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本の線引きは「つまり」と「しかし」を掴み取れ ─恐怖の現代文授業の記憶

晴天に恵まれたGW、皆様いかがお過ごしでしょうか?
僕は妻と子供と出かけて、たくさんのインコといくらかのウズラを見ました。

体が覚えている線の引き方

そんなGWでしたが、今日はゆっくり本を読む時間があり、その内感想を書きたいと思っている「暇と退屈の倫理学」を再読していました。
一度読みましたが、心には響いてくるものの全体の意味を自分のものに出来ていないと思って、線を引きながら、要点をまとめながら進んでいます。

この作業をやりながら、思い出していたことがあります。
それは、高校時代の現代文の授業のこと。
意味を取りながら文章に線を引く時、当時習った作法が今もずっと染み付いているのです。

恐怖の現代文講師

他の教科の授業の内容は、正直、殆ど思い出すことがありませんが、
現代文の授業の記憶は強烈です。
何しろ、先生が物凄く厳しかったのです。

高校に入って受け取った時間割。「現」の字を見て、まあ、現代文は流して受けられるし、最悪勉強しなくてもそこそこできるしな・・・
みたいな舐めた事を考えていました。
きっと先生も、ゆるめな人なんじゃないかなと思っていました。

初めての現代文の授業。
入ってきた先生は、日に焼けて背が高く、眼光が鋭い人でした。
元はもっと恰幅が良かったのか、着ているワイシャツが異様にブカブカで、
髪はボサボサ。
喉が響くような声で、低めのテンションで話し始めました。
程なくして、授業の内容に入っていきます。
ワークを解いていく実習形式。
一つひとつの問題を、席の端から指名して回答していく方式です。
「わかりません」と答えると、「じゃちょっと立ってて」とその場で起立を促されます。
そして解答権は次の人へ。その人が筋の良い答えをすればリセットされ、全員が座って解説が始まります。
問題は、「わかりません」と、頓珍漢な答えが連続した時です。
徐々に先生の放つオーラが黒くなっていきます。
そして何人目かがNGを出した瞬間

「ーーーーーーーー!!!」

聞き取れない早口で物凄い怒号が飛び、
そこにある長い黒板消しを掴むと

「ここに書いてあるだろォ!!!」

とガンガンガンガンと叩きまくる。

この余りの迫力に、2回目の授業からは現代文の前になると、
皆が教卓に向けて机を少し斜めにずらし、
背筋を伸ばして目を見開き食い入るように話を聞くのでした。

当時、あそこまで烈火の如き怒りに触れたことがなかったので、
かなりの衝撃を受けるとともに、
現代文の授業が憂鬱になってしまいました。
けれども、しっかり受けて怒られないようにするしかないので、
僕もやはり集中して、先生の伝えていることを受け取ろうと努力しました。

すると、だんだん、現代文の持っているシステ厶と、
読み解いていくためのコツが、厳選された手法で伝えられていることに気づくのでした。
そこから、現代文がとても楽しくなりました。
(相変わらず、怒号には慣れませんでした)

先生の言っていたことの中で、今もずっと染み付いていて、
今日もまさに使っていたのが、「線の引き方」です。

線の引き方

論文系の文章に使う方法です。非常にシンプル。

前提:論文は作者の主張を読み解くことが目的。

手法①:<つまり>は、その前の内容を要約してその後に書く合図である。
<つまり>の後には作者の主張が来ることが多いので、<つまり>を四角で囲み、その先で意味が切れる所まで傍線を引く。

手法②:<しかし>は、否定によってその先の内容を強調する合図である。
<しかし>の後には作者の主張が来ることが多いので、<しかし>を三角で囲み、その先で意味が切れる所まで傍線を引く。

他には『具体例』になっているところは括弧で囲み、関連する作者の主張を線で繋げる、繰り返しになっている部分をグループ化して記号を振っておく、などの引き方もありますが、そちらは受験対策的な意味合いが強いように思います。
(高難易度の問題になると、それらを駆使しないと精読時間が足りなくなる)

なので、僕は、基本的に手法①、②で線を引いた上で、
「文章による意味の切れ目」と「段落による意味の切れ目」
を意識しながら各部を理解し、
それらを積み上げ、時に関係させるように読む。というようにしています。
あとはキーワードを強調したり、<しかし>以外の否定系でも②と同じく考えたり、
単に感動したところに線を引いたりもしています。

などといつもそんな読み方をしているような書き方をしましたが、
今日、久々に本格的な線引き読みをして、思い出が蘇ってきたので書き留めてみました。

線引きから取り組む精読は、
頭のトレーニングをしているような負荷と心地よさがある作業です。
まずは気負わず書きこめる文庫本を買って、どんどん書いて、付箋を貼ってみよう。
そうやって読んだ本こそ、後で本棚から引っ張り出した時に力を貸してくれるものだと思います。

ここまでお読み頂きありがとうございました。


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