わかちあい~日本語学校入学式
「異文化間コミュニケーション」を理念として掲げている日本語学校で働き始めて、10か月が経とうとしている。学校の理念は、「わかちあい」という言葉によって集約され、私たちはみな学習者も教師たちも等しく、その理念の元で学んでいくことになる。
今日は、1月入学生たちの入学式の日であった。
私たちの学校は、4ターム制なので、入学式は1年に4回あるのだが、入学式では、各言語ごとに先輩たちが通訳として選ばれ、新入生たちに、学校の理念や学習の方針などが、母語で説明される。
今日は、韓国人留学生たちの都合がつかなったようで、私が韓国からの新入生に韓国語通訳をすることになっていた。それで、前もって、祝辞の原稿や、理念教育のPPTなどを頂いていたので、息子にバイト料1000円を払い、私の韓国語通訳にフィードバックを返してもらうという予行演習も行ったりして、一応、できる準備はしておいた。
今回、通訳をすることで、私にとっていろいろな発見があった。
まず、私たちの学校の入学式は、理念教育の場、学校全体の協働意識を形成する場として、非常によく整えられていることに改めて気がついた。例えば、先に入学した先輩の留学生たちを通訳にたてることで、彼らにとってはさらなる学びとなるし、新入生にとっては先輩というロールモデルを見ることによって、これから始まる学習生活の動機づけとなる。
そして、入学式のための祝辞や様々な説明は、先輩たちが通訳できるように語彙やスピード、情報量のコントロールが施されており、私も通訳することで、ただ1人で聞いているだけでは得られなかった深いレベルの理解(インテイク)がなされ、理念に対する理解が深まる契機となった。
理念は主に次のように説明される。
すると、価値観、プロセス、哲学、文化・・・・などという答えが、主に先輩たちから返ってきていたが、私の隣にいた韓国人新入生も日本語で「考え」と小さな声で答えてくれた。
そして、次には、「では、自分の頭の中にあるそれらのものを知るためには、どうしたらいいと思いますか?」と質問があり、
少し考える時間を与えられた後で、次のような説明がされた。
私に通訳されていた熱心な韓国人留学生は「ふんふん」と自分の携帯に何かをメモしているようだった。
通訳している時は、1人で話しを聞くのとは違って、通訳される相手がどのように聞き、理解しているのかということに注意を傾けながら、耳から聞こえる言語を自分の理解に落とし込み、その人に伝えるために、新たな別の言語に書き換えるという作業をする。
私は、入社時に理念教育は受けたし、入学式に出席するのも2回目だが、新しい留学生活の出発に緊張しつつも、心ときめかせている新入生に通訳するという状況下でこれを聞いた時、自分の理解がものすごく深まったことに驚き、理念に感動した。
学びというのは、やはり、1人で行うより、学び合うことで進んでいくのだろう。
今学期も先生がたや学習者さんたちといっしょに「新しい自分を発見する」機会に恵まれていることを感謝しながら、
もう明後日から始まってしまう授業計画や準備に、必死でとりくんでいるところである。
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