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イタリアの農家デモで思うこと

今、イタリアでは、農家によるデモが繰り広げられている。

イタリアの各地から、多くのトラクターが出動し、トスカーナ辺りだとローマまで向かって集結し、デモを行っている。もう、何日も。

それは、ヨーロッパ共同体が推し進める「グリーンディール政策」というのに立ち向かうためである。
「グリーンディール政策」では、増え続けるとされている二酸化炭素を減らす為の対策として、家畜や肥料の制限、軽油の廃止、二酸化炭素を一定以上排出することに対しての課税など、実際には、それが本当に、環境対策になっているのか…と思うのだけど、どうだろう。

私は僅か4ヘクタール弱ほどの小さな土地でオリーブを栽培する農家であるから、そのレベルで、いろいろ考えてみることにする。

私のオリーブ畑は、2年前、IGPという品質保証の登録をした。
その方が、ヨーロッパ共同体から多少の援助が出るから…ということだったけど、おそらく、その土地の農業組合が管理しやすいから推奨されたのだと今では思っている。援助なんて、雀の涙。
農地の使用目的、植えられているオリーブの本数、サテライトによる監視など、まあ、事細かい。
制限もいろいろで、使用する肥料やその時期、除草の時期、剪定は2年に一度、農薬は禁止…など、細かく設定されている。
決められている内容は、そこまで負担になるものではないし、基準として大きな指針になっているけれど、サテライトで時々確認するのだと聞いて、少し驚いた。
これで「有機栽培」に登録したら、もっといろいろな制限が出てくるであろうと思う。
ちなみに、オリーブの木専用の有機肥料があることを、昨年知った。
有機栽培だから、肥料を使わないわけではない。

良質か良質でないか、とか、美味しいか美味しくないか、というのと
品質保証は、全くの別物。

しかも、登録するのに、こちらがお金を払って、品質保証のマークをつけるならば、さらに一本ずつ、登録した分のお金がかかってくる。同じオリーブオイルが品質保証がつくことによって、1本2〜3ユーロ金額が高くなるのは、そのせい。
だから、IGPには登録したものの、一本ずつにその保証はつけないことにした。
自分の中で目指すは、品質保証の取れたものでもなく、有機栽培でもない、「自然栽培」。

「自然栽培」と謳うは簡単なのだが、ここ最近の…というか、多分、いつでもそうなんだろうけど、その年の天候に大きく左右されるのが現実。
春先にいきなり零下を記録した2年前は、トスカーナの北部は壊滅的だったし、
昨年は、花が咲いた後の冷え込みが、実に結ばなかった地域も多かった。
私にとって、一番の懸念は、その時々の「冷え込み」である。二酸化炭素ではない。
二酸化炭素は、気温が上昇すると、増大する。

だから、温暖化対策と銘打った二酸化炭素の低減より、ただでさえ、収穫量が減りつつある上に、燃油費や税金などの値上がりの方が、農家にとっては厳しい。
近年、物価が上昇してして…と消費者は嘆くが、農家が得る収入というのは、それよりもっと少なく、経費は上昇している。
消費者が手にする時の印象より、かなり切り詰められているのが現実。
収穫をやめてしまう農家さんが増えているのは、マスコミあたりで騒ぐような二酸化炭素が云々や何が入っているかわからない肥料を使わされることではなく、経済的にやっていけない事が原因している。
体力的に大変なのに儲からない仕事は、誰もしたくない…という事だと思う。
にっちもさっちも行かないような、まさにそんな状態。

今日も続く、農家デモ。
一体、どのような結末を迎えるのか、
それが大いに気になるところである。

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