NHK交響楽団第2010回定期公演

去る5月11日(土)、12日(日)、NHKホールにおいてNHK交響楽団の第2010回定期公演が行われ、第1日目の実況録音が本日MNHK FMで放送されました。

今回は、前半にパンフィリの『戦いに生きて』とレスピーギの『ローマの松』が、後半に同じくレスピーギの『ローマの噴水』と『ローマの祭り』が演奏されました。指揮はファビオ・ルイージでした。

NHK交響楽団の首席指揮者に就任以来、「イタリア人指揮者」という枠の中に収められまいとするかのようにイタリアの作曲家の作品のみで一回の定期公演を構成することを避けてきたのがルイージでした。

実際、主たる活躍の舞台がアルプス以北であったという経歴に基づくことをわれわれに思い出させる曲目が定期公演には並んでおり、2023年12月の第2000回記念では公募によって選ばれたマーラーの交響曲第8番「一千人の交響曲」が取り上げられたのは、ルイージの意欲の高さを示しているかのようでした。

それだけに、時代を異にするとはいえレスピーギとパンフィリという2人のイタリア出身の作曲家の作品によって構成された今回の定期公演は、ある意味で満を持してのものであり、ルイージの自身の一端が表れていると言えるでしょう。

第1曲目のパンフィリは世界初演を手掛けたルイージによる日本初演となりました。

打楽器を強調した点と、調性音楽的な旋律に特徴があり、「戦いに生きて」という題名が与える印象に比べて穏健で内省的な作品でした。

続くレスピーギは、NHK交響楽団が音の大きな楽団であることを聞き手に思い出させるとともに、細部の彫琢にも手を抜かないことを示す仕上がりとなりました。

『ローマの松』の重厚感、『ローマの噴水』の静謐さ、そして『ローマの祭り』の開放性と、語法は同じながら持ち味の異なる3つの作品を取り上げつつ、その内奥に潜り込むことでそれぞれの音楽の輪郭を明瞭に描き出すことに成功していました。

特に『ローマの噴水』は抒情的な性格をよく表現しており、ルイージの音楽作りの手堅さを示すものでした。

<Executive Summary>
The NHK Symphony Orchestra the 2010th Subscription Concert (Yusuke Suzumura)

The NHK Symphony Orchestra held the 2010th Subscription Concert at the NHK Hall on 11th and 12th May 2024 and the record of the first day was broadcast via NHK FM on 16th May 2024. In this time, they performed Panfili's Abitare la battaglia (Japan Premiere), Respighi's Pines of Rome, Fountains of Rome, and Roman Festivals. Conductor was Fabio Luisi.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?