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社会人になってもドミトリーに泊まる理由。

ひとり旅のときは、必ずドミトリーに泊まる。「もうちょっとちゃんとしたとこに泊まりなよ、大人なんだからさ」と友人にたしなめられたこともある。「女なんだから、個室に泊まらないと危険でしょ」と心配されたこともある。

だけどどっちも否定させてほしい。二十歳そこそこのときはたしかに「お金がない」という後ろ向きの理由でドミトリーに泊まっていた。だけど次第に、ドミの面白さにハマってしまったのだ。

たしかに、数千円出せばたいがいの国でビジネスホテルクラスになら泊まることができる。そこにはいつだって、清潔なタオルと狭いシャワールームに申し訳程度の机、ちいさなテレビがある。だけどそれだけだ。どこへ行っても、どのホテルに泊まっても大して差はない。

一方、ドミトリーは面白い。国によって、経営する人によって、全然違う顔があるから。

先日台南で泊まったUIJホステルという宿は、置いてあるものすべてがおしゃれで可愛く、ため息が出てしまうようなものばかりだった。シャンプーやハンドソープもオーガニック系のいい香りだし、置いてある本やレコードもしゃれてる。スタッフの制服までかわいい。そしてたったの1500円。

実は、下手なホテルに泊まるよりも、画一化されてないドミトリーに泊まるほうがよっぽどかわいい宿に出会える確率が高いのだ。

もちろん、かわいさやおしゃれさだけが良さじゃない。

人との出会いが楽しめるのもドミトリーならではだ。ドミならたいてい、同じ部屋にひとり旅の仲間がいる。そこから話がはずんで一緒に観光に行くことだってしょっちゅうある。昨日まで他人だったもの同士が、なぜか夜遅くまでリンゴ片手に話し込んでしまったりする。慣れない外国語を必死で話すのに疲れてしまったら、ドミで日本人らしき人に声をかけてみることもある。声をかけられることもある。「日本人同士だから」という理由だけで誰かと仲良くなれることなんて、ほかになかなかない。

ドミはお金のない人が泊まるとこ、という先入観が、少しでも変わっていくと嬉しいなぁと思ってる。旅の可能性を、ぐんと広げてくれる場所。それがドミトリーなのだ。


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