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第18回 春の不眠症

2024年4月29日

健康と美容、栄養、ウェルエイジングを専門としている内科美容皮膚科医 中島由美です。

「疲れているのに、寝付けない。夜中に目がさめる。熟睡感がない。」

春になるとこのような不眠の訴えが多くなります。
春は季節の変わり目で気温の変化が激しく、自律神経のバランスが崩れてしまいます。日中の交感神経優位から、夜になると副交感神経優位に切り替わり、体は寝る準備をします。このスイッチが上手くいかないため不眠になると考えられます。
春は職場や学校、人間関係の変化する時でもありますので、夜寝る時に体に緊張が残っていることもあります。
また、花粉症の時期でもありますので、鼻が詰まって睡眠中に正常な呼吸が妨げられます。
睡眠が不足しているので、朝は起きづらく、昼も眠い。疲れているのに夜はまた眠れない。というスパイラルが起きてしまいます。

東洋医学的には、「春温(しゅんおん)」といい喉の渇き、のぼせ、発汗のしづらさ、頭痛、動悸、胸のざわつき、不安感、イライラ、不眠が生じます。春温の原因となるのが気候の変化です。冬の冷たい空気が急に暖かくなり、この暖かい空気が「外邪」として体内に入り込んで体がその変化に処理できず、不調をきたすと考えられます。
春温を引き起こさないためには、できるだけ早く起きて体をのびやかに気持ちをゆったりして過ごすのがおすすめです。また、春の旬の食べ物は滞りやすい気血を巡らせる(自律神経が整う)特徴がありますので、春菊、筍、菜の花、ごぼう、アスパラガス、小松菜などを積極的に取り入れましょう。

今度は栄養学的に解説していきます。
睡眠を司るホルモンは「メラトニン」です。
メラトニンはたんぱく質とビタミンBから脳内で作られます。睡眠ホルモンは食べ物から作られていると聞くと、面白いですよね。お肉、お魚、豆類などのたんぱく質を毎日しっかり摂取するのが最低条件で、そこにビタミンBがないとせっかく摂ったたんぱく質からメラトニンに変換しません。ちなみにたんぱく質+ビタミンBで、GABA(心の安定)、アドレナリン(やる気・集中)メラトニン(睡眠薬ホルモン)が脳内で作られるので、この組み合わせが非常に重要だということがわかります。精神状態が不安定だったり、倦怠感が取れなかったり、眠れない、という時は、たんぱく質とビタミンBが不足していると考えてもいいと思います。
私のクリニックではほぼ全員に血液検査をして、たんぱく質やビタミンB、鉄、亜鉛などが足りているかをチェックします。8割の方はたんぱく質とビタミンBが不足していますので、意識して摂取するようにしないといけないですね。たんぱく質はお肉、お魚、豆類から、ビタミンB は豚肉や鰹にも含まれていますが相当な量を食べないと1日必要量に満たないのでサプリメントからの摂取をおすすめしています。1ヶ月後、2ヶ月後の血液検査は驚くほど改善し、気になる症状もみるみる改善していくことが多いです。

春は柔らかい陽射しが増え、新しい環境や新しい出会いがある季節です。
自分を取り巻く変化に柔軟に対応できる力も必要です。
私たちがイキイキと活動していくためには、質の良い睡眠をとり、1日の疲れを解消して次の日の活力を生むことがとても大切なのです。
心地良く生活を送るための様々な知恵を吸収していきましょう。


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