小林製薬の「紅麹問題」を考える際に重要な視点は何か

去る3月29日(金)、小林製薬が製造した紅麹を原料とする機能性表示食品による健康被害問題について小林章浩社長が記者会見し、今回問題となっている腎疾患についてプベルル酸の可能性であることを示唆しました[1]。

小林製薬側による説明では、健康被害のあった製品のロットに予定しない物質を検出し、分析の結果プベルル酸の数値が高いことが分かったとのことです[1]。

すでに、小林製薬が本社を置く大阪市が製品の回収命令を出し[2]、岸田文雄首相が参議院予算委員会に置いて政府として再発防止に向けた対策を検討する意向を示すなど[3]、社会問題となっているだけに、人々の関心が高まるのは当然のことです。

また、プベルル酸について、4月2日(火)の22時時点で医科系の論文などを収載したデータベースである医中誌Webで「プベルル酸」を検索語として調べると、該当する文献は7報であり、米国国立医学図書館の提供するPubMedでpuberulic acidを検索しても6報が該当するのみです。

同様に、4月2日(火)の22時5分の時点で「アミノ酸」を検索すると医中誌Webで154,537報、PubMedでamino acidを調べると1,630,794報が該当することを考えれば、プベルル酸に関する研究が進んでいないことが分かります。

今回の問題で関心を集めている、腎疾患の原因となる「未知の成分」として、プベルル酸が推定されるとしても不思議ではないでしょう。

しかし、プベルル酸に関するこれまでの研究は抗マラリヤ薬としての検討が中心であり、腎疾患は対象となっていません。

従って、現時点ではプベルル酸は研究が進んでいない物質であると言えても、腎疾患の原因となる「未知の成分」であるか否かは不明であることは明らかです。

こうした状況を考えれば、プベルル酸と腎疾患の因果関係を実証することは現時点で不可能であり、明確な関連のない二つのものを挙げてあたかも直接の関係があるかのように議論することは、むしろ問題の所在を隠し、解決を遅らせるだけになります。

それだけに、報道機関は今回の小林製薬の紅麹問題について、より慎重で、証拠に基づいた報道を行うことが求められます。

[1]青カビ由来物質 原因か. 日本経済新聞, 2024年3月30日朝刊1面.
[2]小林製薬に回収命令. 日本経済新聞, 2024年3月27日夕刊1面.
[3]再発防止政府で検討. 日本経済新聞, 2024年3月28日夕刊1面.

<Executive Summary>
What Is the Important Viewpoint to Understand the "Benikoji Supplement Issues"? (Yusuke Suzumura)

The Kobayashi Pharmaceutical held the press conference to explaine the detailed information of the "Benikoji Supplement Issues" on 29th March 2024. On this occasion, we have to have a viewpoint based on evidences.

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