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tw300ss「学問について」

 ひとつの箱があり、箱には値が対応している。もうひとつの箱があり、その箱に対応する値は、最初の箱のなかの値によって変動する。
 それが、函数だ。
 函は元々「箱」の意で用いられていた。近代、「函数」が「関数」に取って代わられて以来、値が函に対応するという概念が失脚している。つまり、ふたつの箱の変動も理解し難い。
 老齢の数学教師は、その話に授業の大半を費やした。大層面白い話だったが、学生たちは皆二次関数の単元で赤点を取り、追試を受けることになった。
 あらゆる数学が箱になる。函崎先生は、偉大だった。研究と学習と教育がある。後輩者に伝えるというプロセスを棄却してはならない。それではただの、フェルマーだ。

(Twitter300字ss、お題「箱」遅刻作品)


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