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プラハは変わり果ててしまった

 チェコの首都プラハには2回訪れた。大学生の時に一度、その2年後にもう一度。でも、たったの2年だったのに、プラハは変わってしまっていた。

 初めて訪れた時のプラハは、まだ旧共産圏の空気が色濃く残る街だった。街並みは世界遺産にもなっているほど美しいのに、あまり観光地化されておらず、サービス精神など皆無のそっけない接客態度の店ばかりだった。もちろん英語なんて通じなくて人に道を訊くのも一苦労。

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 町はずれのVyšehradという城跡に行きたくて人気のない林の中を歩き、途中唯一見かけた犬の散歩中の男性に「Excuse me!」と叫んで呼び止めようとしたが、無視された。静かな林の中だ。聞こえないはずがない。しかも周りに他に話しかけられる人がいないのだって分かっているだろうに。

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 日本を発つ前に、知り合いのチェコ人に教わったチェコ語の中でも数少ない何とか覚えられたフレーズ「Prominute! (=Excuse me)」と叫ぶとふりむいてくれた。でもVyšehradに行きたいんだけど、とチェコ語では言えないので地図を見せながら英語で言ってみる。すると身振り手振りとチェコ語で教えてくれた。たぶん、「あっちに行けば公園があるからその横を通った先のトンネルをくぐって出て右に曲がって…」という感じ。我ながらよくこんなジェスチャーが分かったもんだ、とは思うが行ってみたら何とか辿り着けた。

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 そんな経験もできるような旅が、後々まで記憶に残る。見出しの写真のカレンダーもこの旅の途中で購入した。苦労したけれど、可愛い街の印象だったので、卒業旅行では友人とプラハにもう一度訪れることにした。
でも、、 

 二度目のプラハはもう、私の知っている街ではなかった。完全に観光地化され、人々はにこにこして英語がぺらぺら。土産物屋のお兄さんに至っては片言の日本語で話しかけてきた。
 「カレシニ?」「カレシ、ヤクザ?」
 私の嫌う観光地ズレした、媚びるような態度にうんざりした。

 もうプラハには来ないだろう。観光地ズレしてしまう前のプラハを見られたのは本当に良かったと思う。

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 そして、まだ訪れていない、まだ観光地化されていない他の国に早く行かなければ、と焦る。

 その国には、その国の訪れ時があるのだ。


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