見出し画像

1987-1

Kと別れてから数年が経ち、
私たちはそれぞれ別の大学に進学した。

大学で新しい友人もでき、
演劇部に入った私は毎日が充実していた。
夏休みになり、そろそろ運転免許を取ろうと
自動車教習所に行った私は
そこでKに再会した。

わ、会ってしまった

少し気まずい私の気持ちを知ってか知らずか、
Kはあの頃のことを忘れたように
話しかけてきた。

「久しぶり、元気?」
「元気元気」
私も何事もなかったように返事をする。

Kは私の通う大学の、隣の大学に通っていた。
昔、私が行きたいと話した学部だったのは
多分偶然だよね?

それから何度か教習所で会い
何度か一緒に帰ったりした。
ある日、先に免許を取れたKに
ドライブに行こうと誘われて
私たちはKの家の白い車で出かけた。

新川の海に着いて、曇り空の中の
松林に車を止めて話をしていると、
Kは急にカーステレオにカセットテープを入れて
音楽をかけはじめた。

「誰の曲?」
「近藤真彦」

マッチは好みじゃないんやけどな
(たのきんトリオはよっちゃん派)、
と思ったけど、そのまま聴いてと
言われたので我慢して(ごめん)聴いていた。

「ここからよく聴いて」

戻ってこい、という歌詞が聴こえた。

「聴いた?」
「うん」
「どう?」

曲の事じゃないよな、歌詞だよな。
(この曲がどうしても思い出せなくて、
今回これを書くにあたり、AIに相談したが
玉砕した。)

「うん、いいよ。」

そうして私たちは再び付き合い始めた。
























この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?