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VRが進化したら、旅はどうなるんだろう

最近なにかと話題のVR。

私も1度だけ体験したことがある。

舞台はおとぎ話に出てきそうな暗い洋館の一室。振り向くとそこにゾンビがいる、というだけのシンプル(?)な映像だった。だけどそのリアリティにびっくりした。映画館の4D体験でさえ、かわいく思えるくらい。

私の次に試した先輩は、高層ビルのあいだを綱渡りする映像だったらしい。死ぬわけないと頭ではわかっていても恐いそうで、その場で「無理!死ぬ!こわい!」と座り込んでしまった。

VRが発達すれば、今の私たちには夢のような体験が実現するんだろう。そうだな、ハリポタの世界に入り込めるVRなんて発明されようもんならもう二度とゴーグルを外せないかもしれない。海の底で魚を眺めたり、あ、宇宙なんかもいいな。

・・・なんて妄想しててふと思った。

VRが発達すれば、海外旅行の疑似体験だってできるようになるはずだ。日本にいながらにして。長距離フライトで背中が痛くなったり、貴重品ポーチでお腹がかぶれたり、誰かに騙されたりボラれたりすることなく、かんたんに世界の絶景を堪能できるようになる日はきっと遠くない。

私の友人にアサノという旅嫌いがいるのだけど、彼は私にこう言う。「お金出してまで危険な思いして、汚くなって帰ってきて、お前は物好きやねぇ」と。

アサノに言わせれば、VRで海外体験ができるようになれば、それこそ実際の旅なんて行く価値のないものになるのだろう。彼の言うことは一理ある。

じゃあ、私はVRに満足して、旅をしなくなるんだろうか?
そう思いかけて、1秒で結論が出た。

そんなこと、絶対ないな。

まだ見たことのない場所に思いを巡らせながら、飛行機の窓の向こうを眺める瞬間。降り立った空港で、初めて深呼吸して、その場所の匂いをすいこむ瞬間。ぶっきらぼうなタクシードライバーや、かえって不安になるくらい愛想の良い受付のおっちゃん。雑然とした狭い食堂で出会う絶品ごはん。見知らぬ国で出会う一瞬一瞬が、どうしたって愛おしいのだ。だから何度だって旅に飛び込んでしまう。

写真が生まれたからこそ、絵画の良さが見直されたように。VRが進化すればするほど、やっぱり現実世界の泥くさい旅の良さにハマっていってしまうんだろう。

そしてやっぱり真っ黒に日焼けして帰ってきて、呆れるアサノに得体の知れないお土産のお菓子をわたしてたりするんだろう。



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