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何語か分からないけれど、意味は知っている

 あぁ、そろそろなくなりそう。スロベニアで買ったスティックのり。結構長くもったなぁ。

 大学の卒業旅行で親友と東欧を巡る旅をした。旅の途中、私はドイツの知り合いの家に寄り、親友はその間クロアチアに行き、その後スロベニアで落ち合うこととなった。ドイツからスロベニアへは飛行機でひとっ飛び。首都リュブリャナの空港には何事もなく着いた。だが、そこから街へ出るのに緊張した。小さな小さな空港の前のロータリーにはタクシー数台。海外でタクシーに一人乗車なんて恐ろしくてできない。バス停で時刻表を確認すると数時間後までバスは無いらしい。呆れるくらい何もない空港でどう数時間も過ごそうかと途方に暮れかけていると、30歳前後と思しきお姉さんから話しかけられた。あっちの乗り合いタクシーなら2人乗るならすぐ出発するって言ってるよ。って。お姉さんも街の方へ向かうようだ。誰かと一緒なら問題ないだろう。ありがたく話に乗った。

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 空港から街までの眺めは圧巻の一言だった。途中街は無く、ひたすら山々の間を縫うように作られた道を走り抜ける。そびえたつ山々は谷と思われる部分だけ筋状に雪に覆われ、頂上は鋭く鋭角に切り立っている。雪の無い部分は緑ではなくグレーで、日本では見たことのない山脈の様子だった。

 あまりにも山しかない時間が続くので少し不安になる。ふと気付くと隣に座るお姉さんの足元がビーチサンダルだ。この3月の寒い時期にビーサン!?もしかして浮浪者かと疑う。客引きのために乗客を装ったか?ドキドキしていると途中でお姉さんは何も無さそうに見える場所でお金を払い降りてしまった。途端に心細くなる。私はこのまま誘拐されないだろうか…?

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 結局(体感的には)1時間ほどで無事に街に着いた。そこからも大変。親友との待ち合わせは日程と、ざっくり”駅で”としか決めていなかった。そもそも親友は飛行機にガイドブックを置き忘れてしまったので彼女の手元に地図は無い。クロアチアからの列車が着くと思われる駅へとりあえず行ってみる。当時スマホなんて持っていなかったから、オンラインのお互いの連絡手段が無い。待ち合わせは私がドイツに居る間に親友がクロアチアのネットカフェからwebメールで日程と大体の時間と場所を指定するメールを送り私が友人宅でパソコンを借りてチェックする、という色々と危なっかしい方法で連絡した。親友がネットカフェを見つけられなかったら?とか、ドイツの友人のパソコンで日本で使っているwebメールが開けなかったら?とか、そういう危険性に当時は微塵も気付いていなかった。

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 彼女を待つ間、駅周辺をぶらぶらする。パンくずを与えられたすずめ達が丸々と太っていて驚く。そんなにパンを与えられるものなの?カフェらしき店の前の看板に"Kava"と書かれていた。スロベニア語は一度も勉強したことが無いが、”コーヒー”と意味が分かった。何語だったが忘れたがヨーロッパのどこかの国の言語で確か似たような綴りでコーヒーという意味だったはず。色々な国を訪れたり中途半端にフランス語やドイツ語をかじると何語かは思い出せないけれど、意味は分かるという単語が増えてくる。

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 以前、日本でお茶している時に、会話の途中でANANASがパイナップルだと分かった私にドイツ人の友人が驚いて「何で分かったの?」と訊いてきた。まだドイツ語はかじっていなかった当時の私は「何でだろう?」と答えられなかったが、今思い返すとフランス語でもパイナップルはANANASだった。
 もう忘れない。

Magazine ”理想的文具” Vol.2

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