旅にテーマは必要か？

永遠の対立みたいなテーマだけど、旅に出るために目標やテーマって必要だと思いますか？

■必要派の意見
「目的のない旅は得るものも少ない」
「テーマのない旅はつまらない」

■いらない派の意見
「行くだけで価値がある」
「行った先で理由が見つかる」

こんな言い方はズルいとわかってて言うけど、どっちの言い分もわかる。

学生時代の私は、完全に理由が「必要派」だった。いま学んでることに紐付いた場所に行かなきゃ、という気持ちが強かった（英文学を学んでるからイギリス、韓国文化の授業を受けてるから韓国、など）。予備知識があれば旅を深く楽しめるのは事実だし、目的があるからこそ現地での吸収もぐんとあがる。それは間違いない。歴史を知らなきゃ、世界遺産だってただの大きな石ころにしか見えなかったりする。その国で何をしたか、何を観たか、語れることにこそ価値があると思っていた。

思っていた・・・と過去形にしたのは、最近になって考え方が変わってきたからだ。

なんとなく惹かれる、という直感だけで旅に出たっていいじゃないか。なんにもしない時間を楽しむ旅だって、あっていいじゃないか。そう思うようになってきた。だって目的があろうとなかろうと、旅に出さえすれば面白いものに出会えるから。出会ったときに、面白がれる心の準備さえあればいいんじゃないかなって。

あと、年齢が上がるにつれて年下の人にアドバイスする機会も増えてきたのも考えが変わった理由のひとつ。

「ひとり旅したいんですけど、ミーハーですかね？」なんて申し訳ない顔をして話しかけられると、「気にせずいっておいでよ！」と熱弁したくなる。

理由や目的、テーマがあって旅する人はやっぱりかっこいいし素晴らしいと思うけど、明確ななにかを持っていないからと言って恥じる必要は全然ない。

異国の気温を肌で感じて、その土地にしかないにおいを肺いっぱいに吸い込んで、ぎこちなく外国語で挨拶を交わして。いつもより少し積極的に知らない人に話しかけたり、急にさびしくなって、世界でひとりぼっちみたいな気分になって恋人にLINEしたり、でも時差があるから返信はなかったり。そんな些細な経験だって、きっとその後のあなたの人生に風を吹かせてくれるはずだ。