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DU缶物語05「時計街のゴミ事情」


Ⅰ.最近の時計街


大きな時計台の街に住む、
世渡り上手で社交的なサルのマイキーと、
お屋敷生まれで真っ直ぐな性格のロバのババロア。

最近よく一緒にいる2人は、
今日も街の噴水公園でお昼ご飯を食べていました。

お屋敷のじいやお手製のサンドイッチを頬張ったババロアは、
突然思いついたようにマイキーに話題を持ちかけます。

「昨日じいやと話していただけど、
 最近街に落ちているゴミが増えてきたと思わない?」
「あぁ、確かにここの所多いね」

ロバのババロアは、
最近道端に落ちているゴミが増えていることが
気になっていました。

「今日はこのまま遊びに行くんじゃなくて、
 2人でゴミ拾いをしないかい?」

『思い立ったら即行動』が心情のババロアは、
2人で街をキレイにしようとマイキーに提案します。

するとマイキーは、

「うーん…。いや、ここは街のみんなに声をかけて、
 街総出のゴミ拾いイベントをしよう」
とババロアに提案します。

「2人で何日かに分けてやればいいと思うけど?」
 とババロアは反対しますが、

「じゃぁババロア1人で拾ってもいいけれど。
 1人だけだと1週間くらいじゃ終わらないし、
 何日もかけて拾い切る前にまたゴミが溜まってしまうよ」
とマイキーに言われ、ババロアは渋々人集めに協力します。

Ⅱ.街での呼びかけ


早速、街の中央に位置する時計台広場にやってきたマイキーは
「1ヶ月後の今日、街の人総出でゴミ拾いをしましょう!」と
道ゆく人へ呼びかけを始めました。

「い、1ヶ月後!?遠くない!?」
マイキーの呼びかけの内容に、ババロアはビックリしました。

咄嗟にマイキーの方を向くと、
マイキーは「まぁまぁ」と諭しながら呼びかけを続けます。

「1ヶ月後の今日この場所で、街の人総出でゴミ拾いをします。
 持ち物はゴミ袋と軍手だけ。ぜひみんなで街をキレイにしましょう!」
「はぁ…、こんな事せずに2人で拾えば早いのに…」

それからマイキーは、
毎日街を回ってゴミ拾いの呼びかけを続けます。

「〇〇日に街総出でゴミ拾いをします!
 ぜひ参加してください!」
「………」
「〇〇日にゴミ拾い大会をします!
 ぜひご参加ください!」
「………」

街の人総出のゴミ拾いまで一週間を切った時、
ババロアがマイキーに尋ねました。

「ねぇマイキー。2人だけでゴミを拾うのが大変ってのはわかるけど、
 毎日毎日こうやって街を回って呼びかけをする方が
 よっぽど大変じゃない?」
「まぁまぁ、当日になったら分かるから」
「ん?……まぁいいけどさ」
そう言いながら、今日も街の人たちに呼びかけを続けます。

Ⅲ.いよいよ当日


そうして、待ちに待ったゴミ拾いイベントの当日。
なんと街は朝から雨模様。
せっかく2人が呼びかけ続けたゴミ拾いイベントは、
残念ながら中止になってしまいました。

「あぁ〜、こんなことなら強引にでも
 最初から2人でゴミ拾いをしておくんだった。
 私たちの頑張った1ヶ月が無駄になっちゃったよ…」

ババロアは止まない雨を見ながらガッカリ。

(明日は朝からマイキーを捕まえて、
 無理矢理にでもゴミ拾いをしよう)

改めてそう決心したのです。

四.次の日


「マイキー、今日は2人でゴミを拾うよ!ゴミ袋と軍手を持ってすぐ集合ね!」

朝一のモーニングコールでマイキーにそう伝えると、
ババロアは朝食も食べずに噴水広場にやってきました。
しばらく経ってから、そんなババロアの気持ちを知ってか知らずか。
サンドイッチを片手にマイキーがやってきます。

「ババロアお待たせ。朝ごはんは食べたかい?
 食べていないのならこのサンドイッチをあげるよ」
「そんなことよりマイキー、ゴミ拾いの準備は?」
「まぁまぁ。落ち着いて周りをご覧よ」

そう言いマイキーは持っていたサンドイッチをペロリ。
気にも留めないマイキーの様子に、
ババロアは何がなんだか分かりません。

言われた通り落ち着いて周りを見渡した時、
ババロアはある違和感に気づきます。

「あれ?」
「うんうん」
「ゴミが………ない?」

そうです。
その違和感の正体は、
先月まで街の至る所に落ちていたゴミがなくなっていたのです。

(昨日のゴミ拾い大会は中止になったはずなのに…)

「先週からちょっとずつなくなり始めていてね、気が付かなかった?」
「いや、全然…。でもなんで?」

イベントは中止になったのに、ゴミはどこかに消えている。
何が何だかわからないババロア。
するとマイキーがベンチに腰をかけて、説明を始めました。

五.ゴミの行方


「ゴミを捨てる人がいる限り、拾っても拾ってもイタチごっこ。
 だったらやることは、ゴミを捨てる人の意識を変えることだよ」

「ゴミ捨てる人は『自分はゴミを片付けなくていい』と思っているから捨てる。
 そこで自分自身がそのゴミを拾うイベントに参加する事になったら
 どうすると思う?
 今度は『自分で拾うのが嫌だから』自然とゴミを捨てなくなるだよ」

「えー、わがままぁー」
「そうだね。でもそうやって捨てる人がいなくなれば、
 僕たちみたいな『自然と拾う』人たちのおかげで、次第にゴミは減っていく。
 ご覧の通りさ」

てっきりマイキーは「自分が拾うのが大変」だから
みんなで拾おうと持ちかけたのだと思っていた。
マイキーには頭が上がらない。

「失礼しました」
「ん?」

バツが悪そうにボソッと謝るババロア。
マイキーのアイデアでキレイになった街を眺め、
気を取り直してこう提案する。

「このキレイさは続けないとね」
「キレイな方が心もスッキリするからね」

気持ちよく賛同するマイキー。
こうして時計台の街はキレイな日常を取り戻しました。

おしまい。

⚫︎あとがき


思ったことに一直線なババロアと世渡り上手なマイキーの物語。
いかがだったでしょうか?
「自分たちの街をキレイに使ってね」という事を伝えられたらと思い、
このシナリオを書きました。

このシナリオはyoutube「ユメひろびろ」で公開予定の、オリジナルシナリオ「DU缶」第5弾となります。
「ユメひろびろ」では、オリジナルシナリオの他にも、世界の童話の読み聞かせなど、幅広く活動予定。
是非応援してもらえたら嬉しいです。

それではご覧いただきありがとうございました。
また次回の記事もよろしくお願いします( ´ ▽ ` )ノ

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