鈴村裕輔

名城大学教員、法政大学客員研究員。主な専門は比較思想、政治史、文化研究。 / Dr. …

鈴村裕輔

名城大学教員、法政大学客員研究員。主な専門は比較思想、政治史、文化研究。 / Dr. Yusuke Suzumura is an associate professor of Meijo University. https://researchmap.jp/suzumura/

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求められる「残業代の見直し」を超えた教員の処遇改善

5月13日(月)、文部科学大臣の諮問機関である中央教育審議会の特別部会は公立小中高校の教員の残業代の代わりに基本給の4%を上乗せする教職調整額を10%以上にすることなどを盛り込んだ素案を了承し、文部科学省は2025年の通常国会において教職員給与特別措置法(給特法)の改正案を提出する方針となりました[1]。 公立学校の教員採用試験の受験者数が年々減少し、2023年度の小学校教員の採用倍率が過去最低を記録するものの[2]、教員の賃金の引き上げには文部科学省はもとより各自治体も消

    • 【旧稿再掲】ユニフォーム着こなし最前線(II)

      2010年4月、私も寄稿者の一人として参加し実業之日本社から実用百科の一冊として『野球道具天国』が刊行されました。 その中の一報に「ユニフォーム着こなし最前線」[1]があり、野球におけるユニフォームの発展の過程と2010年時点における最新の動向を検討しました。 そこで、今回は4回の予定でご紹介する本論の草稿の第2回目をお届けします。 ネクタイ着用の新橋アスレティックス 日本における最初の本格的な野球団である新橋アスレティックス倶楽部が誕生したのは、1877年のことである

      • 【現在募集中】法政大学国際日本学研究所「2024年度若手研究者研究論文」

        現在、法政大学国際日本学研究所(HIJAS)では、若手研究者を対象とする「2024年度若手研究者研究論文」を募集しています。 HIJASの学術研究員及び客員学術研究員、大学院博士後期課程在籍者及び修了後または満期退学後5年以内の方、もしくは編集委員会が適当と認めた方の応募が可能です。 国際日本学に関わる未発表論文であれば応募可能で、査読の結果最大3件までが採択されるとともにHIJASの紀要『国際日本学』に全文が掲載され、研究奨励金が支給されます。 本制度は日本においては

        • NHK交響楽団第2009回定期公演

          去る4月24日(水)と25日(木)にサントリーホールにおいてNHK交響楽団の第2009回定期公演が行われ、5月11日(土)に第1日目の実況録音がNHK FMで放送されました。 今回は全てシューマンの作品が取り上げられ、前半に歌劇『ゲノヴェーヴァ』 序曲とチェロ協奏曲が、後半に交響曲第2番が演奏されました。チェロ独奏はキアン・ソルターニ、指揮はクリストフ・エッシェンバッハでした。 この日の公演の最大の聞きどころはチェロ協奏曲で、ピアノ、ヴァイオリン、ホルンなどの妙味を際立た

        求められる「残業代の見直し」を超えた教員の処遇改善

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          『クラシックの迷宮』の「小澤征爾研究」第1回目が示す「小澤開作を通してみる小澤征爾」という試みの重要さ

          今日のNHK FMの『クラシックの迷宮』は「小澤征爾研究(1)小澤征爾と小澤開作」と題し、今年2月6日に88歳で逝去した小澤征爾さんの父で戦前は中国東北部で活躍した小澤開作に焦点が当てられました。 「小澤征爾研究」の第1回が小澤開作というのは一見すると奇妙に思われます。 何故なら、小澤開作は歯科医であり、中国東北部の長春にいた1931年の満州事変を境に日本の満洲政策に深く関わるようになったものの、開作自身は音楽家でも音楽活動と深く関わったわけでもないからです。 しかし、

          『クラシックの迷宮』の「小澤征爾研究」第1回目が示す「小澤開作を通してみる小澤征爾」という試みの重要さ

          【追悼文】小山内美江子さんについて思い出すいくつかのこと

          去る5月2日(木)、脚本家の小山内美江子さんが逝去されました。享年94歳でした。 1960年代からテレビドラマの脚本家として活躍し、これまでにNHK大河ドラマ『徳川家康』(1983年)や『翔ぶが如く』(1990年)などの重厚な歴史物から『3年B組金八先生』(1979-2004年)の連作、あるいは『アイフル大作戦』(1973-1974年)や『バーディー大作戦』(1974-1975年)のような、活劇まで幅広い分野で多くの作品を手掛けたことは周知のとおりです。 私も滝田栄さんの

          【追悼文】小山内美江子さんについて思い出すいくつかのこと

          カルロ・マリア・ジュリーニの生誕110年を祝す

          本日、指揮者のカルロ・マリア・ジュリーニが1914年5月9日に生まれてから110年目を迎えました。 ジュリーニというと名声の高さに比べ、世界的な楽団を率いた時期が短く、その経歴の多くの時期を特定の団体に関わることなく送ったということもあり、「孤高の指揮者」とも呼ばれることは広く知られる通りです。 また、3回にわたって来日したものの、1982年を最後にその芸術が完成期を迎えた最晩年は待望されつつ日本を訪れることはありませんでした。 結果として、1998年10月に引退するま

          カルロ・マリア・ジュリーニの生誕110年を祝す

          新型コロナウイルスの5類への移行から1年に際してわれわれは何をすべきか

          本日、2023年5月8日(月)に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が2類から5類に移行し、法律の面では従来の結核や重症性呼吸器症候群と同等の扱いから、季節性インフルエンザと同様の枠組みの中に入れられることになってから1年が経過しました。 この間、飲食店などでの新型コロナウイルス感染症への対策が緩和されるとともに、感染症予防として励行されていたマスクの着用や密集、密接、密着のいわゆる三密への対応も事実上撤廃されました。 あるいは今年3月の訪日観光客が1か月の人数とし

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          ベートーヴェンの交響曲第9番の初演から200年目によせて

          本日、1824年5月7日にウィーンのケルントナートーア劇場においてベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」が初演されてから200年目を迎えました。 交響曲の頂点であり、欧州連合の歌として第4楽章が用いられたり、ワーグナーが交響曲は本作で終わり、自らは歌劇における交響曲の創出を志して「楽劇」へと至ったりしたことは広く知られるところです。 ベートーベンの「第九」にはこれまで多くの優れた演奏があり、会場や録音でわれわれに様々な印象を与えています。 一方、初演の際は好評を博すだ

          ベートーヴェンの交響曲第9番の初演から200年目によせて

          プラレール博 in TOKYO 2024

          昨日、サンシャインシティのワールドインポートマートビル4階の展示ホールA及び文化会館ビル4階の展示ホールBにおいて、プラレール博 in TOKYO 2024を見学しました。 今年は1959年にプラレールが販売を開始してから65周年の節目に当たるということで、歴代のプラレールを展示したり65編成のプラレールが一斉に走行したりする特別企画や、巨大ジオラマのほか、「プラレールつり」「プラレールあみだくじ」、無地のプラレールに着色して自分だけのプラレールを作ることが出来る「プラレー

          プラレール博 in TOKYO 2024

          こどもの日に考える日本の少子化対策の過去・現在・将来

          今日はこどもの日です。 5月4日(土、祝)に総務省が発表した2024年4月1日時点の15歳未満の人口は1401万人となり、比較可能な1950年以降で最少となりました[1]。 岸田文雄政権は少子化対策を政権の重要政策の一つに掲げ、2023年4月1日にこども家庭庁を発足させるなど、「異次元の少子化対策」が単なる題目に留まらないかのような意欲を示しています。 その一方で、これまで行われてきた少子化対策が有効であるか否かは不明であり、現在の対策もただちに効果を上げるものではない

          こどもの日に考える日本の少子化対策の過去・現在・将来

          【旧稿再掲】ユニフォーム着こなし最前線(I)

          2010年4月、私も寄稿者の一人として参加し実業之日本社から実用百科の一冊として『野球道具天国』が刊行されました。 その中の一報に「ユニフォーム着こなし最前線」[1]があり、野球におけるユニフォームの発展の過程と2010年時点における最新の動向を検討しました。 そこで、今回から4回の予定で本論の草稿をご紹介します。 ユニフォーム着こなし最前線 鈴村裕輔 最初のユニフォームは麦わら帽子に白いシャツ 野球選手が全員揃いの服を用意して試合に臨んだ最古の記録は1849年にまで

          【旧稿再掲】ユニフォーム着こなし最前線(I)

          憲法記念日に考える岸田文雄首相の改憲への本気度

          今日は憲法記念日です。 憲法記念日のたびに注目が集まる話題のひとつのは、憲法の改正の可能性の有無です。 確かに、今年1月の施政方針演説において岸田文雄首相が「自分の総裁任期中に改正を実現したいとの思いに変わりはなく、議論を前進させるべく、最大限努力したいと考えています。今年は、条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速してまいります。」と改憲への意欲を示したこと[1]は、改憲の期限について国会で言及するという点で異例の出来事でした[2]。 しかし、歴代首相の中でも特に

          憲法記念日に考える岸田文雄首相の改憲への本気度

          【評伝】フジコ・ヘミングさん--様々な困難を乗り越えた「魂のピアニスト」

          去る4月21日(日)、ピアノ奏者のフジコ・ヘミングさんが逝去されました。享年92歳でした。 幼少期からピアノ奏者として頭角を現していたものの16歳の時に病気で右耳の聴力を失い、29歳で渡独し、バーンスタインやマデルナの知遇を得て本格的な演奏活動を始めようとしたものの風邪が原因で一時的に左耳の聴力をも失うなど、ヘミングさんは様々な困難に見舞われます。 その後、一時はピアノの教師をする傍らで清掃員を務めるなど、演奏活動からは遠ざかります。 しかし、一見すると遠回りに見えた過

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          制定から5周年目を迎えた「令和」によせて

          本日、2019年5月1日(水)に明仁陛下が遜位され皇太子徳仁殿下が当極されるとともに元号が平成から令和に改まってから5年が経ちました。 国内的にはバブル経済の崩壊から長期の経済の低迷、さらには阪神・淡路大震災やオウム真理教による地下鉄サリン事件、あるいは東日本大震災など、従来の日本が経験してこなかった類の様々な困難に直面し、国際的には冷戦の終結による超大国としての米国の登場とその後の多極化の進展という過渡的な時代となったのが平成という時代でした。 そして、この5年間を振り

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          青山フィルハーモニー管弦楽団第9回定期演奏会の開催から30年によせて

          本日4月30日、1994年4月30日(土)に世田谷区民会館において東京都立青山高等学校の部活動である青山フィルハーモニー管弦楽団(青フィル)の第9回定期演奏会が行われてから、30年目を迎えました。 この公演での演奏曲目は以下の通りでした。 ベートーヴェン/歌劇『フィデリオ』序曲(指揮:鈴村裕輔) シュトラウス2世/皇帝円舞曲(指揮:和田義之) チャイコフスキー/交響曲第6番「悲愴」(指揮:鈴村裕輔) ブラームス/ハンガリー舞曲第6番(アンコール、指揮:鈴村裕輔) 当時、

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