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<白血病くらし>離れている子供とつながる:入院中でもお互いを近くに感じるために

今回は、入院中に離れていても子供たちと一緒にできること、お互いを近くに感じる方法について。

急性骨髄性白血病は「急性」と名がつくように他の癌に比べて進行の早い癌です。そのため、自覚症状があまり無いままある日突然宣告を受け、そのまま入院、治療の開始というパターンも少なくないようです。子供のいる方は、「ちょっと病院に行ってくるね」から、そのまま子供としばらく会えない長期入院生活に突入ということもあるのではないかと思います。

大切な子供たちを家に残して入院すると、純粋に会えなくて寂しいだけでなく、その経験が子供に与える影響を心配してしまうものです。私も、そうしないようにはしていたものの、常に子供への心配はありました。しかしながら、治療に専念するために私自身が心にゆとりを持つことは、早期回復に大切な要素であっただけでなく、子供にとってこの経験を「辛かった思い出」としてでなく、「みんなで乗り越えた経験」とするために必須のことでした。

子供の対応を専門とするソーシャルワーカーの方に教えていただいた、また私たち家族が実践していた、入院中に離れ離れの子供の心を支える方法、離れていても子供と繋がっていられる方法などをここにまとめてみます。入院中に限らず、長期出張中や単身赴任中など、子供となんらかの理由で会えない時にも使える方法かもしれません。

離れ離れの子供を近くに感じる方法

病室、病院の写真を共有する
子供は曖昧なこと、自分が知らないことがあると、どうしても不安になってしまうものです。そこで、離れている私がどんな場所で、どんな日々を送っているのか、どんな治療をしているのか、分かるように初日からたくさんの写真を撮って送りました。ベット、トイレ、窓からの景色、点滴、カーテルなど。もちろんフェイスタイムなどでタイムリーに伝えるのもいいかもしれませんが、写真は何度も見直すことができるので便利です。特に、主治医の顔を子供たちに見れられたことは、子供たちに大きな安心を与えたように思います。

病気の告知もそうですが、子供たちの「知らないこと」をできる限り減らすことで、子供の不安を取り除き、チームとなって一緒に病気を治すという意識を与えることができました。

ちなみに、子供たちに癌であること伝えた時の話はこちらに書いてありますが、癌についての話をする時も同じく、真実を伝え、不安を減らし、仲間意識を高めることが鍵となっているように思います。

病院訪問
結局これは実現しなかったのですが、ソーシャルワーカーの方が社会科見学のように病院案内をしてくれることになっていました。子供の病室への立ち入りは禁止されていたのですが、せめて同じ病院内を案内してもらうことで、子供の理解が深まり、病院に対しての親近感が私と子供の距離をも近くするというお話でした。

本の読み聞かせ
うちは毎晩子供に本の読み聞かせをやっていたため、私が入院中でも子供用の本を病院に用意して、子供たちに本を読んであげるように勧められました。このことで、入院中でもいつものルーティーンを保つことができ、子供たちの非日常をより日常に近づけることができました。

フェイスタイムをしながら、一緒に歯磨きをしたりもしました。

折り紙交換
折り紙が好きな子供たちとお互いに折り紙の課題を与え、折り紙交換をしていました。私は、子供の持っている折り紙の本からいくつか形を選んで子供に課題を出し、子供たちはランダムに私に作って欲しいものを選びました。そして、会えない間に、子供は本を見て折り紙を作り、私はインターネットの力を存分に借り、折り紙を作り、次の面会時や夫を介して作品の交換を行いました。

たかが折り紙なのですが、作りながらお互いのことを思ったり、渡した時の相手のことを想像したり、そしてお互いに課題を出すことでゲーム感覚も増したりと、響き以上に楽しい方法でした。

文通
ビデオメッセージも何度か送ったりもしましたが、それ以上にメッセージカードを書いて子供に届けてもらっていました。下の子はまだ自分で文字を書いたり読んだりできませんでしたが、それでもイラストを少し多めに付けてカードを書くようにしていました。

空を一緒に眺める
朝焼けが綺麗な時、夕方空にピンク色に染まっている時、月が綺麗な時などなど、空が綺麗な時に、連絡をして一緒に空を眺めるようにしました。離れていても、同じ空を見ていること、離れた場所が同じ空でつながっていることを感じることは、なんだか心を暖かくしてくれました。離れていても、時間と経験を共有できるのは、やはり幸せなことでした。

家のことをお願いする
ただでさえ、私が家にいないことで負担が増えるから、それ以上のお願いをするのは子供に申し訳ないと思ってしまうものです。しかし、敢えて私の代わりに家のことをお願いすることは、子供に「自分は頼られるほどの存在なんだ」という感情を与え、そのことは心の安定を与えるとともに、責任感を刺激し、大きな成長の糧にもなると言われました。特に長男には、敢えて下の子の手助けをお願いするといいと言われ、彼女の朝晩の準備を手伝ってくれるようお願いしました。

学校でも責任感を増やす
学校の先生とソーシャルワーカーの方が話をし、学校でもお手伝いをお願いする機会を増やしてもらいました。人に大切にされる、必要とされると感じられる機会を増やすようにしました。

コントロールできることを増やす
もともとうちの長男は物事を理論的に考え、様々なことに関して自分が納得できるまで議論をするタイプです。(はい、たまにめんどくさいこともあります。笑)そんな彼にとって、普段から健康的なライフスタイル、食生活を推奨している自分の母親が癌になったことは、なんだかうまく説明のつかないことでした。白血病は生活習慣に関わらず、ランダムになるものだと説明しても、完全には納得できないものでした。いや、そのことは受け入れられたとしても、彼の中に生まれたもどかしさは拭いきれなかったのかもしれません。そのため、入院当初は、少し心が不安定で、いつも以上に感情的であったように思います。

だから、敢えて彼がコントロールできるもの、納得ができることを増やし、彼の心を穏やかにすると良いとのアドバイスを受けました。ご飯のメニューを決めるとか、遊びに行く公園を選ぶとか、そんな些細なことでもいいので、彼の意見が尊重される機会を多めに取るように心がけました。そして家の中でも、いつも以上に彼と話をする機会を増やしていたようです。

二人きりの時間を持つ
面会時に病院で、また離れてフェイスタイムをしている時でも、彼らと「二人きり」の時間を取るようにしました。その時間は、私と子供どちらかのスペシャルな時間であり、誰にも邪魔されず、誰にも聞かれずに、あ互いに思っていることをなんでも話せる時間。私もしっかりと自分の寂しい気持ちとか、辛かったこと、嬉しかったこと、全てを出すことで、子供たちにもどんな感情が起きてもいい外に出していいと感じてもらえるようにし、彼らがしっかりとそうできる環境を与えるようにしました。

それでも一番効果的なこと

上に挙げたことはことは、私たち子供の精神的、行動的変化を基に、ソーシャルワーカの方と話をし、夫と作戦会議をし、私が個人的にやりたかっただけということも含めて実践していたものです。子供たちとしばらく会えないということは、やはりすごく寂しかったです。しかしながら、離れていてお互いを想うこと、離れていても時間を共有することを経験できたことは私にとっても子供たちにとっても、意味のあることだったように思うのです。子供たちも会えない間にだいぶ成長し、少し会えない期間があっても、私たちは大丈夫、と思えたことは最終的に私たちの心を近づけ、絆を強くさせたように思うのです。

そして、いろいろ方法について書いてみましたが、詰まるところ何よりも実は一番大切なのは、子供たちを、自分自身を信じることなのではないかと思います。自分の子供は思っているよりたくましい。私の体が、しっかりと自分の力で病気から回復する力を持っているように、子供たちも自分の心をしっかりと保つ力を持っている。みんなで一緒にこの経験を乗り越えられる。

彼らは、大丈夫。私も大丈夫。私たちは大丈夫。

普段の子育てと一緒で、子供たちを愛し信じることが、親の私がするべきことで、親としての私が自分自身にできる優しさなのだと思います。不安に感じるなと言っても難しいです。でも、私が不安だと、それは子供にも伝わって、子供の不安になります。だから、まずは私は信じることで、自分の不安と子供の不安を取り除き、安心の連鎖を生むことが大切なのだと思います。

大丈夫、大丈夫。

入院中そして家に帰ってきてからも、何度も何度も時自分に言い聞かせ、何度も何度も日記に書きました。

あなたも、きっと大丈夫。私はそう信じています。

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これは、ある日突然、急性骨髄性白血病との告知を受け、「白血病治療中」という新生活を始めた私が、寛解に至るまでの7ヶ月間、どのように癌と向き合い、毎日をより快適に過ごすために何をしたのかなど、「白血病暮らしのヒント集」としての記録です。自分の価値を押し付けたいのではありません。こんなことを感じて、実行した人がいたということを知ることで、何かのお役に立てたら幸いです。

これらの記録は医学的根拠に基づくわけでもありません。一口に白血病と言っても、それぞれの体調や置かれている立場は様々であり、これらのことが全ての人に当てはまる、役に立つとは限りません。それどころか、時には寧ろ治療の妨げになってしまうこともあるかもしれません。そのことをご理解の上、あくまでも参考程度に読んでいただけたらと思います。

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