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おかえり、魂。~prologue:もう一度、TAISETSUへ~

もう一度、大雪たいせつ


想像していたよりも、随分と蒸し暑い。
それでも、本州との気温差が10℃はある。

ふわっ、と肌に優しく触れるそよ風は、
例えるなら9割くらいは爽やかで、
1割くらいは生暖かいような感じ。

はぁー。

自然と深い呼吸を誘われた。




2022年夏、北海道の屋根・大雪山麓を訪れた。

「大雪山」とは、国立公園内に連なる標高2000m級の山々の総称。かつてアイヌの人々が、親しみと畏敬の念を込めて「カムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)」と称したそう。
(The Light of TAISETSUより一部抜粋)

そのカムイミンタラの麓に、
今回は1週間ほど滞在する予定にしている。

その内2泊3日は、大雪山を縦走するのだ。



実は、去年の秋にも大雪山に来ていた。
あの時は4泊5日を山で過ごしたのだが、
その衝撃といったら。

完全に心を奪われてしまった
豊かな自然と、「今ここ」を味わえる喜びに。

北海岳からの景色。
まるで絵の具でキャンバスに描いたようだった。

豊かな水を味わい、
美味しい空気を鼻から吸い込み、
動物の匂いが時々鼻を掠める。

そして山々を吹き抜ける風が肌に触れ、
鳥やナキウサギ、草花のささやきを聴き、
目の前に広がる雄大な自然を眺め、
全身震えあがる。

明らかに体と心が喜んでいて、
山では終始、生き生きとしていた。

7年ほど登山をしていて、
間違いなく一番印象に残っている山旅。

求めていた世界に、出会ってしまったのだ。


▽詳細な記憶はこちらから

それを「皮切りに」とも言うのだろうか。

私は段々「おかしく」なっていった。

時々仕事中に心ここに在らずな時間があったり、小さなことでイライラしたり。


それでも、自分の機嫌をとることは
訓練してきていた。

だからこそ、危険だった。

直感的に「何かがおかしい」と感じながらも、
またいつの間にかご機嫌な自分を
取り戻していたのだ。

そうしてしばらくは、
うまくやり過ごすことができていた。

けれど、年が明けたころから、
いよいよ怪しくなってきた。
コントロールができなくなっていった。

いろいろなことが重なって、
春にはとうとう、
エネルギーが枯渇してしまったのだ。

そこから数か月かけて、
段々と心と体を復活させてきた。

悶々とした日々を送る中で
もう一度行きたいと
心から願っていた場所があった。

それが、あの「大雪山」だった。

心奪われたあの場所に、もう一度行きたい。
私の心、というよりも
魂を取り戻しに行きたい。

心と体が乖離した状態ではなくて、
私の肉体と、魂との一体感を感じて、
毎日を生きていきたい。

だから今度は一人で、
大雪へ行くことを決めた。

これから山へ

東川町にて

関西から札幌へ飛行機で移動。
それからバスに乗り換えて旭川に着いた。

市街地から
さらに山のほうへと移動するにつれて、
心躍るのがわかった。

体全体が、北海道の地と、
そして空気と馴染んでいく。

体が明らかに喜んでいる。

帰ってきた。

あの時の感覚が、蘇ってきたのだ。

これから山に入るのだ。
体は正直で、ワクワクが隠せない。

今回の2泊3日の行程はこのような感じ。
山好きの方のために、参考までに。

【day1】
銀仙台(赤岳登山口)→赤岳→小泉岳→緑岳→板垣新道分岐→白雲岳避難小屋(荷物デポ)→白雲岳→白雲岳避難小屋(テント泊)…6時間
【day2】
白雲岳避難小屋→高根ヶ原→忠別岳→高根ヶ原→白雲岳避難小屋(小屋泊)…5時間
【day3】
白雲岳避難小屋→白雲岳分岐→北海岳→黒岳石室→黒岳→黒岳ロープウェイ…4時間


山行さんこうの前半は晴れ予報で、
後半は天気が下り坂の予報。

なので、同じような工程で行くと言っていた他の登山客の話を参考に、
当初のルートを直前に組み直した。
(当初は2日目を忠別岳避難小屋で泊まる予定だった。)

前半に今回初めて歩くルートを組み込み、
3日目を短くする工程で考えてみた。

さぁ、今回はどんな山旅になるのか。

ワクワクとドキドキをザックに詰めて、
次の日に備えて早めに布団に入ることにした。

#山であそぶ

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