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ココロを添えた仕事がしたい

先日、数年ぶりに取材に訪れたお店で、思いがけないプレゼントをいただいた。

大きな茶封筒に、取材のお礼と「またご縁があってうれしいです。ぜひ今後ともよろしくお願いします」という文章が綴られており、その中にはお店で取り扱っているポストカードや栞、シールなどが、まるで宝箱のように詰め込まれていた。

これがもうめちゃくちゃにうれしくて、相当感動してその場で何度もお礼を言ったし、帰りの運転中ニヤニヤ&ひとり言(うれしいことがあると、素敵だなーとか、かなわない!とかひとりで喋る癖がある...)が止まらなかった。

とくに瞬間的にうれしい!と思ったのは「取材に来る前に、わざわざ準備してくれていたんだ」ということ。取材なんて慣れているであろう人気店にして、その心配り。そのひと手間と気持ちに、なにより感動してしまったのだ。

ひとつひとつの仕事に、メッセージを込める

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その喜びにつられ、ある本の一文が頭に浮かんだ。

人間は「あなたは大切な存在で、生きている価値がある」というメッセージを、つねに探し求めている生き物だと思う。

働き方研究家の西村佳哲さんによる「自分の仕事をつくる」に書かれていた文章だ。

読んだ瞬間、この言葉は大切にしなければいけないと直感的に思い、長いあいだ私の頭にずっといる。そして取材先の店主が用意してくれた茶封筒はまさに、そういう仕事だった。(取材において仕事をする側の人間は本来、私だということは一旦棚に上げておく)


本には先ほどの文脈で、こんなことも書かれている。

「こんなものでいい」と思いながらつくられたものは、それを手にする人の存在を否定する。特に幼児期に、こうした棘に囲まれて育つことは、人の成長にどんなダメージを与えるだろう。
大人も同じだ。人々が自分の仕事をとおして、自分たち自身を傷つけ、目に見えないボディブローを効かせ合うような悪循環が、長く重ねられている気がしてならない。

レオナルド・ダ・ヴィンチは「芸術に決して完成ということはない。途中で見切りをつけたものがあるだけだ」という名言を残しているけれど、自分がどの段階で仕事を見切っているのか、の引き際に自信がなかった。手を抜いているつもりはないのだけれど、いつだって完成した原稿に100点を出せない。

だけど、取材先の店主が茶封筒に書いてくれた手紙を見て思ったのだ。どうせすべての仕事に100点満点をあげるのは不可能なのだから、すべての仕事にココロを添えるのはどうだろうか、と。

仕事そのものは、時間と今ある能力でやり遂げるしかない。そこは日々成長するとして、ココロを添えるのだ。茶封筒に書かれた手紙のように、納品物やメール、コミュニケーションのどこかに、ココロを添えてみる。読者やクライアントに対して「あなたは大切な存在だ」の気持ちをのせる。

添え方はいろいろあると思うけど、その都度考えよう。そうすれば、仕事のクオリティとは別でココロの添え方だって、成長できるはずだから。


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ちなみに、2009年発売のこの本に今更ながら出会えたのは、POPEYEの特別編集ブックガイドがきっかけだった。

626冊もの本が紹介される中、「思い出の一冊の本」というページで角張渉さんが紹介していたのだ。あらゆる言葉に気づきや自己認知を得た角張さんの文章と、ラストのこの一文に無性に惹かれ、買った。

この本は若く多感な頃の自分に少しの自信を与えてくれた思い出の一冊であり、いまだに指標として現役な一冊でもあります。

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ところで私はここ最近、「愛読書」にとても興味があった。先日、終活で愛読書を聞く面接官が増えているというネット記事を読んで、恥ずかしながら自分には愛読書がないとツイートしてみたら、意外とたくさん共感していただけて安心した。

とはいえ、何度も読み返すような指針になる本を持ちたい願望はすごくあって。だから角張さんが書かれていた「いまだに指標として現役な一冊」という一文に惹かれたのだ。

そんな期待を持って買った一冊。実はまだ30ページほどしか読んでいないけど、すでに私は指標とする言葉にひとつ巡り会えたのだし(しかも前述した一文は「まえがき」)、もしかしたらこの一冊、私の愛読書になるのでは?と期待を込めつつ読み進めている。しかし836円で、必要な言葉に巡り会えるんだもんなぁ。本ってすごい。





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