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1993

大学を卒業して、
私は地元の放送局に就職し
毎日忙しく働いていた。

Kと別れて1年半後に、友人の紹介で付き合い始めた人とは婚約も済ませ、とても順調に進んでいた。
Kのことを想っていた時は
この人が全てだと思っていたが、
案外簡単にそれを越える人は現れるものだと
その時の私は思っていた。
(実は今も思っている)

結婚退職も決まったある日、
勤務先の隣のビルで
絵の販売会があるということで
終業後に同期と行ってみることになった。
絵を買うつもりはなかったのだが、
見つけたカラフルな絵に惹かれ、
同期も笹倉鉄平の絵を買うというので
思い切ってジェニファー・マークスの
アイランドブーケという絵(シルクスクリーン)を
買うことにした。

絵を見ながら、販売員が他の販売員に、
こちらのお客様(私)、ご結婚されるんですって。
アイランドブーケはぴったりな絵ですね。
と話している。
ふと、たまたまその絵を見ていたカップルの男性が
Kであることに気付いた。

なんでここにおるん?

メガネをかけていたKは
同じくメガネ姿の女性と親しげに話していた。
おそらく私には気付いてないだろう。
途中でお手洗いに行ったKを追いかけて
声をかけようかと思ったけど、
冷たくされるのが怖くて
どうしてもできなかった。

これが動くKを見た最後だった。
5月に私は結婚して、松山を離れた。




















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