『ダム・マネー ウォール街を狙え!』を観ました

『ダム・マネー ウォール街を狙え!』を観ました。
コロナ禍を舞台に起きたゲームストップ株騒動を題材にしています。

そもそも私が株のことに詳しくなく、大変不勉強な状態ながら、映画としてキャラ濃い目の人間たちが株価の上下によって振り回されていく様子が大変面白かったです。現実にいた人間にかなり寄せた芝居、衣装などを用意していたと思います。モノマネとギリギリの際どい感じが絶妙でした。

登場人物が出てくるたびに、名前と一緒に総資産額のテロップが出てくるのですね。
要するにこの映画の初期設定での偏差値が出るわけですよ。
主人公のポール・ダノはごく普通の総資産学がポンと出て、その冴えない感じのビジュアルと「これからもこの人の人生にはそんなに変化はないのだろうな」と思わせるような日常。

それに対して、投資家たちの総資産学のまあ凄いこと。そして住んでいる家なのか、オフィスなのかもまた広大で、マネーゲームにどっぷり。電話でのやり取りは株のカラ売りに関することを報告し合うことです。

このカラ売りに関する仕組みがしっくりと来ないとなかなか分かりずらい部分もありますが、映画は勧善懲悪のベビーとヒールに分かりやすく二項対立した作りなので、そのカラ売りは金持ち投資家たちが利益を独占的にしていく行為だというのはなんとなくわかってきます。同時に映画序盤から投資家たちは金に支配されてしまっている奴隷のようにも見える。自宅プールでパーティをやっていますが、別にそれを観て羨ましくもなんともない感じも含めて、絶妙な塩梅で表現されております。

遊ぶのが大好きといった女性たちは総資産学がマイナスの表記で出てきたりする。
生活と資産額が一致していく画を見せて状況をパッと説明してくれるわけです。

このさりげないテロップの出し方が上手く、過剰ならざるとも、映画にいいスパイスを加えています。
これは映画的な構成編集の作りとして参考にしたいやつでした。

スマホで簡単に株の売り買いが出来る現代的な状況と、コロナ禍に欠かせないマスクの存在がつい最近の出来事であることの説得力を与えています。我々はこういう世界線をついこの前まで生きていたのだと感じました。

一人のYoutube配信者の行動が運動になる。
その運動が投資家のカラ売り戦略を炙り出していく。終盤のオンラインでの裁判は主人公演じるポール・ダノのスピーチがオンライン上であっても人々の心を掴んでいく様子を捉えています。いつの時代でも英雄は血肉通わせることを仲間たちに連帯させていくことなのだなと思わずにはいられなかった。

また金持ち連中たちのビクビクっぷりがまた大変リアリティを感じさせるものでした。裁判時に画面の外側に多数の人間を用意したり、貧乏ゆすりが止まらなかったり。お金を盾に実態はしょーもないペラペラな感じがよく現れているように思えます。金に支配されているというか、幸福そうには見えないというか。観ていてカッコわる!となる。対するポール・ダノはたった一人で挑み、奥さんが見守る状況。そんなPC画面上での攻防が多勢に無勢の西部劇のようでもあります。

この映画、私は価値のお話と感じました。
キース・ギル(ポール・ダノ)は自分の好きな、自分にとって価値があると感じられているゲームストップ社の株を買い、カラ売りする投資家たちはまさに金持ちらしい価値観の中で生きている。前者のような視座がある人によって正しさと、自分にとって価値があると思えるものに投資をすることの大事さと妙が描かれていると思うのです。多くの人たちが後者のような分かりやすさに煽れていく中で、本作の主人公のような視座はいつまでも持ち合わせていたいと感じました。

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