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No.13 GTO Wizard Blogの解釈記事【MDF & Alpha】

本記事はGTO Wizard Blogを私なりに解釈し、友人に説明するならどのように書くかな?と再まとめしたものとなります。
今回の記事は「MDF & Alpha」になります。

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本記事では、「超」「超」重要な指標である「MDF」と「α」を説明していく。このMDFとαは、あるサイズのベットに直面した際、どれぐらいの頻度でディフェンスをする必要があるかを示してくれる指標である。

もし、君がディフェンスをしすぎた場合、相手はバリューベット頻度を増やすだけでエクスプロイトできる。また逆にディフェンスしなさすぎな場合、ブラフベット頻度を増やすだけでエクスプロイトが可能だ。よって、優れた戦略を構築するためにはブラフがインデファレントになるようにコールを行わないといけない。

実際、この指標にはいくつかの問題があるのだが、大事な理論である。

さぁ、本日もしっかり座学をしていこう。


■ MDFって何?

MDF(Minimum Defence Frequency)は、相手の「EQ 0% のハンド」をブラフとギブアップ(ブラフしない)の間でインディファレントにするために、自身がコールする必要のある頻度を示す値である。

(筆:適切な頻度でコールすることにより、ブラフする側をブラフしても、しなくても良いようにしています。)

MDFは、相手がブラフによって、利益を得ることができないようにするためのものである。ブラフを有効にさせないために、最低の頻度でディフェンスをする必要がある。つまり、MDFは相手のブラフを0EVにするための指標である。

(筆:ちなみに「ディフェンス」とはアクションの継続を指していて、レイズまたはコールがディフェンスのアクションとなります。そして、ディスタンスの頻度とはレンジの中の上位〇%をディフェンスするか。ということになります。)


■ MDFの注意事項

MDFは相手の過剰なブラフを防ぐための対抗策と考える必要がある。その中で、以下に記載する内容を「本当に」気を付けてほしい。

「相手が理論値よりもブラフをしていない場合、 MDFは使わないこと」

明らかにブラフが不十分な場合、ブラフを 0EV にすることはできないと言っても良い。対抗をやめ、バリューヘビーな相手に対してオーバーフォールドしよう。MDF はブラフで利益を得られないようにするための対抗策としてのみ使うべきだ。

(筆:アミューズメントポーカーは基本的にブラフが足りないことの方が多いです。そのため、MDFを使用する場面はないとは思います。ですが、理論としてはきっちり知っておくべき内容です。)


■ αって何?

MDFを「盾」と表現するなら、αは「剣」である。αは自身の「EQ 0」のブラフが損益分岐点になるために、「相手がどのくらいフォールドする必要があるか」を示す。

もし、相手のディフェンス頻度が少ないと思うなら、たくさんブラフをしたら良い。反対に頻繁にディフェンスをしてくる場合は、ブラフをするのか?について、再検討しよう。

(筆:とは言うものの、エクスプロイトって極端でディフェンス頻度が少ないのであれば全てブラフしたらいいですし、ディフェンス頻度が高いのであればノーブラフでバリューヘビーにしますね。ただし、相手がカウンターエクスプロイトをしてこない前提で話しています。)

またMDFとαの関係は以下の通りである。

α = 1 – MDF
MDF = 1 – α


■ 計算式について

ポットに対するベットサイズから、ブラフをインディファレントにするために必要なディフェンス頻度を計算する。

まずαについては以下の計算式にて、計算が可能だ。
α = risk/(risk+reward)

ここで、「risk = ブラフでリスクを負う金額」、「reward = フォールドした場合に得られる金額」である。

別の計算方法もあり、ベットとポットのサイズから計算する(筆:言い方を変えただけです。)。注意すべき点は、レイズの場合には適用不可である点で、ファーストベットでのみ適用できることである。

MDF = pot / (bet+pot)
α = bet / (bet + pot)


■ 実例

例①

君は $100のポットに $60をベットする。αとMDFを確認してみよう。

  • Risk = $60 (ブラフには$60のリスクがある)

  • Reward = $100 (フォールドした場合に得られる金額)

α = risk/(risk+reward)
α = $60/($100 + $60)
α = 37.5%

君のブラフが損益分岐点になるには、相手は少なくとも 37.5% の確率でフォールドする必要がある。

MDF は単純に 1 – α である。この場合、MDF = 1 – 37.5% となり、62.5% になる。したがって、相手は君のブラフを損益分岐点にするために、レンジの上位62.5%をディフェンスする必要がある。相手のディフェンス頻度がこれより低い場合には、ブラフは利益をもたらすことになる。しかし、ディフェンス頻度が高い場合、ブラフは損失を被ることになるのである。


例②

君は$100のポットに$60をベットし、相手は$200にレイズした。MDFとαはどうなるか?

相手は ($100 + $60) のポットを獲得するために $200 のリスクを負っている。

α = risk/(risk+reward)
α = $200/($200 + $160)
α = 55.5%
MDF = 1 – α = 44.5%

従って、有益なブラフレイズを防ぐためには、ベットしたレンジの 44.5% をディフェンスする必要がある。逆に、ピュアブラフで利益を得るには、相手のベットレンジの少なくとも 55.5% をフォールドしてもらう必要がある。

(筆:実際、このレイズには55%以上のレンジをフォールドさせられる気がしています。そのため、現在のフィールドはブラフレイズが得になる環境かもしれません。このようなことを検証することはとても有意義ですので、理論勉強だけでなく、現環境に適用したらどうなるか?も是非考えてみてください。)


■ 一覧表

これら数値をまとめたものは以下の通りである。

※最初のベットにのみ機能するシートである。レイズの場合には数値が変わるため、注意してほしい。


■ EVの計算について

MDF と α は損益分岐点のみ、我々に教えてくれる。もし、どのくらい利益的か?を知りたければ、単純なEVの式を使用して、ピュアブラフの収益性を計算することができる。これはまた、相手のコールレンジに応じて、自身のレンジが利益的かを測定することもできる。

ピュアブラフのEVは次のように示される。
EV (Bluff) = (Fold% x Pot) – (Call% x Bet)

これは相手がフォールドした時にポットをどれだけ得ることができるか/相手がコールした時にベット分がどれだけ失うかを計算している。ここでは、ブラフはピュアブラフであるため、コールされると必ず負けると仮定していることに注意が必要だ。

では実際に例を挙げて、検討をしていこう。

ポットは$100である。君はリバーにて、ピュアブラフで 125% のポットオーバーベットをした。相手はレンジの 40% をコールすると見積もっている。

EV (Bluff) = (Fold% x Pot) – (Call% x Bet)
EV (Bluff) = (60% x $100) – (40% x $125) = $10

つまり、相手はオーバーフォールドすることとなり、このブラフの EV は $10 になる。

それでは、君のブラフEVが$0になるためには、どれくらいの頻度で相手にフォールドしてもらう必要があるだろうか?

α = risk/(risk+reward) = 125/225 = 55.5%

相手がレンジの 55.5% フォールドする場合、このオーバーベットブラフが損益分岐点になる。

フォールドの頻度によるブラフの収益性をグラフにしてみよう。

  • 相手のフォールドが少ないほど (左側へ)、ブラフで損をする。

  • 相手のフォールドが多ければ多いほど(右側へ)、ブラフの収益性が高まる。

本例題では、(0, -125) と (1, 100) の間に直線を引くことができ、その線が x 軸と交差する場所はブラフの損益分岐点であり、必要なフォールド%を表す。そして、この交差はαとなり、55.5%となる。

このグラフに色を付けてみよう。
右側には、相手が 55% を超える頻度でフォールドする +EV ゾーンが表示される。左側には -EV ゾーンがあり、そこではフォールドの頻度が 55% 未満になる。


■ 指標の限界を知ろう

MDFには下記の大事な前提がある。

「MDF はブラフにEQがないと仮定する。」

しかし、上記仮定は残念ながら殆どの場合において、実現しない(実際、ポーカーのブラフではリバーの前だと、ある程度のEQを保持している)。例えば、EQのあるドローでセミブラフを行うことができるし、ハイカードハンドでブラフしても、相手のバリュー領域の一部に勝つ可能性もある。

次の章にて、EQがある場合にはどうしたらよいか?を説明してこうと思う。


■ チェックバックにてEQが残っている場合

ブラフハンドをチェックバックした際、EQを有するとしよう(相手のブラフハンドにEQがある)。その場合、コーラー側として、ブラフのEVを$0にしようとする必要はない。


筆:以下の例があったかと思います。
例①
君は $100のポットに $60をベットする。αとMDFを確認してみよう。

  • Risk = $60 (ブラフには$60のリスクがある)

  • Reward = $100 (フォールドした場合に得られる金額)

実際、この例のMDFは相手のブラフをEV=0にしています。それを今から確かめてみようと思います。

MDFは「pot/(pot+bet)=reward/(reward+risk)」であるため、「100/(100+60) = 0.625 (62.5%)」になりますね。

このディフェンス頻度を守った際にEVがどうなるかを計算してみましょう。

EV (Bluff) = (Fold% x Pot) – (Call% x Bet)
EV (Bluff) = (0.375 x $100) – (0.625 x $60) = 0 となります。

そのため、MDFを守ることは相手のブラフをEV=0にしています。そして、上記で言っているのは、相手のブラフハンドがEQを有する場合、EV=0にする必要はない。と言っているのです。


代わりに、君がやるべきことは、「これらのブラフをベットとチェックの間でインディファレントにすること」である。

例えば、相手がリバーにおいて、メイドハンドでブラフしている場合を考えよう。この場合、ブラフに勝つことができるハンドにのみ、MDFを適用する必要がある。ブラフキャッチャーではないハンドにMDFを適用する意味はなく、なぜならばチェックバックをしても相手のブラフに負けるからである。

実際に例を挙げて、考えていこう。

相手がリバーでポットAIをしている。相手のブラフは20%のEQを有していることがわかっている。相手のブラフをインディファレントにするには、どのくらいディフェンスをする必要があるだろうか?

君がやるべきことは、「ブラフのEV」を「チェックバックのEV」と等しくすることである。その際、チェックバックの EV は 20% ポット(EV=pot×EQ)であることがわかっている。

(筆:EVが等しい=混合戦略となる=インデファレントになる。ってことですね。)

EV bluff = 0.2 (pot) = (fold% x pot) – (call% x bet) ※potのAIなため、pot=betとなる。
0.2 = fold% – call% ※fold%=1-call%
0.2 = (1-call%) – call%
Call% = 40%

上記計算により、EQ=20%のブラフをされた場合には、レンジの40%をディフェンスする必要があることがわかった。もし、EQ=0%のブラフであれば、50%のディフェンス頻度となる。この10%の頻度差は相手がEQを放棄してまでブラフを仕掛けてきた代償である。また、このような言い方も可能だ。相手はチェックバックのEQを放棄した分、有益なブラフをすることができた。
この章をまとめると

EQの有するブラフをされた場合の目標は「(相手の)bluffEV = checkEV」にすることである。今回の例の場合、「Check EV = 20% pot」、「Bluff EV = 20% pot」となった。そしてショーダウンバリューのあるハンドでブラフされると、ディフェンスレンジが狭くなることに注意が必要だ。

(筆:基本、EQのあるブラフがほとんどなので、MDFよりもオーバーフォールドすることになるかと思います。)


■ ブラフがコールに対して、EQがある場合

次の例として、相手はターンでポットAIを行うとする。相手のブラフは君のコールレンジに対して、 EQ=20%を有するドローで構成されている(このドローでターンをチェックするEVは20%ポット)。もし、このドローをベットとチェックの間でインディファレントにするには、どのくらいのレンジをディフェンスする必要があるだろうか?

今回の目標は、「ブラフの EV をターンでチェックバックした場合の EV と等しくすること」である。その際、チェックバックの EV は 20% ポットであることがわかっている。

目標:EV (bluff) = EV (check) = 20% pot
EV (Bluff) = (fold% x pot) – (call% x bet)

上記方程式をコール時のEQを含めるように変更する必要がある。具体的には、「コールされたら負けていた分 call% x bet」がコールをされた後の「ドローを引いて勝つ分 win% x (bet+pot)」と「ドローが引けずに負ける分 lose% x bet」の2成分に分解されるのである。

0.2pot = (fold% x pot) + call% x [win% x (bet+pot)] - call% x (lose% x bet)pot = bet = 1, fold% = 1 - call%, win% = 0.2, lose% = 0.8 を代入すると
call% = 57% となる。

これをより直感的に解釈すると、コールされた時のブラフハンドにはEQがあるため、ピュアブラフとして比較して、ブラフとしてのリスクが少なくなるということである。

実際、以下のAIはほぼ同じ価値(リスク/リワード比)となる。
「20% のドローでポットサイズのAIを行った場合」=「ピュアブラフ (EQ=0%) での75%ポットAIを行った場合」

その意味では、EQがあるハンドでブラフをするということは、ベット金額が少なくなったようなものである。これは、ドローが多いボードでは大きくベットできることが多い理由と関係しているが、実際のところ強いドローをインディファレントにできるようなケースはほとんどない。

(筆:恐らくEQを有しすぎているからでしょうね。以下に計算結果を残しておきます。※ターンです)


■ GTOはMDFに従うか。

GTO WizardのComplex ソリューションの集合分析を用いて、GTO のフォールド頻度 (青) と想定される MDF のフォールド頻度 (赤) をグラフ化した。このレポートは1,755 のフロップ全てが含まれている。結果としては、BBは全てのベットサイズに対して、オーバーフォールドしていることがわかった。

次のグラフは、SB 対 BB SRP である。この場合、ディフェンス側はポジションを持っているため、平均して MDF にかなり近いコールを行っている。

(筆:ポジションを有していれば、MDFに従ってディフェンスしてもよさそうですね。)


■ オーバーフォールドの場面紹介

MDFに比べてディフェンス頻度を下げることは、実際多くの場面で好ましい結果をもたらす。MDF に従ったコールの課題点は、前述した通り、0EVを超えるハンドをブラフされた場合にはMDFに従わないということである。

(筆:ベットとチェックの間でインデファレントにする考え方が必要でしたね)

これは座学する上でのトイゲームでは問題にならないが、実際のポーカーではブラフにEQがあることがほとんどであるため、問題になる。実のところ、ほとんどの場合において「過小なディフェンス頻度」の方が「過大なディフェンス頻度」よりもエクスプロイトされる可能性は低くなることを知っておこう。

一般に、次の場合はMDFよりもディフェンス頻度を下げる必要がある。

  • フロップまたはターンでOOPにいる場合 (IPのブラフにはチェックバック時にEVを有するため)

  • 相手がメイドハンドでブラフしている場合 (ブラフに勝てるハンドにのみ、MDF を適用するため)

  • 相手のチェックバックにEVがある場合

  • 相手がバリューヘビーである場合

CO vs. BB SRP QQ3rの例を見ていこう。

このボードにおいて、BTNのブラフハンドのほとんどがEQとEVを有している。さらにBBはEQを実現できないのである(EQRが低い)。その結果、BBはこのフロップでオーバーフォールドする必要がある。

COが c-bet 33%を打った場合、BBのMDFはレンジの75%をディフェンスするはずであるが、ソルバーはオーバーフォールドしており、レンジの半分でしかコールをしていない。

(筆:OOPは基本的にこのようなシチュエーションが多いため、オーバーフォールドしておいた方がいい。ってことですね)


■ オーバーディフェンスの場面紹介

MDF に比べてのオーバーディフェンスは稀なことである。一般に、アグレッサーのブラフがコーラーのレンジに対してEQを保持しているスポットにおいて、オーバーディフェンスが見られる。相手が過剰なブラフを仕掛けている場合に、それを利用してオーバーディフェンスをするのである。

一般に、次の場合はMDFよりもオーバーディフェンスする必要がある。

  • ドローの多いボードにおけるアーリーAI

  • 君がインポジションにいて、相手がEQを保持するドローでブラフしている場合

  • チョップボードの場合

  • 相手がブラフ過多の場合

例えば、以下の面白いスポットを見てみよう。BTN vs. BBの4BPで、BTNがフロップで134%AIを行った。

MDF によると、BB は α = 134/234 = レンジの 57% をフォールドし、レンジの約 43% をコールする必要がある。しかし、ソルバーは約10% オーバーコールしていることがわかる。

(筆:これはドローの多いボードでのアーリーAIに当たりますね。)


■ まとめ

MDFは「相手がブラフで利益を得ること」を防ぐために使用される対抗策である。α はあるベットサイズで君がブラフを行う場合、どれくらいの頻度で相手にフォールドしてもらう必要があるかを教えてくれる。

これらの指標は「ブラフにEQがないこと」を前提としている部分に注意が必要である。ただし、これはディフェンスするレンジを大まかに判断したり、フォールドをどのくらいの頻度でしてもらう必要があるかを判断するのに役立つ。相手のブラフがオーバーまたはアンダーだと思われる場合はうまくアジャストすることを心がけよう。ただし、MDF には頼り過ぎないように注意が必要だ。

GTO 戦略は(平均して)IPでは MDF に従い、OOPからはオーバーフォールドする。

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