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2023年度・川西市の多文化共生(外国につながる子どもたちへの支援)

「地域と日本語教師の会@川西」の共同代表を務めるユンと申します。
私たちは、川西市の多文化共生推進を地域から支えていくことを目指して、2023年1月に正式に会としての活動を始め、主に、外国につながる子どもたちへの日本語支援をしている団体です。

川西市の多文化共生に関して思いを抱いておられる方の参考になればと思い、2023年度川西市における「外国につながる子どもたち」への支援体制について、私たちが認識していることをここに記述させて頂きます。
これは私たちが活動を通して把握していったことですので、他にも情報がありましたら、共有頂けると有難く思います。


川西市・外国籍住民の人口データ

まずは、行政が開示している住民基本台帳のデータ(昨年末のもの)から川西市の現状を分析したものを提示いたします。

以下が、令和4年12月末の川西市及び、兵庫県南部の主要な市の外国籍人口の絶対数と、総人口に占める割合です。
まだ、川西市は、周辺市と比べて、絶対数も割合も低いことが分かります。
数値で言うと、1,600人余り、1.1%です。

川西市の外国籍人口(絶対数)・他市との比較 (兵庫県資料による)
川西市の外国籍人口(割合)・他市との比較 (兵庫県資料による)

国籍別で言うと以下の通りです。

国籍別各市外国籍人口(絶対数と割合)(兵庫県資料による)

伊丹市や宝塚市と比べてみましても、特に際立った特徴をあげることはできません。
とはいえ、川西市において、外国籍人口は急増しています。昨年より15%増です。これは、周辺市も同じです。

川西市外国籍住民人口推移 (統計法務省資料による)

では、どの国籍の人が増えているのかというと、圧倒的にベトナム国籍の方々です。また、昨年から、インドネシアの人が急増しているのが、川西市の特徴です。ネパールの人も増え続けています。

川西市国籍別外国籍住民人口推移 (統計法務省資料による)

ベトナム国籍の方々は増加しているのにも関わらず、平日活動している私たちはベトナム国籍の方々に出会う機会を持つことができずにいます。
そこで、在留資格別に見てみます。

川西市在留資格別外国籍人口推移(法務省資料による)

コロナによる入国制限が解除され、'20-'21に急減した技能実習1号、そして、特定技能が急増しています。
南部の製造業で働いているのでしょうか。
私たちには見えてこないですが、彼らと繋がっていくことができないか、彼らの暮らしはどうなのか、会として課題意識を持っています。

また、絶対数は少ないとはいえ「介護」が確実に増え続けています。
これは、在留資格としての「介護」なので、介護士試験に合格した人のみです。技能実習や、特定技能で介護現場で働いている人もいると思います。

川西市在留資格別外国籍人口推移(介護)・(法務省資料による)

状況は激しく動いている中で、私たちは川西市民として、ここにどのような課題があるか、そのために何ができるのか、考え続けることが大事なのだろうと思います。

川西市の「外国につながる子どもたち」への支援体制(現状と課題)

以下に、私たちが認識している「外国につながる子どもたち」への市の支援状況について共有いたします。

2023年度から、市長公室に人権推進多文化共生課が立ち上がりました。しかし、まだ、どのような活動をしているのかは市民の目からは見えてきません。まずは何よりも、実態を把握するため、外国ルーツの住民への調査が必要だと思われます。
 
私個人が関わっている地域の在留外国人の方々の現状から見える課題としては、例えば、国際結婚で母親が外国籍の場合、子どもの日本語能力が伸び悩んでいることを日本人の父親が心配し、家庭内での母親の母語使用を禁止しているケースを数件知っていますが、母語の重要性や日本語だけを母語としている他の子どもたちと比べてはいけないことなど周知されねばならないと強く感じております。

また、川西市は外国籍住民の絶対数が少なく散在地域ですので、母語で交流できるネットワークを地域でもっていないことなどから、孤立している様子がうかがい知れます。地域コミュニティと繋がる、居場所づくりということが課題であると思われます。
 
また、川西市の学校現場では、令和4年度の外国に繋がる児童生徒の数は、小・中学校で32名おり、そのうち、日本語支援が必要な児童生徒は外国籍で9名、日本国籍で3名この5年間で2倍となっており、増加傾向にあるという回答を教育推進部から得ました。
令和4年度川西市議会 第4回定例会より)

しかしながら、川西市には「外国に繋がる児童生徒への教育指針」というものはないようで、市からは「通訳員」を派遣しているに留まっております。
複数の言語背景を持ち、日本語が十分ではない子どもたちの状況と必要を、行政や学校の方々に知ってもらうことが、まずは必要だと思っております。

行政と民間団体の取り組み

川西市国際交流協会

川西市国際交流協会は、これまで文化・観光・スポーツ課の管轄下で運営されていましたが、今年度から問い合わせ先が人権推進多文化共生課になったようです。文化・観光・スポーツ課管轄下での活動は、姉妹都市交流や、国際交流を謳ったイベント活動、『みんなの日本語』を使用した大人対象の日本語教室(週1)が中心となっており、外国人児童生徒対象の支援や在留外国人の現状に沿った取り組みをしている様子は見られませんでしたが、来年度から、市の管轄から外れ、新体制で運営されることになるそうです。今後の運営計画や方針については、まだ不明です。

川西市教育委員会

川西市教育委員会は、外国に繋がる児童生徒への学校支援として、「言語通訳支援員」という名目で、児童生徒の母語にあたる外国語を通訳できる人を募集し、会計年度任用職員として派遣しています。

支援対象者は、来日3年以内の小・中学生で、国籍による区別はないようです。年間120時間以内、最長2年という規定があり、1年間で120時間を消化する場合、週1回、各3時間となります。
120時間の配分方法は自由で、兵庫県から派遣される母語支援員の「多文化共生サポーター」と併用して使用されることが多いようです。

「言語通訳支援員」は、あくまで「通訳」という位置づけですので、日本語支援という概念はなく、主に「入り込み」による支援となりますが、児童生徒の実情に合わせて、日本語支援や、「取り出し」による教科補助支援も行われているのが現状のようです。今年度から、支援枠が、保育園・幼稚園の園児へも拡張されました。

総合センター

川西市には、同和対策事業総合計画として建てられた隣保館、名称「川西市総合センター」という行政施設があります。そこでは同和対策としての識字教育と人権教育が行われており、「けんけん教室」という小・中学生対象の教室があります。

「けんけん教室」は、教職をもった行政職員が駐屯しており、子どもたちの放課後の自主的な学習を支援しています。その「けんけん教室」に、近隣に住む外国に繋がる児童生徒も数名来ております。

そのような中、昨年度、来日直後の児童も来るようになり、彼らの日本語支援、及び、入学準備を、私を含む数名の日本語教師たちが行うようになったことがきっかけで、今年度から、「けんけん日本語ひろば」という名称で、外国に繋がる児童生徒を対象とした教室が立ち上がりました。
実質的に運営は、私たち「地域と日本語教師の会@川西」が担っております。

地域と日本語教師の会@川西

「地域と日本語教師の会@川西」は、「けんけん日本語ひろば」で関わっている児童生徒の所属学校とも連携をとるため、学校訪問をし、担任の先生に活動を報告したり、DLAアセスメントを実施し、学校と保護者に共有したりしております。
また、川西市は縦に長い自治体ですので、南部に位置する総合センターまで来ることができない児童生徒に対しては、支援の手を伸ばすことができずにいることが課題であると感じています。 
今後の取り組み案として、「けんけん教室」とは離れて、子どもへの学習支援をしている団体とコラボするという案が出ております。

外国につながるこどもの保護者支援サポート かわにし・てとて


川西市では、他にも民間で動く団体として、「外国につながるこどもの保護者サポート かわにし てとて」という団体が昨年度、立ち上がり、私たちの団体とも連携をとっております。
「てとて」さんは、学校の入学案内をやさしい日本語に書き直したり、教育委員会を介して、外国につながる子どもたちが新入学・園生活を送る際の保護者への支援を行ったり、学校へ赴き、活動のPRをしたりしているようで、貴重な働きをしてくださっております。

 

以上が、私たちが独自に「外国に繋がる子どもたちへの支援」という観点から川西市の現状をまとめたものになります。
参考になりましたら、幸いです。


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