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【屋久島空港問題 ♯4】 情報隠しとウソとごまかしのパンフ

屋久島空港の滑走路延伸計画の根本的な欠陥を明るみに出すために、このノートを書いていますが、前回までに次の2点がわかりました。

・本計画の表向きの目的はジェット機の就航ですが、実際には1,500mや1,800m滑走路でも十分ジェット機が飛ばせるので、2,000mに延伸する必要性はありません。

・でも実は裏の目的があるらしく、2015年頃に2,000m滑走路が急浮上。それと同時に鹿児島県が突然積極的になって、本計画を策定しました。

そのためにパンフは裏の目的を伏せつつ、あくまでも表向きの目的のために2,000m滑走路の必要性を立証しなければなりません。いったいどうやって説明説得しているのか、今回はこれを見ていきます。


パンフの術中にはまってしまった私たち


「現在の屋久島空港の滑走路長1,500 mでは、プロペラ機の就航は可能ですが、ジェット機の就航は難しいことから、その解消が課題です。
このため、鹿児島県ではジェット機が離発着可能な滑走路長2,000 mへの延伸を目指して、取り組みを行っているところです。なお、就航するジェット機は定員160~180名のB737-800又はA320を想定しております。(略)また、現在開発中の国産ジェット機(定員80~90名程度)についても離発着が可能になります。」

前回までの記事を読んでくれた皆さんは、「プロペラ機や1,800 m滑走路でも羽田直行便が可能」という町長の答弁も(♯3)、1,500m滑走路でどんどんジェット機を飛ばしている丘珠空港の実績も(♯2)よくご存じのはず。

そこでもう一度パンフp5の結論部分(♯1)を読み直してみると、いやいや1,800mはどうしたんだ?とか、現行のままでもいけるんじゃないの?等と、思わず突っ込みたくなったかもしれません。

でもかつて皆さんが何も知らずにこの箇所を読んだときには、

そうか、2,000mじゃないとジェット機を飛ばせないから、2,000mに延伸するんだな

とあっさり納得していたのではないでしょうか。納得というよりは特に疑問も持たずに流していただけかもしれませんが。

筆者自身、議会だよりを遡ってみるまでは、1,800 mの可能性なんて全然知らなかったし、町長の答弁に確信が持てたのも、つい最近丘珠空港の情報が検索にかかるようになってからです。

議会だよりと丘珠空港の存在がなければ、2,000 mの秘密は闇深く埋もれたままだったかもしれないのです、それこそパンフの狙い通りに。

パンフの文章はまさに隠すこと、気づかせないことを旨としており、読者を誤認に誘導するための様々な仕掛けが施されています。

それらの仕掛けを逐一分析するまでもなく、さらりと読み流して疑問を抱かなかった私たち自身が、まんまとパンフの術中にはまった証拠ではないでしょうか。

丘珠空港:住民参画のための丁寧な説明


丘珠空港の資料もまた論より証拠で、パンフの異様さをありありと照らし出して見せてくれます。

札幌丘珠利活用検討委員会配布資料2各種滑走路長毎の効果やデメリット

上記はほんの一例ですが、滑走路の長さを1,500m、1,800m、2,000mの一覧表にまとめて、それぞれのメリット、デメリットをあらゆる角度から丁寧に説明しています。

市民の理解のために正確でわかりやすい情報開示に努める姿勢が鮮明で、他の選択肢に触れもせず2,000mだけを押し付けてくるパンフとは大違いです。
 
札幌丘珠利活用検討委員会配布資料3滑走路延伸のケースごとの比較

使用/想定機種についても、航空機の写真や実際の就航路線等、具体例をあげているので部外者ですら興味深く、豊富な判断材料を容易に得ることができます。

翻ってパンフはB737-800、A320と書くだけで一言の説明もなく、筆者などはBがボーイング、Aがエアバスを意味することさえ全くわかりませんでした。わからなければ検索すればよいものの、普通はそこまで手間暇かけたくないし、検索の手立てがない人もいます。茫漠たるイメージのまま確たる判断材料を与えないことも、パンフの手法のひとつです。


札幌市HP「丘珠空港の利活用検討メニュー」

ことほど左様にほんの少々見比べただけでも、丘珠空港と屋久島空港の住民向け説明資料は、180度逆方向を目指していることが明らかです。

質はもちろん量的にも圧倒的な差があって、屋久島町民に配られたのが後にも先にも全10ページのパンフひとつでおしまいだったのに対して、札幌市の上記HPでは、順次市民に公開されてきた各種大量の資料が閲覧可能です。

屋久島空港:住民参画とは名ばかりの情報隠しと、ウソとごまかしのオンパレード

「パブリック・インボルブメントとは『住民参画』といわれ、公共事業を構想・計画・立案する段階から実施に至るまで、事業の進め方・経緯・内容について広く情報を公開し、みなさまからご意見を聞きながら事業を進めていこうという仕組みです。
事業の透明性・客観性の確保や住民関係者との円滑な合意形成を図ることを目的としています。

PIの基本的な考え方は次の通りです。
1 屋久島の住民の意見を積極的に把握します。
2 わかりやすい情報の提供に努めます。
3 透明性、公平性及び客観性を確保したPI活動を実施します。

出典はパンフp1


パンフが冒頭1ページに掲げた住民参画の素晴らしい理念ですが、中身の方は理念を悉く裏切るものと言わざるを得ません。

なぜそんなことになるかといえば、2,000 m滑走路には必要性と正当性のかけらもないので、堂々と説明説得ができないからです。そんなものをごり押しするためには情報を隠し、要らぬ疑問を持たれぬよう極力わかりにくくして、具体性を欠いたウソとごまかしに徹するほかないのです。

筆者が言いたいのは丘珠との優劣ではなく、住民参画、住民説明用の資料として、パンフが明らかに異様だということです。

住民の理解を促進するためではなく、ひたすら住民を欺くために作られているからです。

パンフは一事が万事この調子なので、情報隠しとウソとごまかしを見破る作業はこれからも続きます。その下準備として次回は、新規事業採択時評価の話をしたいと思います。



記事まとめ


【屋久島空港問題 ♯0】 「屋久島空港の滑走路延伸計画」は2,000 m滑走路の必要性を捏造している ~その首謀者と目的は?~

【屋久島空港問題 ♯1】 2,000 m滑走路の目的は、屋久島‐羽田間のジェット機就航。1,500m滑走路でジェット機就航中の空港もあるのに。

【屋久島空港問題♯2】 1,500m、1,800mでもジェット機が飛ぶなら、2,000m滑走路の必要性はない

【屋久島空港問題♯3】 鹿児島県の態度急変と同期する2,000m滑走路。因果関係があるのでは?

【屋久島空港問題 ♯4】 情報隠しとウソとごまかしのパンフ(←現在の記事)

【屋久島空港問題 ♯5】 「新規事業採択時評価」と評価の基準

【屋久島空港問題 ♯6】 需要予測なんかしないで出した “偽りの需要予測” 14万人

【屋久島空港問題 ♯7】 14万人よりかけ離れて少ない実績値(関東からの鹿児島便乗降客数)

【屋久島空港問題 ♯8】 羽田直行便就航後は軒並み採算ライン割れ それでも就航する航空会社は?

【屋久島空港問題 ♯9】 関東方面からの旅費低減と時間短縮で、223億5千万円の経済効果?!

【屋久島空港問題 ♯10】 屋久島町の急激な人口減少

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