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No.10 GTO Wizard Blogの解釈記事【Visualizing implied odds】

本記事はGTO Wizard Blogを私なりに解釈し、友人に説明するならどのように書くかな?と再まとめしたものとなります。
今回の記事は「What is Equity in Poker?」になります。

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今回は「インプライドオッズ」について、詳しく記載をしていこうと思う。インプライドオッズは、ポーカー理論に関してかなり重要な指標である。恐らく、君はこの言葉をポーカールームで耳にしたことがあるかもしれないし、基本的な理解ができているかもしれない。しかし、ソルバーの時代になって、この概念は大きく進化/進歩した。非常に重要な概念になるので、しっかり本日も座学をしていこう。

■ インプライドオッズって?

インプライドオッズ(Implied odds)は、「自分が有するEQ以上にチップが得られる期待値」を指標化したものである。例えば、君はドローを持っているとしよう。もしドローを引くことができれば相手のハンドを捲ったことになり、その際に君は相手からよりチップを奪い取れると「期待ができる」のである。この概念は「ポットオッズ」の情報と絡めて状況判断をする。コールするのに十分な「生の」EQがないにもかかわらず、一部ハンドのコールが利益的になる理由を説明できる。


■ ポットオッズとインプライドオッズについて

これから、以下の例で各種オッズを見ていこうと思う。
君はターンで10bbのポットサイズベットに直面している。そして、25%のEQを持つドローを持っている。これはコールすべきだろうか?

ポットオッズの計算

ポットオッズとは過去の記事で説明した通り、コールで少なくとも損益分岐点を割らないために必要な勝率(%)のことである。これは、後のストリートでチップが入らないことを前提としていることに注意が必要である。

後のストリートで起こる事象は以下の通り。

  • 25% の確率でドローを完成させ、 20bb (ポット + 相手のベット) を獲得する。

  • 75% の確率でドローが引けず、 コール分の10bb を失う。
    →コールの期待値 = (25% x 20bb) – (75% x 10bb) = 5 – 7.5 = -2.5bb

明らかに、これは負けるコールであることがわかる。

ただし、この計算には、後でポットに入るチップを無視している。そこでインプライドオッズについて、考えていこう。


インプライドオッズの計算

このコールを正当化するためには、リバーでいくらかの追加のお金(M)を獲得しなければならない。
※君はドローをミスした場合、いつでもフォールドすることができるとしよう。

25%の確率でドローを完成させ、20bb + Mを獲得する。
75%の確率でミスし、コール分の10bbを失う。
→コールの期待値={25% x (20+M)}-(75% x 10)

損益分岐点を上回るには、ドローを完成させた時にどれだけ追加で勝つ必要があるだろうか?EV をゼロに設定し、M を求めてみよう。
0 = (25% x (20+M)) - (75% x 10) M = 10

M=10なので、コールを正当化するために、リバーで10bb以上勝つ必要性があることがわかった。これはリバーでの1/3ポットベットであるため、ドローを引いた際に1/3ポットベットを引き出せるのであれば、このコールは正しくなるのである。

言い換えれば、このコールはリバーで少なくとも10bbを獲得することを「暗示(インプライド)」している。これが「インプライドオッズ」の由来である。


■ EQRとの関係性について

次の例を見てみよう。

SBがオープン(3bb)し、君はBBがコールするブラインドヘッズだ。 フロップは J♥T♦6♥2♣である。 SB は ポットの75% をベットし、君はコールする。続けてSBがターンでポットの175%にオーバーベットする。アクションは君に移り、5♥3♥を持っている。

ではまず初めに、ポットオッズの計算から始めよう。

現在のポットは15bbである。175%betを受けているため、26.25bb のベットに直面していることになる。今回、5♥3♥のマージナルなコンボドローを持っていて、このハンドのEQは31.68%である。

ポットオッズは以下の通りに計算ができる。

必要なEQ = (コールする金額) / (コール後のポット – レーキがあればレーキ)
26.25 / (15 + 26.25*2 – 0.6) = 39.24%

SB がAIしていた場合やリバーがチェックダウンになる場合、必要勝率を満たさないためフォールドとなるだろう。 ただし、コール後、スタックは66.25bb残っていて、5♥3♥はインプライドオッズにより、EQ以上のチップ獲得を期待しているのである。

GTO戦略を見ると、コールが推奨されている。5♥3♥のEVはフォールドするよりも5.33bb高い。これはコールした後に「26.25bb + 5.33bb = 31.58bb」の獲得を期待していることを意味している。ベットをコールした後、ポットは67.5bbになるため、君の期待されるポットシェアは(31.58 / 67.5)= 46.78%である(レーキは無視する)。オレンジ色の31.68%は「生の」EQの数値である。

要約すると

  • 「生の」EQは31.68%である。

  • 実際のポットシェアは46.78%である。

→つまり、EQを148%(46.78 / 31.68)オーバーリアライズしていることとなる(EQR)。より正確に言うと、後からバリューを引き出す能力があるため、EVは「生の」EQが示す値よりも高くなる。これがインプライドオッズの基本的な性質である。


■ リバースインプライドオッズについて

インプライドオッズとは対照的なリバースインプライドオッズも存在する。例えば、ドローが完成したとしても、大きなポットを失うこともある。また、メイドハンドが後のストリートでドミネイトされたり、アウトドローされたりし、ポットの公平な分け前を得られないこともある。中途半端な強いハンドを作ることは、自分の利幅を大きく減らすことになる。

例えば、J♥T♦6♥2♣の例に戻り、K♠J♠を持っているとしよう。

K♠J♠は54.71%のEQを有していて、相手レンジの半分以上をリードしている。しかし、相手のオーバーベット(ポットの175%)に対してはブレイクイーブンを超える程度にしかならない。相手のレンジがポーラライズしている場合、マージナルなメイドハンドは相手のバリューハンドに負けている。これらのハンドはブラフキャッチャーであり、リバースインプライドオッズが乏しいのである。

(筆:トップヒットであっても、ボードの展開と相手から受けるベットサイズによってはただのブラフキャッチャーになります。過信し過ぎないように注意が必要です。)

ここでも26.25bbを獲得しなければ収支が合わないが、K♠J♠は26.25+2.21=28.46BB、つまりポットの28.46/67.5=42%を勝つことになる。

「生の」EQ: 54.71%
ポットのシェア: 42.16%

上記から、EQR=77%と計算することができた。これからわかることは、「EQの77%しか実現できていない」ということである。

では、残りのEVはどこに消えたのだろうか?

SBはEQをオーバーリアライズすることができており、リバーで君のトップペアをインディファレントにすることができる(筆:「インデファレント」という概念は超重要なので後の記事で説明します。)。相手は強力なバリュー/ブラフで君にプレッシャーをかけ/アウトドローし/トップペアをスタックさせて、大きな利益を得るのである。

君は全てのリバーベットをコールすることはできないはずだ。ブラフキャッチャーは持っているものの、相手のレンジはとても強く、君が相手からバリューを引き出すことはできない。

今まで説明してきたことを視覚化してみよう。

以下の図が相手のオーバーベットに対する君のEQ分布である。線上の点は君の全てのKJsを表している。見ての通り、真ん中の長い平らな線は君が持つ、ブラフキャッチャー群である。BBのレンジの殆どがインディファレントとなっている。

(筆:相手のバリューには負けるが、ブラフには勝つ状態ですね)


■ インプライドオッズとスタックの関係性

スタックの深さ(エフェクティブスタックが何bbであるか。ということ)は、インプライドオッズに最も関係する要素となる。スタックが多ければ多いほど、後のストリートでチップを獲得する(または失う)可能性が高くなり、インプライドオッズ/リバースインプライドオッズが高くなるのである。

では標準的なキャッシュゲームで、スタックの深さが異なる際にソルバーがどのようにHJ オープンレンジを変化させるか比較してみよう。

HJ open: 50BB deep

このスタックでは、インプライドオッズを考慮すべきであるがそこまでではない。例えば、君がフラッシュドローでベットをする際、まだストリートが残っているのにチップを全て投入してしまう可能性ある。そのため、インプライドオッズが低くなるかもしれない。

HJ open: 100BB deep

スタックが深くなるにつれ、下位のポケットペアやスーテッドコネクター等、一般的にインプライドオッズの高いハンドが好まれることがわかる(トーナメントチャートではより顕著である)。

スタックが浅い時に使う「高EQのAI」から、スタックが深い時には「インプライドオッズが高く使いやすいハンド」にレンジが広がっていくのがわかる。60BB以上になると、インプライドオッズの影響により、他のプレイヤーがより広いレンジでポットに参加できるようになる。そのため、オープンするレンジは狭くなるのである。


■ マルチウェイによるEQの変化とインプライドオッズの変化について

インプライドオッズは、ナッツになりうるドローハンドの性能に関係する。この効果は「プレイアビリティ」と呼ぶこともある。次の図は、ある2枚のカードを持った2~14人のプレイヤーのEQ分布である。この図からはEQがマルチウェイでどのように変化するかを見ることができる。この図では正確な数字よりもグラデーションに注目しよう。

https://blog.gtowizard.com/wp-content/uploads/2022/11/visualizing-implied-odds-11.gif

(筆:すみません。図が添付できなかったのでURLからご確認ください。)

驚くことに、プレイヤーの数を変更することで、GTOのオープンレンジにほぼ似たEQ勾配を作ることができる。例えば、上位44%のハンドのEQ勾配は標準的な100bb BTN オープンレンジに似通っている。

相手が3人の場合でも、100BBではインプライドオッズの価値が重要視されるようだ。GTOを再現するために、マルチウェイのEQ計算を8人に増やし、インプライドオッズとの相関性を見てみよう。

プレーヤーを増やすと、EQ勾配はナッツドローになる確率の高い、より多くのスートとコネクターハンド側にシフトしていく。このように人数を増やし、インプライドオッズの影響を高くすることによって、良く見慣れたレンジを確認することができた。

(筆:人数の調整は自分で調整が可能なパラメータ、インプライドオッズで行うことができるということですね。インプライドオッズで行うといっても実際には「インプライドオッズの高いハンドにシフトさせる」で調整を行うことになります。)

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