118回医師国家試験の振り返り(ポイント解説トライアル):A問題

118回の問題用紙と見比べながら読んでみてください。

Aー2:高齢者の入浴中の事故と言えば、突然の心肺停止、脳血管障害、溺水・溺死らしい。いずれにしても、交感神経・副交感神経の急激な変動によってキュッって血管が締まってしまうのがヤバいイメージになる。eはつまり極端に寒かったり、極端に暑かったりする脱衣所のことを指していて、自律神経の変動が発生しやすい原因なので、eを選べばOK

Aー3:ビタミンDと副甲状腺ホルモンの作用とカルシウムとリンの関係は、僕は何度も躓いた。苦手。ビタミンDはカルシウムもリンも上げることを把握すればこの問題は解けるのだけど、消化管でカルシウムとリンを吸収する所から繋げるくらいか。

A―4 :糖尿病では心臓の痛みを感じにくくなることがある。この知識からの一本釣り。パーキンソン病の検査で心臓交感神経シンチの取り込みの低下があるけど、これは交感神経の機能の低下を示すものであって、虚血性心疾患との関連があるという話ではない。パーキンソン病では交感神経の機能低下を反映して起立性低血圧が生じる。

A−7:たばこ広告の禁止はしてない。たばこパッケージの警告表示くらいは流石にある。ニコチン依存症治療は無料ではない。公共施設で分煙が義務化されているというよりは禁煙が義務化されている。非喫煙者が特に保険料減額されているという話は聞いたことない。

Aー8:悩んで選択肢を動かして間違えた問題。痔瘻ということは肛門の近くに穴ができた訳で、待っても自然に塞がることは考えにくい。排膿の強さは腸管の圧との関連性が考えられるので、便意がある時の方が排膿強そうである。

Aー9:神経性過食症(大食症)と神経性食思不振症は基本的にワンセットであり、ボディイメージが強く関わるものと考える。食べ過ぎたら自分で吐いたり、下剤を使って出そうとする。精神科の疾患の知識は、別にそれに限ったことではないだろうと仮に思っても、その思いは一旦封印して、その疾患の典型的知識からイメージされる患者像を非常に大切にすべし。

Aー10:RPRが疾患活動性の指標となることから一本釣りする。梅毒は近年増えており、今年もトピックな感染症であった。

Aー11:腹圧というからには腹圧が高まることが原因である。つまり、横隔膜の運動が失禁の原因ということになる。膀胱が原因の疾患は除外する。前立腺全摘したら、骨盤底筋群の一部は手術の時に取り除かれそうである。この問題はわからなかった。

Aー12:「後天性」を見落とさなかったかどうかが全て。この文章だと急いでたら見落とすと思う。これにより、風疹とムンプスの中で風疹が除外できる。

Aー14:知識問題。関節リウマチの関節外病変は膠原病分野でもかなりマニアックだけど、今後も問われる可能性はあると思う。膠原病は例年マニアックな知識まで問われやすいので、最後まで諦めずに暗記を続けていこう。膠原病だから間質性肺炎が起きることがあるし、関節リウマチなら皮下に結節を作ることはあり得るし、関節リウマチはぶどう膜炎や強膜炎が生じることはある。

Aー15:紫斑の原因を鑑別する問題。貧血や血小板減少があるが、骨髄血塗沫May-Giemsa染色標本が全て。白血病細胞が見られるので急性白血病を考える。再生不良性貧血なら採血所見も満たすがその場合骨髄血塗沫に異常細胞は出ないし、骨髄生検で低形成を見るはずである。

Aー16:片方の陰嚢の腫大。LD上昇。典型的な精巣腫瘍の病歴である。生検はもちろん禁忌なので、最初から高位精巣摘除術を行う。リンパ節転移を疑うが、精巣腫瘍はそれでも高位精巣摘除術を行うことは押さえておきたい。

Aー17:痛々しい画像が出てきてしっかりと萎える問題である。既往にアトピー性皮膚炎があることから、Kaposi水痘様発疹症をまず考える。単純ヘルペスウイルス感染症である。この病歴だと川崎病の不全型はなんとなく切れない気がして迷うが、今回は選択肢にないため、安心して選ぶことができる。他の選択肢は全て発疹のでき方から切ることができるはずである。

Aー18:cherry red spotがあり、画像から網膜中心動脈閉塞症を疑うことができる。病歴は突然の片目の視力低下であり、左眼の網膜を栄養する動脈が血栓で詰まったことを思わせる。

Aー19:Dダイマーの上昇と病歴から肺血栓塞栓症を疑う。背景に深部静脈血栓症がある場合、下肢に静脈血栓ができていて、そこから肺に血栓が飛んでいる可能性が高いため、胸部から下肢までの造影CTは有用性の高い検査である。下肢に軽度の浮腫があることは下肢に血栓があるという推定を支持する所見となる。

Aー20:悪性黒色腫を疑うので、ABCDEをチェックする。今回はシンプルな画像問題となった。

Aー21:噂のA問題で一番インパクトの強い問題である。横隔膜弛緩症なんて初耳である。消去法で解くのが解きやすい。問題を解くポイントはひとつでBochdalekヘルニアが先天性であることを知ってるかどうかだと思います。ヘルニアの成因をチェックしておきましょう。

Aー22:緑色連鎖球菌を原因とする感染性心内膜炎である。原因菌がグラム陽性球菌と考えられるので、グラム陽性球菌にスペクトラムが被るペニシリン系を考える。レボフロキサシンはニューキノロンであり、クラリスロマイシンはマクロライドであり、ガイドライン的には、原因菌が緑色連鎖球菌とわかっている段階で使う抗菌薬ではないようである。

Aー23:Aー3に引き続き、カルシウム動態を問う問題である。原発性副甲状腺機能亢進症である。細かい知識を問われる問題であり、本番でメンタルを崩す原因になりかねない問題であったと思う。1日目にこういう難しい知識問題が出た時は、1日目が終わった後に軽く復習して、勘違いを解除だけしてさっさと寝るべし。2日目に引きずると良くない。

Aー24:画像を見て、ポリープの数や大きさ、胆嚢の壁の厚さ、アコースティックシャドーをよくチェックする。問題ないコレステロールポリープなため、経過観察をするのが正しい。今後癌化するとよくないので、今後定期的にチェックすることになる。

Aー25:均衡型の胎児発育不全、腹水。胎児の形態異常の種類から、原因病原体を推定する。風疹が原因の先天奇形は、小がいっぱいつく形態異常があり、小頭症、小眼球症、感音難聴なので、僕はむしろ頭が小さくなるはずだと思って除外したが、本来これで風疹を除外できる訳ではないので、風疹抗体価に救われた問題であった。母体風疹抗体価により、十分に免疫ができている状態であり、風疹感染は否定的である。抗体価が256倍以上あれば、最近の風疹感染の可能性も否定できない。

Aー28:画像の凹んでいる部分は横隔膜にある孔(食道裂孔)である。今年はヘルニアの問題が多かったし、横隔膜の問題も少なからず出てきた。A問題で面食らった受験生が多かったのかもしれない。

Aー29:黄色膿性の帯下を認める。淋菌感染症や、細菌性の卵管炎を考える。骨盤内炎症性疾患である。問題はこれらのことから、抗菌薬治療が必要ということで終わり。骨盤内炎症性疾患は不妊の原因になることもあり、早急な治療が求められる。特に今回は卵管炎であり、卵管が炎症で癒着したりすると厳しいということになる。

Aー31:誤嚥性肺炎の患者のサポートに関わる医療職を問う問題である。臨床工学技士は生命維持管理装置の操作と保守点検と考えれば良い。人工心肺、人工呼吸器、補助循環装置など。これらの機器が必要な状態ではないため、臨床工学技士はこの患者のサポートには関わらない。

Aー35:C型肝炎の治療はアップデートが目覚ましく、直接作用型抗ウイルス薬がよく奏功する。

Aー37:区画内の筋の他動的伸展による激痛、橈骨動脈の拍動消失は区画症候群を強く疑う。

Aー39:薬の包装を飲み込んでしまったことがわかる。両眼の白内障手術を予定していることから白内障で見えなくて、包装を目で見て認識することができなかったことが考えられる。とりあえず、たくさんの処方薬を一度に服用しやすいように工夫する選択肢を選ぶ。

Aー41:子宮体部に限局する子宮体癌である。類内膜腺癌は子宮体癌の中で最も頻度が高い組織型である。単純子宮全摘または準広汎子宮全摘+付属器摘出+骨盤リンパ節郭清を行う。

Aー42:画像でdural trail signを認め、髄膜腫を考える。脳表面にあり、造影MRIで血管に富み均一な増強を受ける。病歴は腫瘍が脳を圧迫して、けいれんを発症したことを思わせる。

Aー44:溶連菌感染後急性糸球体腎炎では補体が消費亢進して補体が低下する。IgEが上昇するのは微小変化型ネフローゼ症候群と巣状分節性糸球体硬化症の特徴。

Aー45:扁桃炎、喫煙、手掌と足底の皮疹と来たら掌蹠膿疱症である。画像が典型的なので、同じ疾患の過去問で画像問題が他にあるので一度チェックしておこう。掌蹠膿疱症は胸鎖関節炎と関連がある。歯周病や糖尿病、金属アレルギーが原因となることがある。

Aー46:胸膜生検でカルレチニン陽性は悪性胸膜中皮腫のキーワードなので覚えておこう。一番迷う選択肢のaについては、112D10をチェックしておいたかどうかがポイント。悪性胸膜中皮腫の組織型には上皮型、肉腫型、二相型があるのですが、上皮型が最も多く、予後もやや良いとされるようです。

Aー48:マラリアの三徴は発熱、貧血、脾腫である。過去問はかなり遡らないと出てこない知識で、難しい知識だとは思うけど、僕は模試で見たことがあって解くことができた。今後も狙われる可能性があるので、覚えておくといいかもしれない。ちなみに、この場合のマラリアの脾腫は病態からイメージすることができて、マラリアは赤血球で増殖する寄生虫であるため、それを処理する脾臓が腫れるのは当然の結果である、と考えて覚えるのはアリだと思います。

Aー49:左呼吸音が減弱しており、食道が破裂して内容物が呼吸器まで流れ込んでいる可能性?がある。Boerhaeve症候群を選ぶのが適当である。

Aー50:問題文で押さえたい英単語は、femoral →大腿の、dorsiflex→背屈。大腿骨頸部骨折で運ばれたこと。次の日に左足が持ち上がらなくなったことを押さえる。決め手はdecreased sensationつまり感覚低下である。Peroneal nerve palsyつまり腓骨神経障害を選ぶ。大腿骨近位部の骨折では血管や神経が損傷したり、圧迫を受けて末梢神経障害を起こすことがあることを押さえておく。cerebral infarction→脳梗塞、ラプチャー→断裂、選択肢の英単語はここら辺を押さえておけばわかる。

Aー52:大動脈解離の画像を読めず、β遮断薬を切って間違えた。脈拍が低くてβ遮断薬は怖いと思ったが、カルシウム拮抗薬同様、大動脈解離の治療薬としてβ遮断薬を使うらしい。わからないので解説はパス。

Aー54:病歴から3歳時に川崎病に罹患していたと考えられる。画像は冠動脈瘤があり、その先に狭窄像が見られる。冠動脈瘤からなんらかの機序があって狭窄していると考えられるが、これ以上は踏み込まない。冠動脈瘤は虚血性心疾患が生じる原因になるだろうと考える。

Aー56:糖尿病、高血圧で加療の病歴あり、閉塞性動脈硬化症(ASO)の病歴と考えられる。冷やしたら余計血流が悪くなるので、避けるべきである。足を冷やすのが奨励されると言えばRICE処置(Rest:安静、Ice:冷却、Compression:圧迫、Elevation:挙上)が有名なので覚えておきたい。スポーツの急性外傷(捻挫、肉離れ、打撲、アキレス腱断裂)に行われるらしい。よく使われる処置なので、模試でRICE処置が出てきたら、適応される疾患をチェックしておくべし。

Aー57:消化管穿孔の症例である。CTでfree airが見られるので、つべこべ言わずに緊急手術を選択したいところ。

Aー58:新生児の診察の問題。仮死なく出生したが、泣き声が弱く、他の所見も合わせて筋緊張低下っぽさがある。そこまでしっかりと特定はしなくても、何かがおかしい。専門の病院に受診させたい…とまで判断できれば、回答に辿り着く。専門の病院に受診させる基準を今後のために調べておきたい。明確な文章にしにくいポイントもありそうなので、研修が始まったら専門の先生に話を聞いておくといいのかもしれない。

Aー59:血小板減少症があり、骨髄塗沫標本で巨核球の軽度増加があることから、ITPを想起する。ピロリ菌がいるならば、除菌をすると軽快するので、尿素呼気試験は治療方針の決定に有用である。

Aー60:高血圧緊急症である。眼底検査は降圧治療の準備中に簡便に行える検査で、高血圧の重症度に関する有用な所見が得られるらしい。問題の病歴は腎血管性高血圧のものと考えられる。

Aー61:この問題は妊娠高血圧の診断基準の血圧の数値をど忘れした(通常の高血圧よりも低いと思ってしまった)ために間違えた。HDPの診断基準は収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上である。

Aー63:百日咳は吸気性喘鳴の反復を生じレプリーゼと言うらしい。

Aー65:端座位はほぼ自立で座位訓練はいらない。右手の書字はおそらく訓練してもできない。よって、訓練によって機能の維持がまだ期待できる立ち上がり、立位保持訓練をリハビリとして行う。

Aー67:早発一過性徐脈かな?第二期は正常上限〜少し遅れ気味である。SP+4で経膣で分娩させるのが可能で、胎児心拍陣痛図で早発一過性徐脈のような所見があるが、それ以上に陣痛周期が長いことに注目したいかもしれない。陣痛周期6〜10分で、微弱陣痛が疑われるため、吸引分娩で状態が悪くなる前に出すことを考えるのかもしれない。

Aー69:CTで胆嚢が映ってないが、おそらく十二指腸くらいの高さで胆管の中に石が映っていると考えられる。胆管炎である。

Aー72:画像の皮疹の形状から結節性紅斑を思い浮かべる。選択肢の中で結節性紅斑を直接生じる疾患は、Crohn病、Bechet病、サルコイドーシスである。

Aー73:無月経乳汁漏出の病歴であり、高プロラクチン血症を疑う。下垂体に腫瘍があることがあるので、下垂体MRIを行う。薬剤を原因として生じることがあるので、内服歴を確認する。甲状腺ホルモンとプロラクチンは連動しているので、甲状腺ホルモンの測定も行う。

Aー74:コロナ陰性である。異型リンパ球の存在からサイトメガロとEBウイルスを想起して、これらの感染の背景としてHIVウイルスの存在を疑う。

A問題は以上です。こうして見ると、骨のある問題がA問題からゴリゴリ出ていて、解説書きながら僕はかなり面食らってしまいました…。

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