広島打線のストレート対応の劣化
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広島打線のストレート対応の劣化

昨季まで3年連続リーグNo. 1の得点力を誇り、リーグ3連覇中はそこを最もストロングポイントとしてきた広島ですが、今季はここまで丸佳浩・エルドレッドの退団や新井貴浩の引退による影響からか、得点力が伸び悩み、ここまでリーグ3位の294得点と、相対的にストロングポイントとは言えない成績となっています。

そのためか、「逆転のカープ」とのフレーズが生まれるほど昨季までは多く見られた逆転勝利の数も大きく減少し、リーグ3連覇を果たしたチームとはまた別のチームへと変貌しているように見えます。

※広島の逆転勝利数
2018年の41試合(82勝)で勝利数の50%から、2019年は12試合(38勝)で勝利数の32%へと割合が減少

以上のような、得点力の伸び悩みや逆転勝利の数の減少の根底には、ほぼ全ての投手が試合中に投じることになるであろう、ストレートへの対応の悪化があるのではないかと考えます。

どんな投手でも基本のボールとなるストレートを、チーム全体としてしっかり捉えられていないがために、チームの得点力が落ちているという側面もあるのではないでしょうか。

また、ストレートへの対応力が悪化したために、試合終盤に登板してくる投手の150㎞前後の速球を捉えられなくなり、試合終盤での逆転劇が減少したとも考えられます。

この考察が実証されるのかを以下にて確認していきます。

※成績は全て交流戦終了時点でのもの

1.得点力とストレートへの対応の関係性

まずは、各チーム打線の得点力とストレートへの対応力の関係を示していきます。

ここでのデータは、2014年~2018年の各チームの得点数とチーム全体のwFA(ストレートに対する得点増減)を使用していきます。

各チームの得点力とwFAの関係について、散布図にプロットしたものが上記表①です。(横軸が得点数を示し、縦軸がwFAの値を示す)

パッと見でも得点数が増加するとともに、wFAの数値も高まっていることが分かると思いますが、相関係数を見ても0.89とかなり強い相関を示しており、ストレートへの対応力がチーム全体の得点力にも大きく影響してくることが分かります。

しかし、wFAという指標自体が得点増減を示す指標のため、相関関係が現れるのはある意味当然のようにも思えますので、他の球種との比較でストレートへの対応力と得点力の関係を明らかにしていきます。

球種別にチームの得点数との相関係数を示したものが、表②となります。ストレートとスライダーという投球割合の高いポピュラーな球種は、得点数との相関は強いですが、それ以外の球種は然程相関は強くないことが分かります。

また、相関の強い中でもストレートの相関が0.89と最も強いことから、やはりストレートへの対応力は得点力と密接な関係にあると言っても良いのではないでしょうか。

2.広島打線のストレートへの対応力の変化

ストレートへの対応力と得点力の関係を概観したところで、本題である広島打線のストレートへの対応力の変化を以下にて追っていこうと思います。

まず、2014年からの広島打線のwFAの推移をまとめたものが表③となります。

2015年よりリーグ1位のwFAを記録していましたが、今季はマイナスの値へと転落し、リーグ内順位も5位まで下がっていることが分かります。

上記にて得点力とwFAの間に強い相関があることを示しましたが、このようなストレートへの対応力の悪化が得点力低下の要因の一つとして考えられるのではないでしょうか。

中でも各年の主要打者のwFAを確認していくと、2017年までは丸・新井・エルドレッド・松山竜平・鈴木誠也らがwFAは二桁を越え、wFA/Cも1.0を超える非常に高い数値を叩き出していました。

※wFA/Cセリーグ平均値推移
2014年0.17→2015年-0.36→2016年-0.02→2017年-0.08→2018年0.29→2019年0.28

2018年は、新井・エルドレッドという前年までストレートへの対応力の高さを見せていたベテランの出場機会が大きく減少したものの、バティスタ・田中広輔・會澤翼・西川龍馬のストレートへの対応力のアップにより、打線全体としてのストレートへの強さはキープすることが出来ていました。

ところが、今季は上記で挙げた選手の内、鈴木とバティスタしか明確にストレートへ強さを見せている選手がおらず、加えて毎年両リーグでもトップレベルのストレートへの強さを誇っていた丸の退団もあり、一気に数値を落としてしまいました

また、丸の退団だけでなく、田中や松山といったストレートへの強さを見せていた選手の不振が、大きく尾を引いている部分も大いにあると考えられます。

このようなストレートへの対応力の低下に拍車をかけているのが、NPB全体の顕著な球速向上ではないかと思われます。

今季はここまでパリーグが143.5㎞(前年比-0.3㎞)、セリーグが144.3㎞(前年比+0.7㎞)という平均球速を記録しており、ストレートへの対応力が落ちた現状の広島打線が、力を発揮するには厳しい状況となっています。

以上のように、チーム全体で見たストレートへの対応力に今季は劣化が見られますが、ここには丸の穴の大きさを感じずにはいられません。

昨年までのチームで打線を構成する上で、丸の存在は「タナキクマル」と一括りで語られることが多かったですが、率と長打を両立できる打撃バランスの良さやNPB有数のストレートへの対応力の高さを考えても、「タナキク」よりもずっと打線の核と呼ぶべき存在でした。

貴重な打者を失った広島打線は、丸と同じくファストボールヒッターであるバティスタを3番に据えることで、一時は形を作り上げましたが、それもバティスタの不調を受け交流戦中には解体される事態となり、試行錯誤の状態が未だ続いています。

せっかく数少ないファストボールヒッターが、球種を絞りやすい打順に配置されることで、その実力を遺憾なく発揮できていたにも関わらず、一時の調子の悪さで、適正な打順を崩すのはいかがなものかと思います…

それだけ首脳陣への丸への信頼度や安定感が、抜群であったことの裏返しにもなりますが。

また、丸の退団による差し引き分のみならず、2018年にストレートへ強さを見せた打者が軒並みその強さを失っているのも、大きな問題点でしょう。

もしかすると、ファストボールヒッターが減少した影響なんかもあるのかもしれません。

以上より、基本であるストレートを強く打ち返すことのできる打者を揃えない限りは、強力打線を築き上げることは不可能であることが、この広島打線の変化から分かるのではないでしょうか。

3.まとめ

・得点力とストレートへの対応力の関係
過去5年の各球団の成績を照らし合わせると、強い相関関係が見えるため、打線の得点力とストレートへの対応力は密接な関係あり
・広島打線のストレートへの対応力の変化
2015年~2018年までリーグ1位のストレートへの対応力
ファストボールヒッターであった丸・新井・エルドレッドの退団、田中・松山の不振によりファストボールヒッターが誠也とバティスタくらいになったことで、wFAの値の急激な悪化
昨年までストロングポイントであった得点力が、ストロングポイントと呼べなくなっている要因の一つである

以上が、本noteのまとめとなります。

2019年版の広島は、得点力よりも安定した投手力が武器と言えるチームですので、投手力を前面に押し出していくような形が良いのでしょうが、長期的に強いチームを作り上げるのに必要なのは野手であり、得点力であるため、ストレートへの対応力を高めていくのは確実に必要でしょう。

そのためにも、チーム全体として再びストレートへの対応力を高めることを意識する必要があるのではないでしょうか。

#野球 #プロ野球 #広島 #カープ #ストレート

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