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1987-2

再び付き合い始めた私たちは
お互いの家で会ったり
工場と海が一緒に見えるところで
2人で過ごした。
そのうち、以前は友達にしか見えなかったKに
私は何故かどんどん惹かれていった。
会えば嬉しいし
会えなければ寂しい。
存分に愛されたいと願い、
存分に愛を注ぎたいと思う。
私は普通に恋をしていた。

しかしそんな私と
キスをしたり下着一枚で抱きあったりしても
Kはその先に進まなかった。
私は問う。

「なんで最後までしないん?」
「何かあっても責任取れんから」

Kは高校の時(私と別れてから後)に、
船員だった父親を亡くし、
母親と妹と暮らしていた。
母親のことをとても大切に思っていて
私がもう少し一緒にいたいと頼んでも、
それを振り切って母親の職場に迎えにいく人だった。

その責任感を知ってはいても、
私はKと結ばれたかったし
できればこの先もずっと一緒にいたかった。
ある日業を煮やした私は
(母が何かあったら使いなさいとくれた)
コンドームを持ってKに言った。

「私はKと最初にしたい」

処女だったのによく言ったなと
今でも思うけど
それでも無理だと言われて
私たちは結ばれることはなかった。

その後、彼は本当に好きな人と結ばれたのかな?
Kが想いを寄せたその人は
どんな人だったんだろう。
この日のことを思い出す度に
私はふと考える。

Kは最後まで独身だった。




























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