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権利と特権の車輪(福岡研修 Salzburg Global Seminar)

現在SalzburgGlobalSeminarの研修(ザルツブルグにある財団で第二次世界大戦後に立ち上がった対話型研修プログラム・昨年日本から30人のメンバーに選ばれ、インドからの30人と一緒に研修を1週間弱ザルツブルグで受けてきました)の発展版として福岡に来ています。現在20人程いますが、6割がインド人4割が日本人。インドと日本とにかく仕事へのアプローチやもちろん国籍とか関係なくそれぞれのプロフェッショナル背景・考え方が異なるため毎度すり合わせがとても大切になります。異文化で国を超えて何かをともにつくるということを通して、日本の中だけで考えていてはいけないなということを毎分毎秒突き付けられます。

今回の研修にこれたナラティブキッチンメンバー。私の隣はインド在住(インド人と結婚)の大学の先生・私の横に立っているのがデザイン会社と学校の先生。

どんなことを話し合っているか


私はナラティブキッチンというチームにいるためそのための議論にほぼ1日過ごしました。ナラティブキッチンというプロジェクトは、どの社会にも語られていない言葉がある。何故その構造が起きているのか、どうその語られない言葉が安心して語られるようになるのか。私は葉っぱを持って去年ザルツブルグにいきましたが、そうした社会に埋もれ続けてきた「語り」をどう「食べ物」という誰もが知っている経験していることを中心として語られるようになり社会でそれが活かされるようになるかということを研究・実践するチームです。こまちぷらすでフューチャーセッションだけでも14回以上、様々なワークショップ含めると800人以上の方々とやってきた葉っぱのワークで語りとその共有がもたらす行動変容やこれまで見たことがない角度から自己認識をすることの意味を実感してきましたが、その宝がずっと埋もれてきたまま、これを繰り返すだけでも意味があるけれどもそれをどう今後デザインしていけるかがずっと課題でした。拾ってきた声、データベース化してきた声の数も1000を超えてきています。どの課題感を持ちながらずっとこのチームでインド人日本人ミックスしながら議論を交わしていますが、考えたことがないアプローチで議論ができるので非常に新鮮です。
ちなみにザルツブルグで議論したときの構想はこちら


このナラティブキッチンにおいては、インド側にいるデザイン会社を運営しつつデザイン学校の先生でもある女性の方がこの数か月ずっとインドでプロジェクトの調査を学生の皆さんと進めてくれていたのでその進捗をアップデートしてもらいました。

インスタグラム:https://www.instagram.com/narrativekitchen/


到着日と昨日で聞いた話の幾つかを共有します。

1.特権と力の車輪

こまちぷらすの内部研修でも使ったことがありますが、調査に入るときもしくは、自分自身を知るとき、何かを知ろうとするとき、もしくは特に何かを「支援」や「課題解決」しようとしているときには、この特権と力の車輪を意識するということが大事という話を何度かしています。

このWheel of Power/privilege は性別・市民権・教育・言葉・富・家・体の大きさ・メンタルヘルス・ニューロダイバーシティー(神経の多様性/様々なものの考え方/シナプスのつながり方)・・・等を車輪に置き、真ん中にいればいるほど知らず知らず恩恵を受けていることや「特権がある」前提で生きていること。逆に外側にあればあるほどそうでないこと。例えば市民権がない時点で様々な健康福祉へのアクセスが断たれる等もそうですが、「肌の色」等で偏見にさらされること等も含まれています。
自分はどこにいるのかということをまず知るということがとても大事で、その知らず知らずの偏見のレンズで世の中を見ているからそこを認識するための車輪です。ちなみにこの車輪は「西洋」で創られているので、このインド版はまた少し違うそうです。

https://ydrf.org.uk/2021/09/19/privilege-wheel/

こちらがインド版。カースト・宗教・関係性(結婚しているかどうか)・インドのどのエリアに住んでいるか・・等インドの多様性を前提とした車輪になっています。

https://www.linkedin.com/pulse/wheel-power-sahruday-vishwanath/

インドで実施した調査は、1つのエリアでこの車輪を使いながら「語り(Narrative)」をはじめ、その言葉をカテゴリーに分けたり議論を何度も繰り返し様々な言葉に落とし込んだそうです。それをこまちぷらすでも使ってきた「葉っぱ」=カード(インドでは四角いカード)に書いてそれを使いながら更に語る。その言葉を引き出していくプロセスをとても丁寧にしていました。

ちなみに、日本版をこまちぷらすを通してつくりたいとこのデザイン会社をしている彼女からお話を昨日いただきとても意義があるお話しで有難いなと思いました。


ちなみにワークショップを通してインドで語られた言葉の一部を紹介します。

「私は両親がベジタリアンだったので、子どものころ一度も野菜以外のものを食べさせてもらったことがない」

等、家庭での食べ物を中心とした語りにすることで家族の中でのその人の状況や本当はどうしたかったか今はどうか等の言葉がどんどんと出てくるそうです。

とある方の語りを聞くと

「韓国料理しかつくらない。理由はこどもたちがBTSファンでそういう料理ばかり食べたがるから。」

とのこと。このように子どもたちを中心としてインターネットやSNSの普及から食生活が大きく変わっていることもわかります。(ちなみに少し前はパーティーといえば「寿司」。寿司を出さないとクールじゃない。と言ってました)


その他にも、「女子だからより少なく食べるようにと言われてきた」等男子優位な社会のため、男子は女子より多くミルクや食べ物を与えられること、男性のお弁当は新しいものを女性のお弁当は残り物を、女性はずっとキッチンにはりついていてそもそもテーブルが2人しか座る椅子しかないこと、魚を食べるエリアからそうでないエリアに引っ越してきたらそもそも家を貸してもらえないこと(偏見)、男性側の家族の好みに合わせて食事をつくるから嫁として入った自分は好きなあの味をいつかもう一度つくって食べたいと願っていること、、、様々なことを聞きました。

2.その他の言葉たち


さまざまなファシリテーターの方々もインド日本ともに来てくれています。一人のファシリテーターの方は、Parag MankeekarさんというReallivesFoundationのCEOの方が来ています。

パラグ・マンキーカー博士はこれまで医療分野で働いており、かつての不健康な医療社会的実践に挑戦するために、独自の手頃な価格モデルを備えたインドの複数の病院の設立を支援しました。パラグ氏は、学際的な病院や社会的企業の開発に携わる中で、災害管理などの多くの健康上および社会的課題に取り組んできました。彼はインドとアフガニスタンの両方でのテロリズムの理解にも取り組んできました。その功績が認められ、パラグ氏は 2008 年にアショカ フェローシップを受賞しました。

パラグさんはもともと医師で病院を複数設立した後、その後文化人類学を学び現在は世界的にも有名なRealLives プラットフォームを立ち上げています。彼の話を同じテーブルで聞くことができたのですが、
・2回誘拐されている(パキスタンとインド(国境沿い))けれどもなんとか両方脱出した。
・どうしても必要だと思う事業があり誰もその理解を示してくれずファンドが得られなかったときに家を売って事業をつくった
・何かシフトするときには「何か」から「何もない」に戻る必要がある
・そういうときこそこれまで学んできたことを疑いまた学びをしなおす必要がある

等・・・書ききれないほどですが、その人がかもしだすオーラがすさまじく、言葉が一つ一つ重みがありました。
TEDでのお話し:https://www.youtube.com/watch?v=_RtnxIz8DaY