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#フリーランスの教訓① 言われなかった言葉


フリーランスになり、3年。3年間で変わったことは山ほどあるけれど、特に変わったのは「言われた言葉」よりも「言われなかった言葉」が大事だと思うようになったことだ。

先日、気難しいことで有名な方を取材する機会があった。正直気が重いなと思いつつ取材当日を迎え、いざ取材してみると、確かに言い方はぶっきらぼうだけど全然いい人...と言えるほど私が先方に認められることはなく、あらゆるダメ出しをくらった。取材後は悪天候の中、高速道路をいつもより飛ばして帰路に着いた。

運転中は落ち込んだり反省したけれど、帰宅した直後、気付けば言われたダメ出しをすべてノートに書き出していた。

取材前日から当日、帰路につくまで終始気が重かったはずなのに、なぜか書き出し終わった後、私の気分は晴れやかだった。そして気付いた。私はダメ出しに飢えていたのだ、と。

怒られてばかりだったエステシャン時代。まったく怒られなかったディレクター時代。

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振り返ってみると、私の会社員生活は極端だった。エステシャンをしていたときは、かれこれ6年間くらい割とずっと怒られていた。

私が超未熟で生意気だったのはもちろんなんだけど、私が勤めていたエステサロンはおそらく多くの方が思っているよりはるかに体育会系で、毎日終電まで働いても「死ね」とか「使えねぇな」という暴言を吐かれていた。腱鞘炎にも突発性難聴にもなったけど休めなかったし、休まなかった。

だいたいのお叱りは私の成長に必要なものだったと感謝しているのだけれど、今考えてもどうにも納得できなかったお叱りがある。「これだからゆとりは」という言葉だ。世代でくくって放棄せず、何がダメだったのか教えてほしかった。


エステシャンを辞めた数年後、勉強して自社メディアを運営する会社に入った。異業種への転職、しかもはじめての男女混合の職場ということで、とんでもなく厳しい環境を覚悟して入った。上司は怖そうなキレ者。めっちゃくちゃに怒られるに違いない。あぁ、「これだからゆとりは」だけは言われませんように。

...と思っていたら全然怒られなかった。むしろどんどん挑戦しなさいスタイル。やりたいことはほぼやらせてくれて、失敗の機会もたくさんくれた。それを放任だという人もいたが、私にはそのやり方がとても好きだった。

結局私はその上司のおかげで2年くらいで営業と編集者と編集長とディレクターの経験を積むことができ、今でもその時に培ったスキルをクライアントに喜んでもらえているから本当にありがたい。

何も言われなくなったフリーランス

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その後、満を持して退職、独立(詳細は過去記事に書きました)。

そしてあっという間に3年経過。フリーランスになってからの3年は会社員としての3年とはまったく違った忙しさだった。急激に増える出会いや案件、報酬、クライアントの一言に一喜一憂し、調子に乗ったりどん底に落ちたり、飲みまくったり徹夜しまくったり。肌が結構荒れたし正直、記憶があまりない。

そんななか会社員時代と大きく変わったのは、冒頭のとおり「言われる言葉」(叱咤に限る)ではなくて「言われなかった言葉」に自己成長の種が潜んでいることに気付いたことだ。

会社員時代は逆だった。言われることを直して、言われないことについてはあまり考えすぎずに突き進むのが正解だと思っていたし、多分会社員としてはそれで良かったのだと思う。なぜなら、上司は部下に成長してもらわないと仕事にならないから。

だけどフリーランスは違う。使えないと思ったら他の使える人をアサインすればいいだけだ。成長させる義理などなければ、わざわざ苦言を呈したり戦うメリットもない。

だからフリーランスは基本的に怒られない。正確に言えば私は一度だけ怒られた、というかオラオラ言われたことがあるが、私の成長につながるような内容ではなかった。(後で聞くととても評判の悪い会社だったから、おそらく下請けにオラオラしたい社長だったのだろう)

一方で「言われなかった言葉」については後悔がたくさんある。後になって気付くことが多いのだ。サインは出ていた、と。


仕事がずっとあるかどうかは、毎回の仕事ぶりと成果物の仕上がり、そして私の案件理解と態度で決まる。それらには毎回点数がつけられていて、点数が徐々に足されて大きな信頼に繋がることもあるけれど、徐々に減ってゼロやマイナスになることもある。そして後者にのみ、毎回小さな「言われなかった言葉」があるのだ。

会社員時代には当然のように言われていた、小さな言葉。いわゆる叱言。これがない状態で、自分ひとりで自分を叱り続ける能力が私はとても低かった。(と気付いたのはつい最近)

褒められるがままに自己肯定し、必要とされるままに自信をつけていて、気付けば「なにをどう直せばいいのかわからないけど、成長が止まっている気がする」状態に陥っていた。スランプである。

細かいダメ出しは「言われなかったかもしれない言葉」集め

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そんな心理が、自覚していたよりも強かったらしい。今回取材でいただいたダメ出しを書き出した後、ものすごくアドレナリンが湧き出た自分に驚いた。自分が成長するための行動が、細かく明確になったのだ。私には足りないことが山のようにあった。

若い頃、お金がなくてスナックでバイトしてた時に、どこかの金持ちに言われた言葉があった。

「ダメ出ししてくれる人とも付き合いなさい」

当時の私はわがまま放題だったので、我慢の練習をしろってこと?と思ったけど、多分違う。

ダメ出しをする人は、人があえて言わないようなことや、自己責任で引っ込めてしまいがちな意見を言葉にするからだ。そのダメ出しには、誰かが我慢したり諦めて言わなかった言葉がきっと潜んでる。

すべてを間に受けて落ち込む必要はないにしろ、いくつかは必要な言葉があるはずだ。私はあった。今回、かなり。

これからはダメ出しをしてくれる人とも、ぜひ付き合っていきたいと思う。(がんばってダメ出しに強い人になりますんで、贔屓にしてくれている方もぜひこの機会に私へのダメ出しを!!!!!)

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