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「窓辺の猫」 第五十回 食の下僕

どうも、猫様のなんちゃってご主人です。
あ、食べ物で裏切る猫がやってきた!
いつもお世話している私を見捨てて父に甘えに行っていたくせに!
そうやってごはんもらったのに、ごはんをもらっていないふりをする我が家の飼い猫の名前はトンボです。

食べ物の下僕。
食欲の奴隷。
食い意地の権化。

食欲に関しては右に出るものがいません。
我が家では、もう一匹三毛猫を飼っていてセミという名前です。
このセミ猫は、ごはんをいっぺんに食べられず、食べ過ぎると消化しないで吐いてしまいます。
その点、トンボ猫は胃腸が丈夫で食べたものはしっかり腹の中におさめてしまいます。

トンボ猫がうちにやってきたばかりの頃は、セミ猫はかいがいしくトンボ猫の世話をしていました。警戒してセミ猫の方から近づいては行きませんでしたが、トイレの使い方もごはんのもらい方も扉の開け方まで全部セミ猫が教えてあげました。人間は特にしつけをする必要がなかったのです。
セミ猫先輩に任せておけばオールOK。ケージに慣れてもらうくらいのことしかしませんでした。

うちにやってきた頃は痩せていてひょうの気高く孤高な豹のようだったトンボ猫。
それが今では、家族の誰彼かまわず媚びを売り、乱暴者の父の足元にすら自らすり寄っていきます。
セミ猫の方が父の車の音を覚えていて、一か月ぶりの再会をリビングの扉のそばで待っていたのに、それを押しのけて父が玄関で靴を脱いだ音を聞いた途端に扉の前に陣取って「お土産は?寂しかったんですよ!おかえりなさーい」とにゃあにゃあ鳴きます。

セミ猫は控えめな猫ですから、父が撫でてくれるまで同じ場所で待って、撫でてもらえないとしょぼんと悲しそうにするだけです。
セミ猫に足りないのは惜しむらくは積極性。
外の猫とけんかする負けん気も、後輩猫があまりにしつこくごはんを奪ってくるときには制裁を加え、順番待ちをさせる指導力と忍耐強さを兼ね備えていながら、甘え下手なのです。

それでも、トンボ猫の影響を受けて、一匹で暮らしていた頃よりはごはんに対して執着を見せるようになりました。
ウェットフードは柔らかくほぐしてもらうまで、以前は食べませんでした。
今はそんなのんきなことをしていると、後輩猫に横から盗られてしまうので、ごはんの器の前で真っ先に待っていて、必ず自分が先に口をつけます。
器からこぼれたごはんはトンボ猫も積極的に食べなくなりました。しかし、隙あらば戸棚を開けて盗み食いしようとします。ごはんを減らされるのが気に入らないのです。

セミ猫はたまに床に落ちてしまったもキャットフードも食べるようになりました。

お上品な猫様だったのに、やはり食の誘惑には負けるようです。
ごはんも人間に甘えるのも先輩のセミ猫が先。
でも、ずっと自分ばかり構われるのはかわいそうなので、トンボ猫が横入りしてきたら素直に譲ってあげるのです。

ところが、外猫家族については窓辺で厳しい顔で見ています。
これ以上増殖は困るので、庭に現れる避妊手術を考えています。
しかし、家族の同意を得られていません。
なし崩しに飼うことになるかもしれないからです。
今、いろんな方法を探しています。
その活動をSNSで広げるべきか、noteを活動の場にしたら、これまでの私の趣味の場所でなくなってしまうでしょうか。
まだ、転職をしたばかり。
私の生活の安定を待っていて、命が間に合うのか。
あれこれ考える少しだけ悩ましい春になっています。

少なくとも、我が家の食いしん坊猫たちは自分たちの食い扶持が減るかもしれないことを喜びはしないでしょう。お太り気味のトンボ猫はどのみち体重を減らした方がよいのですが、先輩猫が甘やかし、家族に媚びを売るのがうまいので、なかなかうまくいきません。
やってきたばかりのころ、キャリーを破壊して触らせなかった警戒心の強さは薄れています。
それでも、姪っ子がやってきたときには、ごろんと横になって腹を見せた落ち着いたセミ猫とは裏腹にトンボ猫はぴゅうっといつもより素早い動作で逃げでして、物陰に隠れてしまいました!


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