見出し画像

拝啓、大好きです。敬具

拝啓、自分宛だと分かってるであろう、君へ。

私は、友だちに「大好きです」なんて言うタイプの人間ではなかった。

何故なのか考えた。

そもそも、日本人は、友だちに「大好きです」などとあまり言わないのかもしれない。

でも、何故なのか考えた。


結論、”相手が自分のことを大好きかどうか自信がない”から、もしくは”相手のことを100%大好きかどうかわからない”からなのではと思った。



今回、その両方を完全に忘れさせてくれた人、大切な、大好きな君に向けて、このメッセージを捧げたい。



約二年間、とてもとても濃い時間を共に過ごした君と離れる時が近づいて、何週間も前から便箋に向き合った。

「拝啓大好きな君へ 今までお疲れ様でした。君と出会ったのは…」

ここまで書いて、筆が進まず、じっくりと考え込む。


想いや考えを言語化することは、わりと得意な分野だと思う。

だけど、言葉が、何も出て来やしない。

出てくるのはただ、君と初めて一緒に歌った時にくるぶしに食い込んでいた畳の感触や、同じベッドに横になった時にお腹の音が共鳴して笑いあった布団の振動、君が焼いてくれたキャロットケーキのやさしい甘さや、いつも口元をにやつかせながら覗く、フジフィルムのカメラから聞こえるシャッター音だけ。

そこに言語化できるものなんて何もなくて、毎日前書きだけを書いた便箋を広げては、閉じていた。


この年になって、友人とここまで濃い時間を過ごすことなんて、ない。


二か月間同じ屋根の下で生活し、三食同じものを食べ、一緒に風呂に入り、休みの日は一緒に美味しいものを食べに行く。



故郷から遠く離れた地に行っても、会えば長い時間を共にし、何度も同じベッドで横になり、時には他愛もない話を、時には深い話をしながら眠りにつく。

朝は必ず君が早く目を覚まし、忍者のようにするっと布団を抜け出してまだ薄暗い朝の中で君の一日を始める。

その気配を感じ、まどろみの中で「ああもう6時前なんだなあ」と思いながら、一時停止した夢の世界の再生ボタンを押す。


「ああ、私は君が大好きだ」

そう思ったのは、君と出会ってからそう長くは経ってない頃だった。

だけど、やっぱり、言葉にして伝えるために必要な自信は、十分ではなかった。


そんなとき君が突如、私の好きなところを20個書いたnoteを、インターネットの大海原に放出した。


ちょうどその時、私は心の病気に侵されていて、あまり正常ではなかったのだけど、とても、とても救われた。


そして今でも、何回も何十回も読み返している。


君が先攻であんな公開ラブレターをくれたことで、私の気持ち悪さがかなり薄れているだろうことに感謝している。


私たちはきっと、見た目では、違う俗種に分類されると思う。

でも、驚くほどに、好きなことが似ていて、笑いのツボが似ていて、でも性格は少し違って、だから新しい発見があって、考え方が似ていて、それでもって依存し合ってなくて、お互い尊敬し合っていて。


毎週会ってなくてもね、君が同じ国で、毎日必死に生きているって事実だけで、頑張れた。

君が一足早く、遠く離れた故郷に戻ることも前々からわかっていたし、笑顔で送り出したかった。

でも、自分が思っていたよりも、君が同じ国にいるという事実は大きくて、頼もしくて、幸せなことだった。

だから本当に気持ち悪いくらい涙の惜別になってしまったけど、でも、そんな君と出会えたということだけで、私は幸せです。


君との思い出を振り返ると、まだ少しだけ涙が出ちゃうけど、私はもう大丈夫。


送別会で残ったワインをひとりで4杯飲んで、やっとこの文章が書けました。


拝啓、大好きな、もえぴへ。

君の生き方や考え方、可愛い見た目や性格すべてが大好きです。

これからも生涯、そのままで、より凛々しく、ずっと友達のままで。



敬具

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?