実感はできない。けれど、あちらこちらで物騒なことばかりで不穏な現代には、現状に感謝してすこしでも希望がもてる「見捨てられない」という視点は、異教徒てあっても大切にしたい感覚だと思う。