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【詩】 ビオトープ

君と同じ気持ちになりたくて
全神経を澄ませる夜更け
ポケットの中を
少し見せてよ
焦がれるという自然な気持ちも
心を通わすということも
流れに身を任せたら
なんて身軽な三日月

靄ががかり霜の下りた
シンメトリーが退屈する朝の庭
水分が体内から出る現象は
秘密の扉を人知れず開く
君の足跡は大きくて
泥濘んだ地面の上では
輪郭が歪む

その扉をくぐる前に
ちょっとこっちを見てみない
私が造ったこの池を
小さな魚や萌木色の藻
水泡がキラキラ立ち上ってくる
決して大きくはないけれど
ここの世界は成り立っている
森から入り来る小川の水が
適度に澱を浚ってゆくから
心配はいらない

頑丈である必要はない
しなやかであればいい

言葉を添えた菫色の薄紙にくるんで
六角形のチョコレートを一粒
水の中に落としてみる
意味などないことを知っていれば
柳の枝をすり抜ける風は心地良い

少し遊んだら
もう君はどこへでも行けるんだよ
そのお洒落な靴が泥だらけのままでも
誰も責めたりはしないのだから

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