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カンボジアで出会った青年!

私は定年退職後に行ったカンボジアでチャンという青年に出会った。
彼は30歳くらいのトゥクトゥクの運転手だ。
気さくで屈託がないばかりか欲も感じない若者だった。


その国の印象は出会った人によって決まる

カンボジアの公用語はクメール語だ。
アンコールワットで観光客を相手に仕事をしている人は、英語や中国語などを話す人も少なくない。
私は挨拶程度のクメール語を覚えてアンコールワットがあるシェムリアップに行った。

チャン君との出会い

現在は運用されていない前のシェムリアップ国際空港からシェムリアップ中心部にあるホテルまでは、Grabという配車アプリを使ってタクシーで移動した。

シェムリアップ川沿いのホテルに宿泊した私は、数多くあるアンコール遺跡を効率よく観光するために何ヶ月も前から移動方法についてもリサーチしていた。

一概にアンコール遺跡と言ってもその規模は様々で、小さな規模の遺跡もあればアンコールトムのように広大な面積を誇る遺跡もある。

一ヶ所のアンコール遺跡を見学する所要時間は1~2時間だ。
ツアーなら遺跡を回る順序や時間も、現地ガイドのプランに従うのが一般的なのだろうが、私はそれが性に合わない。

旅に関しては自分で立てた計画を実行したいという強い意思を持っている。
言い換えるなら素直ではない頑固じじいだ。
そして無駄なことには予算を掛けたくないという質素倹約派だ。

つまりケチだ。
そのためこの旅も個人旅行だ。
中国南方航空のサイトで格安チケットを予約し、シェムリアップ国際空港でアライバルビザを取得した。

そんな私は移動手段は効率よく遺跡を回るための重要なファクターだと考えた。

遺跡を移動する度にGrabでタクシーやトゥクトゥクを呼ぶのも手間だ。
そこで貸し切りで回ってくれる運転手を探そうと考えた。

翌日の朝、私が宿泊していたホテルの前でトゥクトゥクの運転手が客待ちをしていたがスルーした。


伊達に人生を長く生きているのではない。
その人たちが例え文化の違うクメール人だとしても、顔を一目見ればおおよその見当はつく。

4日間の貸し切り交渉をするのに、手ごわい相手はできる限り避けたいからだ。
これまでの経験でも、ホテルの前で客待ちをしてる運転手の一日貸し切り
は割高の印象が強い。

私はシェムリアップ川沿いを歩いてトゥクトゥクの運転手を探した。

少し歩くとそんなに大きくはないシェムリアップ川の反対側に停車中のトゥクトゥクが見えた。
近付くとトゥクトゥクの運転手が道の前の食堂の男性と談笑していた。

私が探しているのはこの人だと直感した。
疑う余地のない人のよさそうな雰囲気が笑顔ににじみ出ている。
Tシャツに短パン、サンダルという格好からも高級感は微塵もなく、トゥクトゥクも最近アジアで見る一体型ではなくオートバイで牽引する古いタイプの車両だ。

そのトゥクトゥクのシートも金や赤のような派手な色ではなく、所どころテープで修理をした痕が伺える。
おそらく安価な中古品を買って商売をしているのだろうと推測した。

運転手の年齢は20代後半か30代前半といったところだ。
私が近づいてクメール語でチョムリアップスオと声を掛けると、ハッと我に返り少し驚いた顔をした。

私は事前に用意していた英語表記の行程表を彼に見せ、ワンデイ、トゥーデイ、スリーデイ、と指で示して「OK?」と聞いた。
英語が苦手な私が「ハウマッチ?」と聞くと1日20ドルと答えたので、じゃあ三日で50ドル(当時の為替レートで5,500円)でどうかと言うとあっさり「OK」と同意してくれた。

それがトゥクトゥク運転手のチャン君との出会いだった。

わがままなアンコール遺跡見学

そのままチャン君のトゥクトゥクで、遺跡巡りに必要なアンコールパスを買いに向かった。

その後アンコール遺跡の中でも最も男性的なプリヤカーンに行った時だ。
中央付近にいた政府関係者風の格好をした男性に、写真を撮りましょうかと親切そうに日本語で声を掛けられたから「それじゃあお願いします」と言って写真を撮って頂いた。

善意だと思っているとチップを要求されたので1ドルを渡すとそれでは足りないと言う。
要求されると払いたくなくなるので「それはなぜだ」「私は頼んだ覚えはない」と日本語で捲し立てた。
相手は諦めてそれ以上は食い下がってこなかった。

プリヤカーンを出た時には12時を過ぎていたので、チャン君を誘って昼食を食べることにした。

スマホ翻訳で「お金は私が支払うので一緒に食べましょう」というと、申し訳なさそうに「私は外で待っています」とチャン君もスマホ翻訳を使って返事をくれた。
先ほどのチップ商売をしていた大人にも聞かせてやりたいくらいだ。

私はチャン君を無理やり屋台のような食堂に連れて入った。

チャン君とはその食堂でラインを交換し、待ち合わせ場所や時間の連絡を取るようになった。
ラインで翻訳トーク機能を使いやり取りをしたが、チャン君の英語のスペルがアバウトだったため主に私からの一方通行の連絡用途になった。

最終日にアンコールワットから30キロ離れたバンテアイ・スレイに行く予定を入れていた。
「バンテアイスレはトゥクトゥクだと1時間以上かかりますがそれでもいいですか」と申し訳なさそうにチャン君が言ったがお願いした。

バンテアイ・スレイはアンコール遺跡の中でも女性的で柔らかい印象のこじんまりとした遺跡だ。
ツアーなら見学時間は長くても1時間といったところだろうが、私はチャン君に2時間待ってほしいとお願いした。

アンコール遺跡の中でも最も見てみたかった遺跡だったからだ。
この遺跡は東洋のモナリザと評価されているデバターなど、芸術的にも見る価値の高い彫刻の宝庫だ。
チャン君は快くいつもの笑顔でOKと言ってくれた。

バンテアイ・スレイの帰りもチャン君と一緒にランチをした。

再びカンボジアに行ってみたいと思う理由

チャン君はトンレサップ湖畔のチョンクニアというところに住む水上生活者だ。
それを聞いた時も私はチョンクニアではなく、同じトンレサップ湖のコンポンプルックに連れて行ってほしいと頼んだ。

もちろん彼は嫌な顔をせず連れて行ってくれた。

シェムリアップのマッサージ店では、財布からお金を抜き取られるというアクシデントもあったが、幸い少ししか現金を入れていなかったので被害は少なかった。
そのような嫌な思いも全て帳消しにしてくれたのはチャン君という青年と出会ったお蔭だ。

私のようなわがままじじいの要求をいつも笑顔で受け入れてくれた。
帰りは空港までサービスで送りますと言って、まだ幼い娘を単車の方に乗せてホテルまで迎えに来てくれた。

私は「娘さんに服でも買ってやってくれ」と言って貸し切り料金とは別に30ドルを手渡した。

その後もたまにラインのビデオ通話で電話をくれるが、そこに映っているのは少しずつ成長する娘の姿や涼しそうなトンレサップ湖の水上の家の様子だ。

私がまたカンボジアに行ってみたいと思う理由だ。

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