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春ですね。案件を7割手放しました。

この春、長く続けてきた案件の7割近くを手放した。

ほとんどを3月末に終わらせ、遅くとも4月末でかなりの仕事がさっぱりすっきり私の手から離れる。開放感と恐怖が半々だ。

フリーランス5年目。子育て2年目。フリーランスとしては変化したいが、お金と安定は手放せない。今のうちにお金を蓄えておきたいのが本音ではあるが、蓄えられることと今後も蓄える見込みがあることは違う。10年後も稼げる自分になるためには、このままではまずい。

いまを続けた先の「わたし」って。


きっかけはたくさんある。

いちばん大きなきっかけは、昨年わたしに大きく影響を与えた人物からもらった言葉だった。

その方はわたしに「あなたとの仕事は、自分のこれからのキャリアに大きな影響を与えてくれました」と言ってくれた。もうこれ以上成長の余地なんてないだろうと思うほどプロフェッショナルな方なので、まだ伸びるつもりがあることに驚いた。

すごいなぁ、偉いなぁ、という気もちの後に浮かんだのは「わたしはどうなんだろう」。わたしはいま、居心地のよい案件に恵まれている。だけどその居心地のよさに、居心地の悪さを感じている自分もいた。

「働くことの負荷がなさすぎやしないか」
「いや、育児中だからこれくらいがちょうどいいはずだ。焦るな」

そのふたつが長らく戦っていたけれど、彼のプロフェッショナルな仕事ぶりをみて、わたしは一体いま、なにを積み重ねているのだろうと思った。

いまを続けた先の「わたし」が、いい顔をしていない気がした。


オファーを断る夫


2年前にフリーランスになった夫からも影響を受けた。夫はわたしと正反対で、計画的な人間だ。

彼は予期せぬ形でフリーランスになったため、なりたての頃は「フリーランス」という働き方に不安そうだった。にも関わらず、あらゆるオファーを断りまくっていた。「そんなに貰えるのに断るの?!」というものもあった。

そんなに不安ならとりあえずいい話は引き受けてみたらいいのに、と思った。だけど正反対の彼にそれを言うのはなんとなく違う気がして黙っていたら、気づけば彼はおそらくやりがいのある案件だけを、思っていたより多めに手に入れている。本人は大変そうだが凄いと思う。目先の安心に飛びつかない彼のやり方は正しかった。

「わたしもそうなろう!」と思ったわけではないが、一度見直すべきかもしれないとは思った。わたしにとって長らく、仕事を請ける際に重要だったのは、お金と労働が見合っているかどうかだったから。

これまではそれでよかった。
だってわたしが働くモチベーションは「人や社会に必要とされたい」だったから。会社というバックボーンのないわたしに、さまざまな仕事を託してもらえることがそもそも有難く、それだけで十分がんばる理由になったのだ。


だけどそれらの仕事にここ数年、以前ほどがんばる気力が持てなくなった。むしろ辛いと思うことが増えた。育児で体力が消耗しているのかとも思ったけど、違う。子どもを産んだことで、わたしは誰かに必要とされたい欲求がとてつもなく満たされてしまったのだろう。

「とりあえず辞めてみる」と決めた


とはいえ、しばらくはそんな自分に怒っていた。

子どもも小さいし、いま持っているスキルでお金がもらえるのは有難いことではないか。挑戦なんてできる時期じゃない。わたしが子育てがんばりたい時期だからと、あえて負荷のかからない仕事を振ってくれているクライアントだっている。ぜんぶ有難いことじゃないか。馬鹿なのかわたしは。

自分をさんざん責めた後、「うーん。だけどやっぱり、いまだからできることってあるよね」という自分が結局勝った。子どもがいろいろわかるようになったとき、わたしは楽しそうに、真剣に働く大人でいたい。子どもを尊重できる自分になるために、いま自分を尊重したい。「なんでいま」じゃなくて「いまじゃなきゃだめ」なのだ。

と結論が出たため、まずは案件を手放して時間をつくることにした。

先に案件手放すんかい。と思われるかもしれない。
余裕があるわけでもない。

だけどわたしはこういうとき「とりあえず辞めてみる」ことを大切にしている。

なにかを辞めるときに重要なのは、「辞めたあと、なにをするか。」じゃないよ。多くの人は、「辞めたあとのビジョンがない。だから、まだ辞めるべきではない。」と考えて、ジリジリと消耗してしまう。違うよ。重要なのは、「とりあえず、辞めてみる。」だよ。新しいことを考える余白をつくることだよ。

これは数年前のプロ奢ラレヤーさんのツイートである。わたしはこの言葉に背中を押されて会社を辞めた。当時のブログにも書いたが、その選択はわたしにとても合っていたので、悶々としたらこの言葉に立ち返ろうと決めている。

あらためて、思う。
無意識だったけど、わたしは人から必要とされたい欲求がかなり強かったんだろうな。そして子どもは、その欲求をとても満たしてくれた。ありがたい存在だなぁ。子どものおかげで次のステージへ行けるのならば、それは行ってみた方がいいんじゃないかと思った。

時間に余裕ができると心に余裕が生まれる


引継ぎや今月末までの仕事もあるので、まだそれなりに忙しいではあるが、すこしずつ変化を感じている。たとえば先日、2時間打ち合わせのつもりが5時間に伸びたことについてXに書いた。

時間をつくるってこういうことだと思ったし、あらためてわたしは「捌く仕事」をしていたのだなと実感した。
保険でいうところの掛け捨てである。これからは積み立てていきたい。

手放すことで、「捌く仕事」への感謝もこみ上げてきた。
独立した当初は、まず「捌く」ことがうまくできなかったのだ。スケジューリングがうまくいかない、請け方も断り方も知らない、直感的に嫌な感じがしても引き受けてしまう、最初に話し合うべきことを話し合わない、など。

捌けるようになったわたしは、気付けばかなり成長していた。そこまでもっていってくれたのは、わたしの仕事を買ってくれたクライアント様様である。喧嘩した人もいたし、大嫌いになった人もいた。後になって「あの人が言っていたことは正しかったな」と思うこともあるし、逆もある。いまだに「ああしておけばよかった」を引きずっている案件だってある。

つまりはわたしは会社員をやめても、失敗させてくれる環境に恵まれてきたということだ。

反省し、感謝し、わたしを見つめて、それから次。


時間をかけようと思っている。
フリーランスになって5年間で、積み重ねたもの。積み重ねられなかったものを見つめて、反省して感謝して、そのあとに自分を見つめようと思う。断捨離というより新陳代謝。

フリーランス第2フェーズでは、必要とされたくて働く自分から、社会に必要な働きをする自分になりたい。

息子から見て真剣な大人でありたい。楽しそうな大人でありたい。わたしはわたしを生きたい。いま決まっているのは、それだけだ。









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