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<白血病くらし> 子供に「白血病」をどう説明するか: そしてスーパーヒーロー。

今回は、どのように子供に「白血病」について伝えるか、のお話。

前回、子供にどのように「癌であること」を伝えるかについて書いてみました。散々書きましたが、要は「できるだけ早く、正確に、正直に伝えよう」と。

そして今回は、私たちが子供達に「白血病」という病気についてどのように説明したかについて書いてみます。

その前に、いきなりだけどスーパーヒーローの話。

スーパーヒーローは、子供達にとって憧れの存在(のハズ)であって、自分の好きなヒーローは誰かという話が出たり、そのヒーローに仮装したりすることもよくあることです。特にアメリカでは。バットマン、キャプテンアメリカ、ブラックパンサーなどなど。

ですが、うちの子供達が「スーパーヒーロー」と聞いて「これ!」と描くものは実はないみたいなんです。うちにはテレビがないというのもあるのですが、そもそも、ある特有のヒーローという存在がいて、それと同じ衣装を着たり、同じ動きをすれば自分がそのヒーローになれるというコンセプトがないみたいなのです。もちろん、学校や友達から話では聞くので、名前や攻撃の種類、微妙な動きとかまでやたらと詳しかったりもするのですが。

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実際に、娘は、友人にもらったワンダーウーマンのコスチュームを着てみたけれど、ただブルーベリーを食べる衣装になっただけでした。しかもちょっと怪訝な顔してるし。

でも、彼女たちの言動を見ていると、やはり彼女たちにとってもスーパーヒーローは実在しています。ただ、それは「ほかの誰か」ではなく、より強い、より優しい、より早いなど、「パワーアップ状態にある自分自身」のことのようなのです。つまり、スーパーヒーローは、自分の行い次第で「なるもの・なれるもの」ということなのです。そして、ヒーローは悪を制裁するために現れるのでなく、なんだかもっと普通に日々の生活をより良く、より楽しくするための、より良い自分の「あり方」のようなのです。そう、もっと身近な存在的な。

ん、ということは・・・

ワンダーウーマンの衣装を着た娘は、ブルーベリーを食べただけで、別に他に何か特別なことをしたわけではないけれど、彼女はブルーベリーでより健康になったし、私に笑顔をくれたし、彼女なりの「ヒーロー化」の最中だったのかもしれないということなのです。

うん、奥が深い。

と、いつも通り、子供の言動を勝手に分析して、それらを論理的に考えてみようとしてますが、実際本当は子供たち、そんな事なーーーーーんにも考えてないと思います。ただ毎日、やりたいことを、やりたいように、楽しんでやっているだけ。

でも、そんな風に自分を全うしながら成長する我が子たちは、私にとってやっぱりスーパーなパワーを持った存在であることも事実です。

そして、抗がん剤治療の短期入院を終えて家に帰ってきた私を待っていた、ベット横で一生懸命筋トレをし、私を元気にしようと、ヒーロー化最中の娘は、私とって既にスーパースーパースーパーヒーロー(ヒロイン)で、そんな彼女に私は救われたのも間違いない事実なのです。
(安全ゴーグルをしながらダンベルとはやられた!)

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そして、いよいよ「白血病」の話。

ポートランドの病院に検査入院をした初日、ソーシャルワーカーから一冊の本を渡されました。その本が、これ。

"CHEMO to the rescue!"

小児白血病の主人公が、抗がん剤CHEMOの力を借りて、「僕はスーパーヒーローになるんだ」って話です。

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これで、やっとスーパーヒーローの話と繋がった。

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本の中ではまず、各血液細胞の働いについて書いてあります。赤血球(身体に酸素を送る)、白血球(免疫を助ける)、血小板(傷を治し、血を止める)についての説明があり、白血病になると癌細胞がこれら健康な血液細胞のスペースを占領してしまい、健康な血液の働きが失われると。

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そこに現れたのが、救世主CHEMO!
白血病の細胞を壊すためにやって来た強い薬なんだ。

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白血病の治療は、大変なんだけど、僕はCHEMOと一緒に、スーパーヒーローになって、辛い治療を乗り越えるんだ。大変なこともあるけれど、僕は勇気もあるし、強いんだ。僕は大丈夫、と。

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その後、どんな治療が行われるのか、どんな検査があるのか、髪の毛が抜けるということも含め、起こりうる副作用についての説明があります。そして、いろいろなことが起きる可能性があるけれど、スーパーヒーローになった僕は前向きで、「髪が抜けたから、お気に入りの帽子を探すんだ」とか「今は何も食べられないから、気分を紛らわすためにTVをみるよ」などと続いていきます。

借りれる力は借りてみる。

この本もまた、うちの子供とスーパーヒーロの話のように、こじつけ満載な感じですが、これが白血病に立ち向かうスーパーヒーローの話というわけです。そして、なぜかこの本が子供達に大好評だったのです。私が家にいるときは何度も読んでとせがまれたし、私が入院中も夫が何度も読んであげたようです。

これだけスーパーヒーローの話をしておきながらなんですが、うちの子供達のツボは「ヒーロー」部分ではなく、わかりやすく白血病の説明があったところのようです。子供達にとっては、「癌」の話をした時と同様、分かりやすく状況を知ることで、今何が起きてるか正しいイメージをすることができ、そのことが安心感につながったのかもしれません。

また、純粋に何かを学ぶことが好きな子供たちは、この本で血液の仕組みや働きが分かったことが嬉しかったようです。結局、そこ(笑)。

まぁ、理由はなんであれ、私たちにはこのスーパーヒーローの本が思った以上に役に立ったのです。この本に限らずですが、文章だけでなく、このようにビジュアルで白血病について、白血病の治療についてわかりやすく説明してある本があると便利だと思います。

もちろん子供だけでなく、私たち大人も医療用語を並べて説明を受けるより、このくらいの説明から入った方がずっと分かりやすかったです。検索すると様々な本が出て来ますが、実際に読んでないので、これがいい!とオススメできないのが残念ですが、何か自分にあった一冊が見つかることを祈っています。

小児白血病に関する本が多い中、まさに親が白血病になったという設定の絵本を書いてみるのもいいなと密かに思ったりもしつつ。

スーパーヒーロは、ある日いきなりあわらわて、世の中をよくしてくれるわけでも、病気をなかったことにしてくれるわけではなさそうです。だったら、自分のありのままを受け入れて、その上で自分をパワーアップさせ、より良い日々を送るのがいいかなと改めて思うのです。そして、もし全ての人がそういう姿勢で生きていったら、この世の中が最強な愛で溢れるのかなと思うと、スーパーヒーローの映画を見るよりずっとワクワクしてくるものです。


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これは、ある日突然、急性骨髄性白血病との告知を受け、「白血病治療中」という新生活を始めた私が、寛解に至るまでの7ヶ月間、どのように癌と向き合い、毎日をより快適に過ごすために何をしたのかなど、「白血病暮らしのヒント集」としての記録です。自分の価値を押し付けたいのではありません。こんなことを感じて、実行した人がいたということを知ることで、何かのお役に立てたら幸いです。

これらの記録は医学的根拠に基づくわけでもありません。一口に白血病と言っても、それぞれの体調や置かれている立場は様々であり、これらのことが全ての人に当てはまる、役に立つとは限りません。それどころか、時には寧ろ治療の妨げになってしまうこともあるかもしれません。そのことをご理解の上、あくまでも参考程度に読んでいただけたらと思います。


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